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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第17章 真実はいろいろあるかもしれないが事実はいつも一つだ
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ここにいてもいいよね

祝勝会直前、その1になります。


初めて本編に登場するキャラもいるので楽しんでいただければと思います。

「ここに来るのは夏休み以来だなぁ。」


 独り言のように呟く。

 まぁ、彼女でもなんでもない女の子の家に頻繁に来る方がどうかしているのだけど。


「あれ?今日は電気がついてるな。茜にしては珍しい。付けっ放しにしてるのか?」


 などと一人でブツブツ言いながらインターホンを押す。


「はい。」


 あれ?茜の声?いや、違うぞ?これは茜のお母さんの声?


「あ、竹中です。茜さんを迎えに着ました。」


 何言ってるんだ俺。迎えに行く約束なんてしてないぞ?


「あ、竹中くんねぇ。ちょっと待ってね。」


 そう言われた後しばらくして玄関のドアが開く。そこには驚いた顔をした茜が立っていた。


「夕人くん?どうしたの?」

「いや・・・翔のうちに持ってくお菓子を買ったんだけど、少し時間が早かったから・・・その、茜に会いたいなぁって。」

「え?」


 驚いた表情と同時に赤面する茜。俺だってきっと真っ赤な顔をしてたと思う。


「おやおや、君が竹中くんですか?まぁ玄関に突っ立ってないで、お入りなさいな。」


 あれ、さっき聞いた声・・・?


「お姉ちゃん、出てこないでって言ったのに。」


 茜が口を尖らせながら抗議する。


「はいはい。茜ちゃんは怖いなぁ。」


 そう言って笑いながら奥へ入っていくお姉さん。チラッと見えたお姉さんは背が高く、ストレートヘアーでとても日本人とは思えない美しさが漂っている。


「もう・・・あ、ごめん。とりあえず上がってくれる?」


 茜のお姉さんって・・・そう言えば・・・


「あ、はい・・・お邪魔します。」


 茜の家は基本的にお母さんとお姉さんは仕事でいないと思い込んでいた。だから、茜一人だろうと。

 言っておくが、もちろんやましい気持ちがあったわけじゃないぞ。


「今日はね。お姉ちゃんが帰ってきてたんだ。」


 茜が嬉しそうに笑顔で言う。


「そっかぁ。やっぱり忙しいの?お姉さんは。」

「うん、まぁね。夏は本当に忙しかったみたいよ?グラビアの撮影とかドラマがどうとか言ってたし。」


 うーん、雲の上の話だ。茜のお姉さんは芸能人。畔上くろうえグレーシアという名前で活動しているが本名は小暮あかり。でもこのことは俺たちの秘密になっている。

 畔上グレーシアは今をときめくアイドル?何という表現をしていいのかわからないが、いろいろなバラエティー番組やドラマでも見かける。まぁ、主役というわけではないが最近人気が出てきた美人タレントさんだ。


「なんか、スゴイのな。全然想像できないわ。」

「あはは、私もそうだよ。でも、私も最近考えてることがあるんだよね。」

「そうなの?」

「うん、でも今は内緒。」


 茜が内緒って言うなら聞くだけ野暮ってもんだ。


「とりあえず、私の部屋に来て?ね?」

「うん。じゃない。お邪魔します。」


 そう言って靴を脱ぎ、家に上がらせてもらう。サインが欲しいなぁとか考えながら。



 茜の部屋に通される。夏休みに見たときと全然変わっていない。いや、机の上に勉強道具が少し増えたような気がする。


「あぁ、あんまりあちこち見ないで?まさか来るとは思ってなかったからそのままになってるんだから。」


 そう言われても別に散らかっているわけでもないし、なんだか部屋からは茜の匂いなのかな。いい匂いがする。


「ごめん。まさか、お姉さんがいるとは思ってなくて。」

「そりゃそうだよね。私も言ってなかったしね。」

「お母さんも帰ってきてるんだよね?」

「ううん。お母さんは明日帰ってくるの。今日は事務所で打ち合わせなんだって。」


 事務所で打ち合わせかぁ。なんか、カッコいいな。『へぇ~、そうなんだ。』と相槌だけ打つ。


 コンコンッ。


 ドアをノックする音が聞こえてお姉さんが現れる。


「ねぇねぇ、茜ちゃん。その子が竹中夕人くんなんでしょ?お姉ちゃんにも紹介してよ。」

「もう、お姉ちゃん。そんな大きな声で言わないでよ。恥ずかしいじゃない。」

「恥ずかしがることないっしょ。茜ちゃんの本命なんでしょ?お姉ちゃんも知っときたいっしょ。」


 どこかで聞いたことがあるような北海道弁。テレビで見る畔上グレーシアじゃなく小暮あかりお姉さんがそこにいるんだなぁ。


「本命ってっ。お姉ちゃんのバカッ。」

「バカはないでしょう?こう見えても結構頭はいいのよ?」


 なんだか微笑ましい姉妹の会話。茜のタジタジな姿を見るのは初めてだ・・・って本命?


「あ、えっと、すみません。はじめまして、お姉さん。竹中夕人って言います。茜さんのクラスメートで、今日は友達の家で生徒会選挙の祝勝会があって・・・それで、その、茜さんを迎えに来ました。」


 しまった。なんだかとってつけたような挨拶になってしまった。


「うんうん。礼儀正しい子は好きよ?それに竹中くんでしょう?茜ちゃんからはよ~く話を聞いてるから、私も会ってみたかったのよね。」


 そう言って茜の制止を振り切って部屋の中に入ってくる。


「もう、お姉ちゃんっ。」

「いいじゃない。滅多に会えないんだから。少しくらい話させてよ。」


 そう言いながら持ってきたジュースを茜の机の上に置く。ちゃっかり三人分あるのはさすがというべきか。


「はぁ・・・」

「でね、竹中くん。私も夕人くんって呼んでもいいかなぁ。」


 そう言って半歩近づいてくる。うっわ、間近で見ると本当に美人だ。少し化粧をしているみたいで香水も付けている。なんだか、今まで見たことのない大人の女性を感じる。なんだか勝手に恥ずかしくなってくる。


「あ、はい。どうぞ・・・」

「お姉ちゃん、夕人くんとくっつかないで。」


 そう言って茜が俺の腕にしがみ付いてくる。こんな茜を見たのも初めてだ。


「はいはい、茜ちゃんは心配性だなぁ。お姉ちゃん、妹の彼氏になんか手は出さないよ?」

「むぅ・・・」


 茜は必死に俺の腕に絡みついている。その、胸が当たっていて・・・あの・・・


「で、夕人くんはどこまで知ってるのかなぁ?」


 お姉さんが少し首を傾けながら笑顔で聞いてくる。


「どこまで?」

「そ。私のこと茜から聞いてるんでしょう?」

「・・・はい。聞いてます。」


 きっとタレント業のことだろう。でも、実際のとこをは本名も不明ってことにして芸能活動をしているわけだから、本当は知ってちゃいけないのかもしれない。


「うんうん。正直でいいねぇ。そして、ちゃんと約束を守ってくれてるんだね。」

「はい。」


 約束っていうのは茜のお姉さんが畔上グレーシアだと誰にも言わないってことだ。もちろん、父親にも妹にも言ってない。当たり前だけどクラスメートにも言っていない。えっと、母親にだけはちょっと茜を泊めるために話しちゃったけど・・・あれは止む無しということで。


「夕人くんは約束を守る人だもん。」

「わかってるわよ。だから、茜も話したんでしょう?あなたの友達はきっといい子たちなのねぇ。」


 自分がいい子なのかはわからないけど、約束というのは守るためにある。少なくとも俺はそう思っている。


「そう、翔くんも小町ちゃんも環菜ちゃんもいい人だよ。」


 環菜・・・今日、本当に久しぶりに環菜と話した。今までの、俺が知ってる環菜ともまた違う環菜だった気がする。


「でもでもっ、やっぱりいろんな話を聞きたくなっちゃったりする?」


 そう言って笑顔で迫ってくる茜のお姉さん。間近で見るとすごく綺麗だ。茜も・・・こんな感じになるんだろうか。


「いや、そんな・・・ことはないです。お姉さん。」

「あん、つまんない。お姉さんなんて言わないで❤」


 笑顔のまま近づいて来て俺の腕をとって話しかけてくる。


「えっと、じゃ・・・?」

「そうねぇ、今はプライベートだからグレーシアって呼ばれるのもイヤだし。あかりさんって呼んでもらおうっかな?」


 そのまま体を近づけて来て、茜から俺を引き離そうとするが茜も俺の腕を話そうとはしない。ちょっとだけ幸せだと思っていたのは内緒だ。絶対に内緒だ。


「もうもう、お姉ちゃん。そんなに夕人くんに迫っちゃダメ。」

「迫ってなんかないわよ。普通にお話してるだけ。茜もここに座ってちょっとお話ししましょうよ。」


 グレーシアさん、いや、あかりさんが俺の腕から手を離し、茜のベッドに腰を下ろす。


 それにしても有無を言わせぬおっぱい。もとい迫力。家の中だから薄着なんだろうけど、薄手のワンピースからこぼれそうな胸に目が釘付けになりそうだ。

 さすが茜のお姉さん。姉妹揃ってスゴイや。


「うん・・・」


 そう言って、茜もペタンとその場に腰を下ろす。俺も茜の横に座る。というか、茜は腕を掴んだままだったから引っ張られるようにその場に座り込んだわけだ。


「あのね?茜からもいろいろ聞いてると思うんだけど、私、畔上グレーシアって名前でタレントやってるの。」


 あかりさんは座ったまま俺の目を見て話し始めた。


「はい。」

「でね?今日から一週間お休み貰ったんだ。久しぶりのお休み。二か月ぶりかな?」

「そうなんですか。忙しいんですね。」


 二か月休みなしで仕事をするというのはどういう気持ちなんだろう。仕事をしたことがない俺にはさっぱり想像ができない。


「そうそう。忙しいのよぉ。でもね?この業界っていうのは忙しいうちが華ってね。」


 そういうものなのかな。


「でも、休みがないっていうのはツラいですよね。」

「うん。ちょっとね。だから、たまの休みはこっちに戻ってきて茜と会うのを楽しみにしてるんだ。たった一人の妹だからね。」


 あかりさんは茜の顔を見ながら笑顔を浮かべたままでいる。


「お姉ちゃん・・・」

「そうなんですね。あ、今日はすみません。折角のお休みなのに茜さんは僕たちのイベントに参加してくれるっていうことで・・・」


 せっかく忙しいお姉さんが帰って来ていたのに申し訳ない。


「あぁ、それはイイのよ。茜に友達がいるっていうだけで安心だし。それに、私も行こうかなって思ってるし。」

「「えっ?」」


 思わず茜と声が揃った。俺も驚いたけど、茜の驚きようと言ったら想像以上だ。


「ちょっとお姉ちゃん?そんなに簡単に外に出ちゃっていいの?翔くんの家には私の友達が何人も来るのよ?そんなところに顔出ししちゃったらマズいんじゃない?」

「大丈夫よぉ。事務所的にもそろそろちゃんと日本人だってことを出していくって言ってたし、それに、今度の放送で北海道出身っていう話は出るわよ?もしかしたら本名も出るかもしれないし。いや・・・さすがにそれは無いかなぁ。」


 でもだからって、いいのかなぁ。


「でも・・・」

「はいはい。茜ちゃんが来てほしくないっていうなら行かないわよ、お姉ちゃんは。」

「そういうわけじゃないけど・・・」


 確かにあのメンツならあかりさんが来たって全然問題ないだろうけど・・・


「ふふっ、まぁ、とりあえずは準備しなさいな、茜。着替えたりしないといけないでしょう?私は夕人くんと居間で待ってるからね。」


 そうやって言いたいことだけ言って自分の分のジュースを持って部屋を出て行く。


「もうお姉ちゃんってば・・・」

「なぁ、茜。本当に来るのかな?」

「さぁ、わからない。お姉ちゃんは気まぐれなところがあるから。」


 そういう感じは確かにする。でも、そんな適当な感じにも見えないし、どこまでが本気なのかはわからないっていう感じがする人だよな。


「まぁ・・・とりあえず、着替えるんでしょう?だったらここにいてもいいよね?」

「ダメ。」

「だよなぁ。じゃ、お姉さんと下で待ってるよ。準備ができたら来てね。」


 そう言って立ち上がり、部屋から出て行こうとする。


「ねぇ、夕人くん。あとで話を聞いて欲しいの。」

「・・・わかった。」


 振り向かずに返事だけを返す。なんの話かは分からないけど、茜からの申し出を断ることなんてできない。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


茜のお姉さん、畔上グレーシアこと小暮あかりが初登場となりました。

茜をさらに成長させて、さらにナイスバディにした感じのお姉さんです。

中学生には刺激が強すぎるかもしれません。

茜が成長したら、お姉さんみたいになるんでしょうかね。

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