少年の旅路①
俺は次の目的地の確認のために地図を広げた。
「森を抜けると街道にでるんだよな・・・1番近い町はオルクスって海斗さん言ってたな」
オルクスは周りの村の交易の中心となっている町なので、商品だけでなく、人も集まっているといわれている。
俺の目的は少しでも、多くの異能や異端を奪い、神から妹を取り戻すことだ。
そのためにも、少しでも人の集まるところへいくべきだと思う。
そんなことをのんびりと考えていると、前方からいきなり矢が飛んできた。
「うお、あぶな!」
俺はすばやく<全てを喰らう者>を発動させた。
追撃の矢が飛んでくるが<全てを喰らう者>に飲み込まれて消滅した。
「ちっ、森じゃ不利だな・・・」
その間にも、前方から多数の矢が飛んできている。
「<全てを喰らう者>よ、森を喰らえ!」
そういった瞬間、森の一部が黒いものに覆われ、次の瞬間予想以上の範囲の森がなにもなかったかのように消え去った。
「これは気を付けないと、大変なことになるな・・・」
気を取り直して、矢の飛んできた方をみると人影が見えた。
「とおいな・・・ん?近づいてきてるのか?」
どうしようか考えていると、相手が近づいてきました。
「おい、お前なにをした?」
「いや、俺は矢が飛んできたから反撃しようとしただけなんだが・・・」
「ちっ、森を荒らすやつが・・・殺してやる」
男はそういうと、剣を抜いて襲いかかってきました。
「はぁ~、めんどくさいな」
俺はそういうと<全てを喰らう者>を発動させた。
剣に黒いものがまとわりついたが、剣を消滅させることができなかった。
なぜなら、剣によって黒いものが切られていたからだ!
「な、まさか、剣に切られるなんて・・・」
<全てを喰らう者>の合間を縫って、矢を飛ばしてきたので、ギリギリで避けたのだが・・・袖が切れてしまっていた。
「な、なにが起きたんだ・・・確かに避けたはずなのに・・・」
俺が戸惑っていると相手は動きを止めて話しかけてきました。
「どうだ?驚いたか?これは俺の風の力だぜ!」
俺はこいつは口が軽そうだと思った。
「ちっ、厄介だな・・・」
俺はそう言いながらも内心では笑っていた。
なぜならば、<全てを喰らう者>の発動条件の1つを満たし、あと1つもすぐに達成できる目処がたったからである。
「おまえは、その力を使ってあんな遠い距離から矢を放ってきたんだな!」
「その通りだよ!おかげで、おれは弓の名手なんて言われるようになったんだぜ」
俺は名前を聞き出すために嘘をついた。
「ほう、あの有名な弓の名手様でしたか・・・」
「俺のことを知っているのか?」
「ええ、自分のいた村でも有名ですから、お願いがあるのですが・・・」
「ん?願い事か・・・聞いてやろう」
「村の者に自慢したいのでお名前を教えていただけませんか?」
「それくらいならいいぞ、俺は弓の名手のディーンだ」
「ディーン様ですね、ありがとうございます・・・」
その瞬間、俺は<全てを喰らう者>を発動させた。
発動させてとたんに頭の中に声が聞こえてきました。
発動条件クリアー
能力発動させますか?
俺は頭の中に聞こえてきた声に内心で返事をしました。
そのとたん、意識が薄れて、からだが勝手にうごきだしました。
『能力発動、<能力奪取>』
「な、なにをするつも・・・がぁ、や、やめ・・・」
そして、ディーンを黒い霧のようなものが包み込み、からだの隅から食べ始めました。
辺りにはそしゃくの音が響きました・・・
俺は内側からそれをみて、吐きそうになっていました。
(なんで、俺のからだが勝手に動いて人を食べているんだよ・・・)
そして、ディーンを食べ終わり、また声が聞こえました。
『能力奪取完了』
そして、意識が浮上するような不思議な感覚にとらわれ、意識が戻りました。
俺は戸惑いながらも思わず声を出しました。
「いったい、俺の体になにが起きているんだよ・・・」
しかし、その問いに答えるものは誰もいませんでした。
そのとたん、頭の中にいきなり情報が送り込まれてきました。
<風を司る者>
風の流れ、力をある程度操ることができる。
上位互換として<風の精霊の祝福>がある。
前回と比べとくに気持ち悪くなることもなく、俺は思わず呟いた。
「この不思議な感覚にも慣れてきてるな・・・」
「まあ、そんなことはいいとして、はやくオルクスに向かわないとな・・・」
秋斗は街道を目指して、見通しのよくなった森を歩いていきました。
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次回は少女の旅路①です。
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