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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第22章 寒い冬だからこそ、熱い想いで
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久しぶりなアイツ

少し短めの章になります。

 一月もそろそろ終盤。三学期が始まって一週間くらいだった頃の昼休み。『明日はスキー学習だな』なんてガヤガヤとしている教室で翔と話をしていた時だった。


「俺、雪祭りに誘おうと思ってるべ。」


 いつものように足草が大声で騒いでいた。


「あいつ、いっつもあんなこと言ってんな。彼女が欲しい欲しいってさ。」


 俺は机に頬杖をつき、欠伸をしながら言った。もちろん目線はテンションアゲアゲの足草の方を向いている。


「確かにな。あいつはアレで面白いやつだとは思うんだけど、まぁ、女子には難しい相手っていうか・・・」


 翔は俺の隣の席で背もたれに腕組みをした状態で寄りかかりながら言った。


「お前ってさ、なんでそんなに大人なんだ?俺にはそんな言葉、まったく出てこないわ。」


 翔の懐の深さに呆れながら笑った。というよりも、半年くらい前にあいつにされた仕打ちのことを俺が忘れられないからだろう。

 ・・・俺って結構、根に持つタイプだったんだな。


「別に、大人ってことじゃないさ。」


 真面目に返して来る翔が面白い。これは少しからかってやらなくちゃいけないな。


「前々から思っていたんだけれど、お前ってさ。ほんとは一個上の年だったりとしないのか?妙に大人っぽいところあるし、それになんか達観してるっていうかさ。」


 ニヤニヤしながら翔の顔に目線を移す。


「・・・俺ってそんな感じなのか?」


 驚いたように目を丸くする翔。

 よし、うまく乗って来だぞ。ここから畳み掛けるか。俺は姿勢を正し、翔の方にしっかりと向き直ってさらに続けた。


「そうだな。老けてるとは言わないけどな。ファンクラブまであるイケメン生徒会長だからな。でも、考え方というか、振る舞いというか。話し方というか。まぁ、いろいろだけれどな。少し、大人びたところが多いよ、うん。その辺りが難しいって感じるやつもいるんじゃないかな。」

「それはつまり、若干ウザいってことか。」


 翔が真剣な面持ちで俺を見ている。あれ、ちょっと予想と違う反応だけれど?


「いやいや、そんなことはない。少なくともあそこで騒いでいるアレとは違うから。」

「ん、こう言うのもなんだけど、彼と一緒にされるのは心外だからな。」


 翔は小さな声でそう言った。あいつがこんなことを言うのは初めてかもしれない。つまりはそれほどのことだったと言うことだ。


「あぁ、すまん。ちょっとからかってみただけだ。気分を悪くしたなら謝るよ。」


 俺は素直に翔に頭をさげる。


「いや、実はさ。俺に色々と言ってくれるのはお前だけなんだよ。なんだろうな、みんな俺のことを避けてんのかなぁ。」


 翔は悩んでいるとも言えないくらいの軽い口調で俺に尋ねてきた。


「避けてるってことはないだろう、別に。ただ・・・そうだなぁ。こう言うのっていきなり他人に言われるとムカつくだろう?だからさ、よっぽど仲が良くないと言いにくいって言うか、そう言うことなんじゃないのか?」


 俺は正直な思いを翔に伝えた。


「そうだな。確かにそうだ。お前の言う通りだな。俺もいきなり誰かに何かを指摘したりしないもんなぁ。」


 頷きながら俺の言葉に同意してくれた。よし、これで一安心。ちょっと調子に乗りすぎたな。相手が翔だとつい、やりすぎてしまう。


「そうさ。そういうものさ。」

「で、話は変わるけどな?お前、やっと好きな子できただろう。」


 話の途中から声のトーンを下げ、周りの様子を気にしながら聞いてきた。


「え?」


 あまりの急な展開にあっけにとられて声も出ない。


「俺には嘘は通じないぞ?初詣以降、茜に色々とちょっかいを出してるだろう。」

「そんなことないぞ?」


 その言い方だと俺がまるで茜に絡んでいるみたいじゃないか。そんなことを言われるなんて、それこそ心外だ。ただ、ちょっと遊びに行こうとか、勉強を教えてあげようかなとか、そう思って話しかけているだけだ。


「ほう。実花が相談受けたって言ってたぞ?」


 ニャリと笑みを浮かべて翔が顔を近づけてくる。これは下手な言い訳をする方が立場がまずくなるのではないだろうか。いや、どうなんだ?って言うか実花ちゃんに相談?俺って、そんなにめんどくさく思われていたのか。ちょっとショックだ。


「・・・そか。」

「よし、放課後に話を聞くよ。もうすぐ昼休みも終わりだしな。」

「あぁ・・・ちょっと頼むわ。」


 何がちょっとだ。俺って、結構凹んでるんじゃないのか?


「おっ、相変わらず真面目な話ばっかりしてるんだべか?」


 足草が俺たちの元にやってきた。こいつはどうしていつもこう言うタイミングで話しかけてくるんだろう。特別な嗅覚でもあるのだろうか。


「お、足草。実はさ、生徒会のことで夕人に相談してたんだよ。」


 翔が気を利かせて上手い嘘を話した。いや、生徒会の問題って言うのはあながち嘘でもないのだけれど、今はそんな話はしていない。


「うーん。そっか。二人は会長と副会長だったもんな。やっぱ大変だべか?」


 足草が意外な言葉を口にしてきた。てっきり『いやいや、そんな話じゃないんだべ?』とか言って絡んでくると思ったんだけれど。これは意外だ。


「まぁなぁ。夕人が一緒じゃなかったら投げ出したくなる時もあるわ。」


 翔がフッと息を吐きながらやれやれといった表情を浮かべる。あいつの話に合わせて言っているとしても、翔に言われると素直に嬉しいと思う。


「いいよなぁ、お前らの関係。俺もそうなりたいもんだべ。」


 それってつまり、足草も俺と翔たちのグループに入りたいってことか?あいつのトラブルメイカーっぷりが収まれば、俺は別に構わない・・・ってこともないか。茜はともかく、小町が反対しそうだ。


「なーに言ってんだ。お前にはお前のいいとこがあるだろ?そこをわかってくれる友達がいるんじゃないか?」


 右手人差し指を足草にビシッと突きつけて良いことを言う。翔はやっぱりと言うか、さすがと言うか。とにかく俺には言えないような言葉で足草と話している。


「んー、どうだべ。俺にも友達はいるけどなぁ。」


 足草は何やら本気で考え始めたみたいだ。


「そりゃそうさ。友達がいればこんな話をしたり、相談したりするだろ?」

「んだな。」


 足草は大げさに頷く。こいつも納得したみたいだな。やっぱり翔は大したやつだよ。


「さぁ、そろそろ五時間目が始まるからな。次は移動教室じゃないか?」


 翔はそう言って足草の方に右手をかけて椅子から立ち上がった。


「あ、理科だったべか。俺、日直だったべっ。準備しなきゃ。」


 足草は慌てて自分の席にダッシュして何かを持って教室を出て行った。


「慌ただしいやつだな。まだ、五分は時間あるけどな。」


 俺は足草を見ながら苦笑いを浮かべてそう言った。


「まぁまぁ、あいつはそう言うやつなんだって。」


 翔がまるでアイドルスマイルのような笑顔を浮かべて俺の肩をポンと叩いた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


今回は短めの章でしたけれど、次章は長くなります。

おそらく一気にあげますので、よろしくお願いします。

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