Prolog
沈んで行く……
しかし何に?海や池に落ちた?
それにしては苦しくもない。
目を開けるとそこは無だった。
真っ黒でまるで闇の世界に落とされたようだ。
そして闇の奥から何か出てきた。
燃え盛る業火の炎と、反対側の奥から全てを凍てつかせる冷氷が押し寄せて来た。
そう思えたのも本の一瞬だった。炎と氷は直ぐにぶつかったってしまった。
僕を巻き添えにして。
『熱い、燃えてしまう』と思うと同時に『冷たい、凍えてしまう』と正反対の二つの感覚が僕を襲った。
しかし実際に燃えもしないし、氷もしない、最早永遠と続く生き地獄のようだ。
そんな風に苦しんでいると炎と氷から何か聞こえてくるように感じた。
しかしそれは段々とはっきり聞こえてきた。
「汝は時期に起きる悲劇にあらゆる物を失うであろう」
「そして失う事で今まで秘めていた血族の力を覚醒させるでしょう」
「奪われた事に対する『忿怒』と」
「守れなかった『悲哀』で」
「「二つの相反する力が異なるが表裏一体の感情にて一つになり、汝を真なる姿に変豹するであろう」」
「だが覚醒はしたとしても」
「汝のものにはならんであろう」
「「汝が全てを受け入れ誠なる覚悟と信念を掲げんことを……」」
炎と氷はつらつらと語り、僕に何かを教え、導こうとしているのがわかる。
そして語り終えると来た所に戻って行った。しかしまだ熱さと寒さが消えない……。
そして僕は瞼を閉じた。
そして僕がこの夢を思い出すのは二度目の宮殿来訪時だった。