表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第25章 デート、そして・・・
138/235

人と人との出会いは宝物

少し短めです。そして、当然ですけれど前回からの続きです。

 俺たちは水族館と科学館を見て回った後、お昼ご飯タイムをとった。食事はデパートとスーパーの中間みたいな店の飲食店街で済ませる事にした。


「今が冬じゃなかったら外で食べてもよかったのにね。」


 ローザがスパゲッティを口にしながらそう言っていたは覚えている。


「雪が溶けたら・・・」


 この後、ローザはしばらく言葉を発しなかった。『雪が溶けたら・・・』の後に何を言おうとしていたのだろう。俺はそのことだけが気になってしまったが、聞くことができなかった。何となく、今聞いてはいけないような、そんな気がしたからだ。

 とにかく重たい空気になるのが嫌だった俺は、水族館の最後に展示してあった水槽をネタにしてみた。


「なぁ、ローザ。最後の水槽、覚えてる?」

「水槽?」


 ローザはかなり何かを思い悩んでいたのだろう。俺の言葉に対してもいつものように歯切れのいい言葉が返ってこなかった。


「そう、あの一般家庭にもありそうな水槽。覚えてない?」


***************************


 夕人くんが話しかけてくれている。

 今、いろんなことを考えても仕方がないよね。

 雪が溶けたら、春になったら卒業しちゃう。あんまり会えなくなるっていうこと。

 私、今を楽しむって決めていたのに。これじゃ夕人くんに申し訳ないよ。


「うん、覚えてる。」


 でも、どうしても胸が痛くなる。

 こうやって楽しければ楽しいほど、夕人くんと一緒にいられなくなるというのが辛い。

 あと一ヶ月も一緒にいられないだなんて考えたくもない。


「あれってさ、ただの熱帯魚の水槽だったじゃない。グッピーって書いてあったでしょ?」


 確かにそんな水槽があったと思う。でも、実はあんまり覚えてない。

 夕人くんと一緒にこうやって居られるのが楽しくて。はっきり言ってそれどころじゃなかった。


「あ、あったね、そんなの。えーっと、だよね。あれをトリにするのはどうかって話じゃない?」


 かすかな記憶からかろうじて会話を続けてみるけれど、いつもみたいにポンポンと言葉が出て来ないような気がする。


「だよね、なんか、こう。面白いのがどかーんと、欲しかったよね。」


 夕人くんも無理やりネタを振ってくれているような気がする。

 だめ、こんなことじゃ、つまんない女だって思われる。

 私、夕人くんの友達なんかよりもずっと一緒にいた時間が短いから、どうしても埋められない時間っていう問題があるの。それを少しでも埋めたい。そう思って雪まつりも今回のデートも、すっごく楽しみにしてたんだから。


「ウンウン、わかるー。あのくらいだったらさ、学校でもできそうな展示だよね。」


 笑って会話をしている私。でも、いいの。それで。そう。楽しくやらなきゃ。


「うん、そうなんだよね。」

「ねぇ、ご飯終わったらさ、大通りで買い物したいんだけど、いいかな?」


 急に話を変えちゃった。ちょっとまずかったかなぁ。そう思いながらそぉっと夕人くんの顔を覗き込んでみた。彼は少し首を傾げたくらいで笑顔のままだった。よかった。


「いいよ。だったらさ、こんなとこでのんびりしてちゃ時間がもったいないよね。早く行こっか。」


 すでに食事が終わっていた私たちは、会計をして地下鉄に乗り込んだ。


*******************************


 私、今日の目標があったの。だからってそんなに大それた目標なんて持っていないよ?

 だってね、夕人くんはクラスに好きな子がいるんだ、多分だけどね。でも、何だかそれだからって諦めるのは癪じゃない?

 だから、年上のお姉さんの魅力っていうのを教えてやろう、なんて思ってた。

 でも、はっきり言えば嘘。そんなにいい子じゃないよ、私。


 私と夕人くんとの出会いは、そりゃ、最悪だったよ。原因は私にある。誰がなんと言おうと完全に私が悪かった。でも、その後、いろいろなことがあって、夕人くんがいいやつだってわかった。色々がなんだのかなんてことはどうでもいいんだけどね。とにかく、普通にあって話してるうちに楽しくなってきている自分がいた。

 そして、会えないとつまらない自分がいることに気がついた。ちょうど部活も引退した頃だったし、何だかぽっかりと胸に穴が空いたような、そんな気持ちだったの。

 窓花とそんな話をしているうちに自分のことがわかってきた。

 私って今まで好きになった男の子がいなかったんだよね、実は。こんなことを言うと不思議に思われると思うけれど、男の子ってズルいし、不潔だし、うるさいし。運動してる女子のことをいやらしい目で見てくるだけだったからね。それに部活も楽しかったし。

 まぁ、平たく言えば興味がなかったってことかもしれない。それに学校での私って、あんなキャラでいたから好きだって言ってくれる男子もいなかったんだけどね。

 でもね、そのことは別に後悔なんてしてないんだ。不思議なんだけれど。


 だから、今日の目標。夕人くんと仲良くなる。そして、高校に行ってもたまに会える関係になる。でも、できれば・・・


「ねぇねぇ、四プラ行きたいなぁ。」

「え?四プラ?」


 あれ?なんか表情が曇ったよ?四プラ、ダメだったかな?あそこはいろんなお店も入ってるし、結構いい感じのとこなのに。


「違うとこでもいいんだけど、あそこっていろんなアクセサリー屋さんがあるのよね。」

「うん、そうだね。うん、いいよ。行こうか。」


 あれれ?私の勘違いかな?全然普通だ。ま、いいけどね。


「うん、行こう。」


 さりげなく手を握ってー・・・って、もう繋いじゃってた?あまりにも自然に繋いじゃってた?いや、平気だよ?だって、初めてってわけじゃないしね、あはは。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


ローザの目線から見てみました。

番外編でも描いたように、ローザは夕人が思っている以上に乙女な女の子です。可愛らしい子なんです。

でも、部長ができるくらいの人間性もあり、運動もよくできる。

ま、お勉強の方はちょっとアレみたいですけれどね。


さて、二人はこれからどんな関係を築いていくんでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ