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第五枝『哀』
所々が壊れたままの機械は、いつからかずっと動いていない。
もうこの近くに人もいなくなってから、随分と時間が経った。
鬱蒼と茂った森の中。
ツタで覆われた建物の一室で、沈黙を保ったままだ。
そんな哀れな鉄塊は今日、こんな声を聞いた。
「やっと見つけた。
ごめんね、待たせちゃった。
すぐ起こしてあげるからね」
とても澄んだ、いい声だった。
―――――――
意識とは関係なく目は開いた。
僕の前には、またあの時と同じ床が、少し緑がかって広がっていた。
その上には、誰の影も映ってない。
彼女の「すぐ」と、僕の「すぐ」は違ったらしい。
そして僕はまた、動かなくなった。