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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第2章 気がつけば・・・
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美女は見た!竹中に隠された重大な秘密!杉田は無事に逃げ延びることができるのか。

さて、前回で椎名先輩と村雨先輩の話が一段落しました。


今回はついに宿泊研修の話です。


それでは

『美女は見た!竹中に隠された重大な秘密!杉田は無事に逃げ延びることができるのか。』

をお楽しみください。

 宿泊研修が終わってもう一週間。早いもので来週はもう期末試験だ。

 あっという間に桜の季節は終わって今が北海道の一番い季節。日本で梅雨のない初夏を堪能できるのは北海道だけだ。そう言えば、札幌に引越してきたばかりのころの杉田に、梅雨がないことを話したら驚いていたっけ。懐かしいな。


「宿泊研修楽しかったねぇ、環菜ちゃん、小町ちゃん。」

「うん、そうだね。楽しかったかな?」

「いや、もっとこう。なんかあっても良かったと思うなぁ。」


 仲良し女子の三人組が、楽しそうに話をしている。

 そうそう、ここはいつもの学校とは違って杉田の家。もうすぐ定期試験だということで勉強会。発起人は栗林さん。それにしてもせっかくの日曜日にみんなで集まってまで勉強するなんてなぁ。


「杉田くん、勉強、ちゃんとしてるの?」

「俺?俺は別にしてないけどねぇ。」


 これだから杉田は・・・ほかにも言い方あるだろう。


「え?嘘?それなのにいつも学年一位なの?」

「こいつはさ、天才で変態なんだよ。基本的に一度聞いたら全部、覚えちゃってるんだよ。」


 ちょっと盛ってるかもしれないけど、大体こんな感じだろう?


「うそ?それってマジで天才?」


 いや、正直に信じるところじゃないだろう、小暮さん。


「いやいや竹中、それはないってさすがに。」

「でも、お前は試験勉強してないだろ?」


 そもそも、杉田が勉強してる姿を見た記憶はない。


「それは、お前も一緒だろ?」


 杉田が普通に言い返してくる。


「まぁ、試験のために、っていう勉強はしないな。」


 その代り、俺は普段からそれなりにはやってるぞ。


「ちょっち待って?なに?竹中くんもなの?」

「・・・いや、天才は杉田だけだよ。俺はそんなんじゃないよ。」


 俺は、違う。それなりに努力はしてるつもりだ。


「ふ~~ん。あ、そう言えば。環菜ちゃんもかなりすごいよね?」

「私はそんなことないよ・・・」

「なんかさぁ。他の人のこととか、どうでも良くない?茜ちゃん、あんたちゃんと勉強しなよ。せっかくみんなで教えてあげてるんだからさ。」


 青葉さんが小暮さんに厳しくあたる。でも、それは彼女のことを思ってのことだ。


「いやぁだ、みんな、なんか怖いもん。」


 小暮さんは首を振ってイヤイヤのポーズをする。


「まぁまぁ、そう言わないでさ、茜ちゃん。私も頑張るから一緒に頑張ろうよ。」


 栗林さんが小暮さんの肩を抱きながら励ましている。二人ってそんなに頑張らないといけない感じだったっけ?


「う、実花ちゃん。」

「ね?」

「でも、実花ちゃんは私よりはいいじゃない。いつも杉田くんに教えてもらえるし。」


 恨めしそうに栗林さんの顔を見る小暮さん。確かに、天才に教えてもらえると良いのかもしれないけど、俺はアイツに教えてもらうのはイヤだな。


「いやぁ、翔は教えるの上手じゃないから・・・」

「ほぉう?それは聞き捨てなりませんな。」


 杉田が栗林さんのひと事にピクッと反応し、右手を顎に添えながら言った。


「でもさ、それって本音でしょ?竹中のほうが確かに教えるのはうまいって。」


 青葉さんが言わなくても良いことをズバッと言う。


「小町ちゃん。それは私もそう思う。そこが二人の大きく違うところよねぇ。」


 杉田の評判が勝手に落ちていっている。相対的に俺の評価が上がっているみたいだが、なんだかなぁ。


「なんか・・・、俺の評判がた落ちだなぁ。」


 杉田は肩を落として大げさに落胆してみせる。


「気にすんな、杉田。お前が天才なことは変わらねぇし、俺が良く知ってるからさ。まぁ、教えることに関しては、俺の勝ちみたいだけどな。」


 なんだろう。杉田のことは認めてる。あいつはすごい奴だ。でも、なんだろうな。最近、あいつを見てるとイライラすることがある。


「さぁ、バカやってないで。そろそろ始めるわよ?あ・か・ね。」

「ふぇ、環菜ちゃん、もうちょっと休憩しない?」

「あんたさ、モデルになりたいんでしょ?だったら、英語とかちゃんとやったほうがいいんじゃない?」

「英語・・・。竹中くーん、教えてぇ。」


 そう言って俺の横にすり寄ってくる小暮さん。うわっ、ちょっと距離が近いって。しかも、なんか良い匂いがするし。


「だからぁ。まずは自分でやんなさいって言ってんでしょ。」


 そう言いながら、青葉さんが俺と小暮さんの間に割り込んで座ってきた。無理して、狭い間に入ってくるなよ。ちっちゃいからって。


「じゃぁ、小町ちゃんでもいいや。」


 小町でもいいやって・・・。すごい言い草だなぁ。


「もぅ、あんたは本当にしょうがないなぁ。」


 なんだかんだ言っても青葉さんはちゃんと教えてあげるんだよな。


「あ、俺ちょっとトイレ行きたい。杉田、わりぃ、トイレ貸して。」


 青葉さんが教えてくれるんだったら俺はいなくても大丈夫だよな。ちょっとサボってこよう。


「おう、そこ出て左側だよ。」

「あ、私も。」


 玉置さんも?しまった。これじゃサボれない。


「あ?二人?じゃあ、竹中はさ、二階にもトイレあるから。そっち。玉置さんはさっき言ったとこで。それなら二人とも大丈夫でしょ?」


 そう、杉田の家ってデカいんだよ。俺たち六人が普通に座って勉強できる広い部屋があるし、あいつの部屋もちゃんとあるし。なんだよ、あいつ。勝ち組かよ。


「りょーかい。じゃ、二階のトイレ借りるわ。」


 みんなのいる部屋から廊下に出る。廊下があるなんてやっぱりデカい家だ。マンションの俺んちには廊下なんてないからなぁ。


「さて。俺は、二階か・・・。」

「あ、竹中くん。ちょっといい?」

「なに?」


 玉置さんと二人きりで話すのは、生徒総会の準備の時以来かも。ひさしぶりだ。


「ここじゃ、ちょっと・・・。」

「そうなの?なんか深刻な話?」

「うん・・・まぁ、そうかな?」


 まぁ?なんか微妙にはぐらかされてる?


「今じゃないとダメなの?あんまり時間かかるとみんなに変に思われるよ?」

「そっか。じゃ、帰りに。」

「帰り?それこそ、どうやって?」

「家の方向が結構バラバラなんだよ。ここからだとね。で、私と竹中くんは同じ方向なの。知らなかった?」

「知らなかったよ。そうなんだな。」

「そうなんだよ。実はね。」

「わかったよ。じゃ、あとでな。」

「・・・うん。」


 最近の俺は、何事にもあまりやる気が出ない。今日だって、本当はあまり来る気はなかったんだけど、青葉さんが、『お前が来なかったら、誰が教えるんだ?』とか言って無理やり連れてこられたんだよなぁ。玉置さんがいれば俺なんかがいる必要なんかないだろう。彼女のほうが教えるのうまいと思うし。


***********************


 なんだかんだでしばらくはみんなきちんと勉強していたが、一人、また一人と脱落していった。俺はと言うと、比較的早い段階で脱落したことは言うまでもない。


「そろそろ解散しようか。小暮さん、燃え尽きてるし。」


 そうそう、早く切り上げようぜ、杉田。小暮さんは真っ白に燃え尽きて灰になっている。


「う~ん、もう、終わりでいいよぉ。」


 灰の中から声が聞こえる。結局、小暮さんは少しくらい覚えたんだろうか。


「そうだねぇ。もうすぐ五時だしね。」


 各々が帰り支度を始めていく。でも、どうしても杉田に聞いておきたい。けど、できれば他の奴には聞かれたくない。杉田に目で合図を送って、廊下に出るように促す。杉田もそれに気が付いたみたいだ。それとなく二人で廊下に出る。


「なぁ杉田。」

「ん、なんだ?竹中。」

「お前ってさ、なんでそんなに頭いいの?」

「なんだよ、急に。」

「いや、お前はすごいなと思ったんだよ。」

「何言ってるんだよ。お前らしくないなぁ。俺は、お前のほうがすごいと思うぞ?」


 杉田は驚いたような表情で俺を見ている。


「はぁ?学年一位さまに言われると、嫌味にしか聞こえませんが?」

「いや、俺さ、味覚音痴だって言われるし、かなり不器用だからな。実技科目なんて試験なかったらどうなっていたことやら。おまけに運動音痴なんだぞ?けど、お前は運動もできるし技術も家庭科もできるじゃん。なんていうの?オールマイティってやつ?そっちのほうが羨ましいって。」

「んなことないって。お前は大した奴だと思うよ。それに俺とは違う何かを持ってると思うんだ。」

「そんなの、気にするな。みんな誰でもそうだぞ?たぶん。」


 杉田は腕を組みながらそう言った。


「でもな、やっぱり気になるさ。」

「気にし過ぎだって、竹中。お前は俺が持ってないものを確実に持ってるからさ。」

「そんなの、あるか?」

「まぁ、自分で気付けよ。そのうち分かるからさ。」


 なんだよ、それ。やっぱりあいつ・・・チクショウ。


***********************


「あ、そうだ。いいこと思いついた。」


 今?もう帰るってところで?いつの間にか元気になっている小暮さんが切り出す。灰の中からよみがえった不死鳥の如く、だな。


「何?いいことって。」

「あのね?私たちみんな、仲良しじゃない。それをもっと仲よくする方法。」

「はぁ?どういうこと?茜。」


 俺も青葉さんとおんなじ気持ちだ。。


「ふふふ。それはですねぇ。」


 なんだ?ちょっと嫌な予感がする。


「みんなで名前で呼び合うことにしましょうっ。」

「それって、今と変わらなくない?」


 杉田、そりゃ、お前と栗林さんはそうかもしれないけど・・・


「あ、それはいいねぇ。」


 本気かよ?青葉さん。


「う~~ん、いいかもしれない。ね?夕人くん。」


 うわっ、玉置さん、さっそく実践ですか。


「どうかなぁ。いい提案だと思ったんだけど。」

「賛成~。そうしよう。夕人くん。」


 栗林さんまで・・・


「なに?じゃ、俺も夕人って呼ぶってこと?」


 杉田に夕人って呼ばれると気持ち悪いなぁ。


「もちろんでしょう。何言ってるの?」


 おいおい。マジか?


「わかったよ・・・。みんながそうしたいって言うなら。」

「うっわ、夕人くん、ノリ悪いよ?」


 いきなりこの流れに乗れないって。


「そうだぞ、夕人。ノリが悪いぞ。」


 くっ、杉田め。なんでお前はさっさと馴染んでるんだよ。


「じゃあ、決定で~。」


 小暮さんの一言で確定してしまった。



「じゃぁ、また明日なぁ。」


 杉田が玄関に出て俺たちを見送ってる。


「あぁ、またな。」

「じゃあね~。」

「ばいば~い。」


 女子たちは手を振ってお別れしてる。俺も同じことをやったら・・・キモイよな。


*********************


 しばらくはみんなと話ながら歩いていた。勉強会が終わってしまえば勉強の話が一切でないところが健全な中学生と言うところだと思う。


「あ、私の家こっちだから~。また明日ね~。バイバ~イ。」


 小暮さんが手を振りながら走って帰って行った。もうちょっと勉強しろよ?今日の様子を見てさすがにヤバいんじゃないかな、と思った。思ったが口には出していない。当然だ。


 そして、もうしばらく歩いたとこで、青葉さんと栗林さんが離脱する。いや、離脱っていうのはどうなんだろう。


「お、私と実花ちゃんはこっちだわ。夕人、また明日ね。」

「じゃ~ね~、また明日ね~。」

「あぁ、また明日な。気をつけて帰れよ?特にちっちゃいの。」

「ちっちゃい言うなっ。」


 青葉さんと憎まれ口をたたきあってる時は楽しいと思うな。


 うん、今は玉置さんと二人だ。

 学校でもないところで。

 昔なら思うところがあったかもしれないけど、今は・・・

ここまで読んでくださってありがとうございます。


前書きの話は嘘です。ごめんなさい。

宿泊研修はここには描かれていません。

しかも恐ろしいことに、何一つ会話の中にも宿泊研修の内容について触れられていません。


リクエストが多ければ宿泊研修の内容については追記するかもしれませんし、しないかもしれません。


さぁ、最後に二人きりになりました。

勉強会の合間に玉置さんが話したがっていた事が明らかになります。

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