第七枝『悔』 第八枝『喜』
初めは目の前の虫けら十人を地に沈めた。
その後ゆっくり歩いて外へ出た。
今の地理情報とニュースデータをインターネットから引き出した。
そこから、適当な都市へと向かった。
僕に刃向かえるヒトなどいなかった。
最後の修理のおかげか、エネルギーは絶えることはなかった。
戦車などのヒトが使う兵器の攻撃を受けても無傷だった。
抵抗する者は臨戦態勢で。
逃げ惑う者は号哭しながら。
ただ出くわした者は皆立ち尽くして死を迎えた。
一つの都市を潰したらまた次の都市へ。
その繰り返しだった。
世界の半分を半日で潰したくらいから、残りのヒトは宇宙に逃げようとした。
護衛用の戦闘機はそこらにある物を投げて打ち落とした。
それから全てのシャトルのシステムをハッキングし、故障させて落とした。
ようやく最後。
最後の町は、彼女の死んだ町だ。
ここは最後に残していた。
恨みの全てをぶつけるために。
逃げ場を失って喚き散らすヒトで溢れていて、それはそれは騒がしかった。
その煩いヒトを、全て片付けた。
そうして、ふと気づいた。
ある建物の一室から、一枚の紙が風に揺られながら落ちてきていることに。
なぜか目に付いたそれを手に取った。
見てみると、それは彼女の遺書だった。
急いで書いたのか、文字が汚かったが、確かに彼女の文字だった。
―QI、あなたにこれが渡ったとき、私はまだ生きているかしら。
この頃あなたを悪用しようとする組織が動き出したみたいでね。
私の行動からあなたの居場所が知られちゃいけないから、今日は家に帰れない。ごめんね。
目を盗んで少しだけでも家に帰ろうとは思ってるけど、そんなに時間は
最後に三つ勝手なお願いなんだけど、もし私が死んでたら、
私のお墓を作って。
その近くに桜を植えて。いつでも見ることができるように。
それから、この世界を温かく見守ってあげて。
生粋の傍観者として。私の代わりに。あなたならできる。
木野 七偲―
脚から力が抜けて、その場で膝をついた。
視界が歪み、地面に黒い雫が垂れた。
曇天の中、僕は歩き出した。
景色のいい丘の上に、彼女の墓を作り、小さな桜の苗木を傍に植えた。
それから、世界を見守り続けた。
何日も。
何十日も。
何年も。
何十年も。
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もうあれから何百年経ったことだろう。
そう思っている僕の横に生えている桜は、あのときから少しだけ大きくなった。
花が見られるのは、あと何千年先のことだろう。




