それぞれの思惑と行動
いやぁ。まだ前日です。
すこぶる短い章なので、二本同時投下です。
二月十三日の夜。
「おかーさん、これ、おかしいよ。上手くいかないもん。」
「おかしくなんかないわよ。あんたが下手すぎるのよ。」
「そうかなぁ・・・言われた通りにやってんのに・・・」
「もう遅いから諦めなさいな。ちゃんとお店でも買って来たんでしょう?」
「買ったけれど・・・絶対に茜とか手作りだし。」
「まぁまぁ、気持ちはわかるけどね。あれって気持ちの問題でしょう?」
「うん・・・だからちゃんと作りたかったのに・・・」
「わかったわ。じゃ、もうちょっとかんばりましょうか。材料もあと一回ぶんくらいあるしね。ほら、泣いてないの。チョコがしょっぱくなっちゃうよ?」
「うん・・・」
小町は台所から一旦出ていった。
「さて、もう寝ようかな。」
机の上にはバックが置かれていて、その中に何かが入っている。どうやら市販のチョコを何個か購入したようだった。そしてその中に一つだけ包み紙の違う物が入っていた。
「ちゃんと準備も終わったし。宿題もやったし。」
そう言ってベットに入り込み部屋の明かりを消した。
「明日は夕人くんと・・・もうちょっと話せるかな・・・」
独り言のように呟いて環菜は目を閉じた。
「さーて、完成っと。」
台所で一人おかし作りに勤しんでいる。どうやらトリュフチョコを作っていたようだ。だが、その数がなかなかに多い。
「はぁ、ちょっと作りすぎちゃったかも。でも、いいよね。実花ちゃんに環菜ちゃんに、小町ちゃん。それからなっちゃんにもあげて・・・夕人くんにもあげよう。翔くんはインフルエンザだっていうからきっと来ないと思うし。あとは・・・」
そう言って今度はチョコを入れる袋を取り出してきた。手際の良さがとても中学生とは思えない。もしかするとこれが日本初の友チョコだったりするのだろうか。
「さぁ、もうひと頑張りね。」
茜は袖まくりをして一人笑みを浮かべた。
「手作り・・・だとちょっと重たいかな。」
『さぁ、どうかしらね。でも、それはあるかもしれないわよ?』
「一応さ、お店でも買ったんだよね。」
『そうなの?どこの買ったの?スーパーとかで売ってるやつ?』
「ううん、六花亭。ちょっと奮発した。」
『うっわぁ。あんた、本気?』
「え、やっぱり重い?」
『そうねぇ。でも、まぁいいんじゃない?あの子、そんなのわからないと思うけど。』
「うーん。そっかぁ。」
『あ、そうだ、いいこと思いついた。』
「なに?教えて?」
『えっとね・・・』
「それって・・・」
ローザは部屋で一人顔を赤くしながら受話器越しの窓花の言葉をじっくり聞いていた。
「明日、翔は来ないから。ま、夕人くんにあげるくらいでいっかなぁ。」
「あら、こんな時間まで何やってるの?」
「あ、お母さん。んー、チョコをね。どうしようかと思って。」
「そうねぇ。あの子、誰だっけ、翔くんだっけ?」
「そう。でも、今風邪で休んでるんだよね。だから、それはいいんだ。」
「あら、そうなの。だったらお友達に適当にあげたらいいわね。」
「適当って・・・それはそれで問題でしょうが。」
「そう?お母さんは、とりあえず仲良くしてた男の子にはみんなおんなじ物あげたわよ。」
「それは基本でしょうが・・・」
その後も実花とお母さんの会話は楽しく続いたようだった。
「夕人くんはきっといろんな子からチョコもらうよね。だったらインパクトで勝負かしら。」
一人、机の上に置かれた二つのチョコを見て呟く。
「でも、あんまり目立つの上げるとまた、変に思われたらイヤだし。」
そう言って小さめのチョコをカバンに入れる。
「でも、これじゃ茜ちゃんに負けちゃうか。」
そうしてカバンに入れたチョコを取り出して少し大きめの箱のチョコを手に取る。
「あぁ、でも、これじゃ渡すときに目立っちゃう。」
一人で右往左往する北田さんだった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
前章と含めてバレンタインデー前日の出来事になります。
それぞれの女の子の性格がよく出ていると思うんですけれどねぇ。
あなたは誰の行動が一番好きでしたか?




