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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
番外編3 another side story
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番外編3-1 初めから大失敗

ここで少し本編から外れた話を書いていきます。

とは言っても、もちろん本編に登場したキャラクターが主役です。


ifの話を期待していた方、申し訳ありません。

「ねぇ、どうしよう?」


 一人の少女が友達と思われるもう一人の少女に声をかける。

 声をかけた少女は色白の肌に短めの髪。その色は少しだけ茶色みがかっているがこれが地毛の色だ。小さな顔に大きなパッチリとした茶色の目に高めの鼻、そして少し薄めの唇。だが、その唇はへの字に歪んでいる。身長は少し高めで160センチくらいで痩せ型。パッと見た感じはいかにも美人と言った感じなのだが、まだ幼さが残る中学三年生の少女だ。


「どうしようって言ったって。今さらどうしようもないでしょう。」


 もう一人の少女は軽く溜息を吐きながら友達の問いかけにそう答えた。なにせ、このやり取りは既に四回目なのだ。

 こちらの少女は長い黒髪で少し細めの目。ほんの少しだけ冷酷さを感じさせる顔つきだ。一緒にいる友人よりも背は高く、ふっくらとしているように見える。


「だってさぁ。私が聞いてた話とは、なんだか随分違うっていうか。」

「はぁ。だからね?ローザ。今さらそんなこと言ったって始まらないでしょう?」

「でも、窓花・・・私、殴っちゃったよ?」


 どうやら、色白少女の名前はローザで、黒髪少女は窓花という名前らしい。


「だから、私は最初に言ったじゃない。もうちょっと様子を見てからにしなさいって。」


 窓花が諭すようにローザの顔を見て言った。


「う、確かにそう言われたけど。なんかさ、早めに対処しないといけないかなって思ったんだよ。」

「で、それがいきなり平手打ちな訳?」


 再び窓花は溜息を吐く。今度は少し大きく呼吸をしてゆっくりと吐き出した。


「・・・だよねぇ。まずかったよねぇ。」


 ローザはがっくりと肩を落としてうなだれる。

 ここは中学校の教室。札幌市立日之出ヶ丘中学校三年二組の教室。部活も既に終了した時間。二人だけでの会話だった。


「まずいに決まってるでしょう。これじゃあの子と話しをするのもままならないじゃないの。これからどうするつもりなの?」


 窓花は腕を組みながらローザに問いかける。それはまるでお姉さんが妹を諭しているかのような光景だった。


「わかんない。」

「わかんないってあんた・・・」

「もう、この際だからこのキャラでやってみようかなって。それしか思いつかない。」


 ローザは困ったような表情を浮かべたままポツリと言った。


「まぁ・・・仕方がないわよね。けれど、できるだけ早めに情報は集めたいわよね。あの子、竹中夕人って子の。」


 窓花はローザの顔を覗き込みながら言った。


「そうね、本当に川井さんとの繋がりがあるっていうなら気をつけておかなきゃいけないし。」


 ローザは少し元気を取り戻したように顔を上げて窓花の顔をじっと見る。


「でもほら。その話自体が本当なの?私にはいまいち信じられないんだけど。」


 窓花はローザの話をいまいち信じきれていないようだった。情報というのは出所と信頼度が重要であるとよくわかっているようだった。


「だって、去年の話、窓花だって知ってるでしょう?入学早々にあの川井さんとやらかしたっていう話。それでそのあとは舎弟みたいな感じだったっていうじゃない。」


 ローザは右手親指の爪を軽く噛みながら言った。


「その話は知ってるけれどね。でも、そんな子が学級会長をやるなんてことができるのかしらね・・・私はそこが気になるのだけれど。それに、私が調べた話と少し違うのよね。」


 そう言って窓花は胸元から手帳を取り出しパラパラと開きながら中身を確認する。


「窓花の調べた話?」

「そう。私が調べた感じだとね。竹中夕人って子は学業優秀な上に運動神経も良い。学年一の秀才である杉田翔とよくつるんでいて、たまにいたずらをするくらいで素行に大きな問題は無し。強いて言えば少しだけ友達が少ないみたいだけれど。でも、他のクラスのいじめられていた女子を助けたりと評判はそう悪くないようよ?」


 一体どうやって調べたのか。窓花には窓花なりのルートでもあるのだろうか。


「でも、男子達からの評判はいまいちよね。」


 ローザが口を尖らせながら窓花に詰め寄る。まるで自分の考えを間違っていると言われてムキになっているかのようだった。


「そうね・・・まぁ、そういえばそうかもしれないわね。えーっと・・・」


 そう言ってさらに手帳の別のページに書き込まれている情報に目を通す。その手帳をローザも覗き込もうとしたが、窓花に睨まれて諦める。


「あった、これね。確か、彼はバスケ部に一度入部してるわね。でも、すぐにやめてる。どうやら顧問の先生の推薦で入部したものの、そのことが原因でいじめにあったようね。はぁ・・・どこにでもある話とはいえ、この手の話を聞くといい気持ちにはならないわね。」


 窓花が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「いじめ・・・か。バスケ部の二年生はちょっと感じの悪いガキが多いからね。」


 ローザは忌々しそうに言った。


「うちの子達も何人か面倒なことに巻き込まれたことがあるみたいだからね。」


 うちの子というのはもちろん自分の子供などではなく、彼女達が所属している女子バレー部のことだ。ちなみにローザが部長で窓花が副部長。そして、この女子バレー部はお世辞にもお行儀の良い女子が揃っているとはいえない部活だった。特に三年生部員にはやんちゃな子が多いせいでいつも苦労させられていた。


「そうだね。ま、三年生は問題ないとしても、一、二年生の子達はおとなしい子達だからね。」

「一度、話をつけたほうがいいかもしれないわね。」

「そうね。」

「でも、今はその話じゃないわね。」


 窓花は軽く笑みを浮かべてローザを綺麗な顔を見つめる。


「・・・そうだったぁ。私やらかしちゃったんだぁ。ねぇ、どうしよう、窓花。」


 両手で頭を抱えながら喚き始めるローザだった。



 こうして話は再び振り出しに戻った。

今回の番外編お主人公は椎名ローザ先輩でした。

本編では絶妙な存在感を醸し出していた美少女の一人です。

ローザと窓花の関係が少し垣間見えたのかなと思っています。


番外編はもうちょっとだけ続きます。

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