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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第31章 自分の気持ちに正直に
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修学旅行 その6 ー夕人の告白ー

章は変わりましたが修学旅行は続きます。

「さーて、ここなら寒くないし、長い時間じゃなかったら大丈夫だろ。」


 翔くんが見つけてくれた場所はホテルの宴会場。なんでもホテルの人たちに掛け合ったんだって。『生徒会の打ち合わせに場所を使わせて欲しい。』って。あながち嘘じゃないけれど、やっぱり嘘だよねぇ。


「うん、そうだね。外は思ったよりも寒いもんね。」


 茜が言った通りにお風呂上がりにはまだ少し辛い時期。できることなら室内での方がありがたいよね。


「そうなんだよ。寒かったんだよなぁ。な?夕人。」

「あぁ。寒かった。俺さ、翔と数分だけだけどホテルの中庭に出てみたんだよ。」

「な?風邪引くかと思ったよな。」


 本当に外に出てたんだ・・・さすが男子って感じだね・・・あはは。


「夏じゃないからねぇ。まだちょっと時期が早いよ。」


 茜の言う通りだよね。北国が温かくなるのはもうちょっと先の話だからね。


「そうそう・・・ってこんな話をしてたらあっという間に消灯時間になっちまうな。」


 翔くんが真顔になって夕人くんの顔を見ていった。


「そうだな。あー、自分から言っておいてなんだけれど、少し心の準備っていうか、そういうのが欲しいんだけれどなぁ。」


 夕人くんが笑みを浮かべずにそんなことを言うなんて。よっぽど難しい話なんだね。でも、私にはなんとなくだけれど何を話そうとしているのかわかってるよ。


「心の準備?なんだよ夕人。あんまり思わせぶりにしたところでお前が辛くなるだけだぞ?」


 翔くんが夕人くんの肩のあたりを拳でドンドンと叩いているのを見ると、男子っていいなぁって思っちゃった。私たち女子はあんな感じにはできないもんね。


「でも、ほら。きっと夕人くんなりの考えがあるってことでしょう?ちょっとだけ待とうよ。」


 私は正直にいうと嫌な予感がしていた。

 でも、聞かなきゃいけないんだろうなって。

 

・・・そう思った。


「そうだねぇ、それまではちょっと雑談でもしよっか。」


 茜も私の提案に乗ってくれた。でも雑談って言っても何を話したらいいのかな?


「よし。じゃ、ここは俺のノロケ話でもしますか。」

「え?全然いらないんだけど。」


 翔くんのとんでもない提案に茜が顔をしかめながら激しい拒否反応を示した。私も別に聞きたくないけれど、会話のネタっていうのかな?そういうのは必要だと思うんだよね。


「うーん、でも、ほら、何か話してちょっとだけ時間を稼いでおこうよ。そのうち夕人くんも話してくれるだろうし。」

「えー、でも、ノロケ話なんか聞いてもお腹いっぱいにはならないし。それになんと言っても楽しくないもん。それよりも・・・どうせだったらこれからの話をしようよ。少し重たい話になるかもしれないけれど。」


 茜が言っているこれからの話って何?進路とか?


「あ、そういうのはいいね。将来のこととかでしょう?」

「そうか・・・俺の話よりも将来が大事か・・・」


 茜の言葉に私たちがそれぞれ返事をしたけれど、さすがにノロケ話より将来の話の方が大事だよ。聞いてみたいような気はするけれどね、翔くんたちのデートの話とか。


「あ、ごめん。私が話したいのは・・・小町ちゃんのことだったんだけど・・・」


 茜が少しだけ目を伏せながらそう言った。翔くんも言葉を失ったみたいだけれど、私も驚いた。まさかこのタイミングでその話をしようとするなんてとも思ったけれど、茜らしいっていえば茜らしいとも思う。


「なるほど・・・さすがは茜ってところかな。」


 翔くんが肩をすくめて両手を天井に向けた。でも、なんとなく茜が言おうとしていたことを予想していたようにも見えたのは気のせいなのかな。


「青葉の話?」


 夕人くんが話に加わってきた。

 ううん、この言い方は変だね。元はと言えば夕人くんが私たちに話を持ちかけてきたわけだから、彼が話の中心にいるはずだもんね。


「うん。実はね、最近噂になっているかもしれないんだけれど、もう聞いた?」


 あんまり学校に来れていない茜の耳にすら入っている噂。いくらそういう話に疎い夕人くんでも少しは知っているはずよね。


「噂話にはあんまり興味がないっていうか・・・でも、少し聞いた。っていうか足草が騒いでいたからな。体操部のヤツの話ってさ。」

「あぁ、その話は俺も聞いたな。」


 まぁ、男子たちの話はこんなところよね。私も似たようなものだけれど。噂好きの実花ちゃんがこの場にいたら色々な情報もあったんだろうね。


「うん、そう。去年から新しくできた体操部のキャプテンの田中くんと小町ちゃんが付き合ってるって話。」


 茜ってばストレートすぎ。

 私だってその噂話は聞いたけれど、二人が一緒にいるところをみたことはない。学校では・・・部活の時に一緒にいるくらいなのかも。


「んー、俺もそう聞いているけど、だから何?っていうところだなぁ。それこそ、青葉には青葉の考えがあるんだろうし。俺たちがどうこういうことじゃないだろう?」


 翔くんは妙に大人なのよねぇ。この場に小町ちゃんがいなくってよかったって心から思うよ。だって・・・すっごく怒りそうじゃない。


「俺も・・・そう聞いてたけれど。本当なの?」


 夕人くんは半信半疑ってところかしら。ただ、翔くんよりは興味があるみたい。


「実は私もわからないの。だって、あんまり学校にいないから。」


 茜はため息交じりでそう答えて、助けを求めているような目つきで私を見てきた。もう、自分からのこんな話を振るくらいなら自分でなんとかしてくれたらいいのに。


「私だって・・・わからないわよ。最近は小町ちゃんと話もできてないし。」

「お前ら、修学旅行で同じ部屋なんだろう?だったらさ、夜のパジャマパーティでそういう話とか出ないのか?」

「そのパジャマパーティはこれからなんだって。」


 茜が『呆れた』と言いたげな表情で翔くんを見る。


「あ、そうか。今日が初日だもんなぁ。そりゃそっか。あはは。」


 翔くん、何かごまかしてる?それとも何か知ってるの?


「体操部のキャプテンは田中って言ったっけ。どんなヤツなんだ?」


 夕人くんが翔くんの言葉を無視して質問をぶつけた。なんとなく、ソワソワしたような感じで。


「俺は探偵じゃないんだぞ?何でもかんでも知っているわけじゃないさ。」

「探偵だってなんでも知っているわけじゃないでしょう?」


 茜が腕を組みながら翔くんに冷たい目線を送る。なんでそんなにキツイ目線なの?


「・・・それはそうだな。綿密に調査をして、それで真実を探るのが探偵だな。」


 翔くん真面目な表情で頷いているけれど、すっごく乗せやすいね。なんだか面白い。


「俺が知ってるのは生徒会長として部活を把握しとかなきゃいけないからだ。決してやましい気持ちがあったわけじゃないぞ?」

「・・・いいから続けろよ。」


 夕人くん怖いよ。なんでそんなに必死なの?


「はいはい・・・えっとな、まず名前は田中隆聖。クラスは三年二組。成績はそう良い方でもないな。一学期末の順位は百六十位くらい。まぁ女子受けは結構いいみたいだな。運動もできるし顔もいいからな。んで、学校外のジムで体操をやっていたみたいなんだが、去年俺が生徒会長になる前に新規の部活動を設立するための申請書を出して受理された。たまたま顧問をできる先生がいたからっていうのもあるけれど、ある程度いい感じに根回しされていたみたいだな。そんでもって、現在の部員は男女合わせて六人。あー、最近になって青葉も入部した。本当は創部の時に青葉も加わるはずだったみたいだけれど、拒否していたみたいだな。っとまぁ。俺が知っているのはこのくらいだ。」

「翔くん、詳しすぎじゃない?」


 茜が腕を組んだまま固まっている。


「え?そうか?生徒会長としては当然のことだろう。」


 翔くんはさも当然っていう表情で淡々と話を進めていたけれどさすがは生徒会長だよ。

 あれ?夕人くんって生徒会の副会長さんだよね?夕人くんは知らなかったのかな?


「あの・・・夕人くんは知らなかったの?」


 私はそう疑問をぶつけてみた。すると、夕人くんと翔くんは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。


「いやぁ、今の話は夕人から聞いたんだ。俺はちょろっと知ってただけだ。なんていうかこういう仕事は夕人の専売特許だからな。俺は先頭に立って動いて、で、責任を取るのが仕事だ。」


 ちょっとちょっと・・・それってそんなに自信を持っていうことじゃないでしょう?翔くんは自信満々で言っているけれど、夕人くんは・・・あれ?笑顔だ。


「夕人くんは、それでいいの?」

「え?なにが?」

「だって、それじゃ夕人くんは裏方ってだけで何もしていないことになっちゃうじゃない。」


 夕人くんって昔からそういうところがあったから、ちょっと心配なのよ。


「まぁまぁ、環菜の気持ちも解るけれど、その話、今は置いておこうよ。」


 茜が私の肩をポンと軽く叩きながら笑顔を浮かべた。


「うーん、それは俺も思ってるんだ。夕人の苦労って傍目にはわかってないだろうからなぁ。でも、それに関しては俺にも考えがあってだなぁ。いつかきちんと形にするから安心してくれよな、夕人。」

「別に・・・そういうのはいいんだよ。それよりさ、田中ってやつの話なんだけどな。実はあんまりいい話は聞かない。」


 夕人くんがフゥッと息を吐きながら私たちの顔を見回した。


「え、そうなの?私は詳しくは知らないけれど、結構いい感じの人だって聞いてるよ?」


 茜が夕人くんと真っ向に対立して言った。でも、実は私も茜と同じイメージを持っていた。


「そこらへんは男女での違いってことなのかもしれないな。噂っていうか聞こえてくる声の違い。どちらにしても俺たちはそんなに田中のことは知らないってことさ。」


 翔くんはあくまで中立的な立場でそう言った。


「そうだな。俺も詳しくは知らないし、関わったこともない。」


 夕人くんはそんな言い方してるけれど、小町ちゃんのことを心配してるんだね。


「でも、そんなに印象が違うっていうのも不思議な話だよね。普通は男女での違いってことじゃなくって、イメージというかそういうものの良い悪いって感じな気がするんだけど。」


 茜のいうことはよくわかる。私もその点はちょっと疑問だったから。


「うーん。とりあえずその話はまた次回にしよう。これ以上のことはわからないし、時間もあんまりないからさ。」


 夕人くんが話を切り替えようとしてきた。そして、その言葉は突然切り出された。


「俺さ。今、ローザと付き合ってるんだ。」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


夕人の爆弾発言の真意が未だに見えません。

次回は明らかになるのでしょうか。

いや、明らかになって欲しいですね。

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