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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
番外編3 another side story
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番外編3-2 なんどやっても大失敗

番外編3の二話目になります。

今回の主役も椎名先輩です。

 それからしばらく経った昼休み。窓花と一緒に廊下を歩いていた時だった。


 あれ?あそこにいるのって竹中じゃない?この前はちょっと、いや、かなり大失敗だったから、今日こそは普通に話をして、きちんと聞いてみないといけない。


「おっす、竹中っ。」


 おっと、いつもの癖でつい男の子言葉で話しかけてしまった。とは言っても学校ではこのキャラでやっていかなきゃいけないわけだし、まぁ仕方がない。少しガラの悪い部員をまとめていくには必要なキャラなんだから。


「いってぇ。なんだ?誰だよ?」


 勢いよく駆け寄ったせいで持っていたカバンが竹中の腰のあたりにぶつかったようだった。


「何しやがるっ、このクソ女っ。」


 む、なんか挑戦的だな。ちょっと腹立ってきたぞ。年下のくせに生意気な。


「誰がクソ女だ、このクソガキっ。」

「あぁ?なんなんだ?お前は一体。俺になんか文句でもあるのか?」


 竹中は怒りをその目に讃えながらローザを睨みつけていた。


「うるせーよ。」


 やっちゃったー。売り言葉に買い言葉ってやつ?これでまた窓花に怒られてしまう。そう思いながらさっきまで一緒にいたはずの窓花を目線だけ動かして探すと・・・


 いた。


 窓花は右手で顔を押さえながら『呆れたわ。』と言いたげな顔をしている。

 竹中は竹中で、私の顔を睨みつけている。


「ま、今日はこの辺で勘弁してあげるわ。」


 わけのわからない言葉を残してその場から立ち去ろうとする私。一体何をやっているのやら。

 とりあえず、その場を離れローザは窓花の元に駆け寄っていく。竹中はただローザのことを睨みつけていた。



「またやっちゃったよぉ。」


 ここはバレー部の部室。教室じゃ話ができない時に二人はよくここを使っていた。部長と副部長という特権を利用していたというわけだ。


「やっちゃったね。もう、余程のことがなければ普通に話すのは無理だろうね。」


 窓花は開き直ったかのように事も無げに言った。


「私ってなんでこう、バカなんだろう。」

「今に始まった事じゃないし、しょうがないでしょうが。」


 窓花はもはや考える事も放棄したかのようなセリフを吐いた。


「ちょっと、それってひどくない?」

「そうね。ちょっと言い過ぎかしらね。」

「これからどうしたらいいかな。私としては竹中が川井さんと接触するかどうかを確認したいなって思うんだけど。」


 ローザは自分の考えを窓花に提案してみた。


「どうやって?」


 窓花はこれ以上面倒な状態にしないで欲しいわと言いながらローザの言葉を待った。


「あのね、帰り道で竹中のあとをつける。」

「へぇ。それで?どうするの?」

「うん、何日かあとをつけていたら川井さんとの接点があるかどうかも見えてくると思うし。」


 ローザは我ながら上出来だとでも言いたげに窓花の顔を見ながら言った。


「どうかしらね。私たちがいるのがわかったら警戒されない?」


 窓花はローザと比べると物事を深く考える傾向がある。考えに考えて、自分の中で何度も自分の行動がもたらす結果を予測する。そして、その結果、行動する価値があると思われた時にだけ行動を起こす。いわゆる慎重な人間と言えば聞こえが良いのだが、正しくは臆病な性格だと言えた。その性格が災いしたのかローザに出会う以前、ほとんど友達がいなかった。


「大丈夫、今度こそ。それにね、もうこのキャラで竹中に接して見たらいいんじゃないかなとも思ってたんだ。だってね?その方があいつの本性が観れるかもしれないっしょ?」


 対してローザは楽天的な性格。考えているよりもまずは行動する派。行動しないで後悔するくらいなら、行動してから後悔する方がずっとマシだと考えている。こう言ってしまうと身もふたもない言い方だが、男気溢れる女子だと周囲からは思われている。


「そうかしら・・・」


 溜息を吐き、少し呆れながらも窓花はローザの前向きな性格を羨ましく思っていた。


「そうよ。絶対にそう。それにね、あの小生意気なガキンチョの鼻っ柱をへし折ってやらないとね。」


 どうやらこちらの方が本音のようだ。


「あぁ、なるほど。それでつきまとって隙をうかがうと。」


 一体この二人は何をしたいのか。目的と行動が微妙に一致していないように思われる。



 それから数日の間、ローザは竹中を見かけるたびに攻撃を仕掛けては彼の正体(?)を探ろうとしていた。ある時などは覚えたてのドロップキックをかまして竹中を攻撃し転ばせた。そして着地に失敗し彼の上に着地。しかもあまりに派手な技を制服姿のままにカマしたものだからスカートがはだけてしまい周囲の生徒たちにパンチラをサービスしてしまうといった失態まで犯してしまっていた。


「なかなか接触しないよね。」


 いつも通りにバレー部の部室。ローザと窓花は二人で話し合っていた。


「そうね。私はもういいんじゃないかって思うのよねぇ。多分、あの子、ローザが思っているような子じゃないと思うのよ。」

「でも、ちょっと楽しくなってきちゃった。なんか竹中に合わないと一日が始まらないっていういうか、そんな感じ。」


 ローザは笑顔で窓花に話しかけている。どうやら本格的に目的を見失ってきているようだ。


「えっと、ローザ?」

「なに?」


 ローザはニコニコと笑顔を浮かべたまま窓花の顔を見ている。


「わかってるとは思うけど、今のあんたはあの子にめっちゃくちゃ嫌われてるよ?」

「えぇ、なんで?」


 窓花の言葉に驚愕の表情を浮かべる。


「いやいや、少しは自覚しなさいよ。いきなり殴られたり蹴られたり。普通の男子だったら既にブチ切れてるわよ?っていうか、絶対に殴られてる。今のあんたは毎日絡んでくるウザい先輩女子ってところね。」


 驚愕の表情を浮かべたまま固まるローザ。


「・・・もしかして、全く気がついていなかったとか・・・言わないよね?」


 ローザは口をポカンと開いたまま動かない。どうやらローザは全く気がついていなかったようだ。


「おめでたいというか、なんというか・・・」

「私、嫌われた?」


 今度は目を大きく見開いて窓花の方をガシッと掴んで体を揺さぶる。


「ちょっと、そんなにゆすらないで・・・」

「だって、嫌われるようなこと、してないよ?」

「いやいや、嫌われないわけがないでしょう。冷静に考えてみなさいな。」


 ローザは窓花に言われた通りに自分の胸に手を当てて考えている。


「・・・嫌われるかもぉ〜。」

「はぁ。もうそれは諦めるしかないと思うけど。今度は私がフォローしてみるから。」


 どうしてなのか半泣き状態になっているローザの頭を撫でてあげる。

 この二人の関係。学校内ではボスのローザに腰巾着の窓花ということになっているのだけれど、実は全くの逆の関係。どちらかと言えば窓花がしっかりと仕切っていてローザがそれに従うという感じ。ただ、ローザが超行動派なので計画立案係はローザ、計画担当係は窓花ということになっている。

 そしてさらに性格までも間違ったイメージで認識されていた。男勝りのローザに根暗な窓花という認識。しかし本来はとっても純情乙女なローザに実は饒舌でとても気が短い窓花。これが本当の二人の姿だったのだが、それを知っているのはごく一部でしかない。

 その理由はおそらくのちに二人のうちのどちらかが話すだろうから今は割愛することにしよう。


「お願いします、窓花。」


 ローザは素直に頭を下げた。この素直さが普段から見えていれば、夕人とももう少し簡単に話ができたのだろうに。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


椎名先輩の本当の姿が少し見えたのではないでしょうか。

後輩の夕人と話している時と比べて乙女っぽさが見え隠れしていたと思います。


二人はこの後、夕人が川井先輩との接点がないことを知り、心を許していきます。

それは本編にも描かれていた通りの展開です。


さて、夕人中学二年生編もかなり佳境に入ってきました。

今後の展開にもご期待ください。


感想、ブクマ、お待ちしております。

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