暗闇の外へ
グラントロールを倒した後俺は周囲を確認し安全を確認した後、気絶したレフィリアが目を覚ますまでその場で待機していた。
「ほんっっとうにヒドイ目にあったわ」
「だから悪かったって」
レフィリアは暫くして目を覚まし、傷を見たところこれといって目立つ傷はなかった。本人曰く、神に造られた存在だから次元が違い過ぎてあの程度じゃ全く問題にならないだそうだ。
んで、元気になった途端に拗ねだした。
面倒なことこの上ない。
「まぁいいわ。それであんたのほうは怪我はないの?」
「ああ、お陰様で。傷一つねぇな」
「そ、ならさっさとこんなとこ出ましょ。目的の宝も手に入れたんでしょ?」
「お、おお。そうだな」
意外にあっさり引いて思わず動揺する。
もう少し粘ってくるかと思った。
「あんた何か失礼なこと考えてない?」
「いいえ、何も」
鋭いな、なんて思ったりしながら先へと進む。目指すは出口、そろそろ外の空気を吸いたい頃合いだ。
パラリ。
「ねぇ、何か落ちたわよ」
「んあ?本当だな」
俺の後ろを飛んでいたレフィリアが何かを拾いあげる。
それは一枚の紙だった。
「そんなのどこに入ってたんだか。で、何が書いてあるんだ?見せてくれ」
「はいこれ」
拾った紙を受けとる。
紙は何回かに折られて小さくなっていただけでかなりの大きさだ。
とりあえず広げてみる。
「手紙‥‥かこれ?」
よくみると小さな文字でびっしりと紙一面に書いてある。
「勝手にみて平気なの?」
「まぁ、平気じゃねぇのか?」
こんな手紙が洞窟におちているなんてことはあまりないだろうし、しかも俺の中から落ちたっていうことは少なくとも俺に関係あることだろう。
そう判断しその文字の羅列に目を通し始める。
ーーこの手紙を受け取った君へ。
この手紙を見ているということは無事君は宝箱から大剣を手に入れ、トラップの魔物を倒したということだろう。
それについては謝るしかないがこの剣を中途半端な者に与えるわけにはいかなかったということを理解してほしい。
さて、突然だが君はこう思っていることだろう。
お前は誰だ、と。
端的に言うと僕は君の持つ剣、『エスレシオン』の前回の持ち主だ。
どうだい?驚いただろう?
そもそも何故僕がこんなものを書いているのかというとだね、まずは僕の生まれた地であるーー
「ーーな、長っ!なげぇよこれ。これでまだ全体の十分の一にもいってねぇぞ⁉︎どうなってんだよ‥‥」
「ホントね。しかもちょいちょいくだらない話の中に大事な部分が書いてあるからタチが悪いわねぇ」
「どうせならもっと分かりやすくして欲しかったぜ」
ざっと読んでみたところこの大剣の名がエスレシオンってこと、この大剣には特殊な能力が複数あるってことがわかった。
まず一つ目の能力が体内に宿る魔力を使って衝撃波が放つ能力。
二つ目が同じく魔力を使って刀身が伸びる能力。
それ以降の能力は不明。
前回の所有者が大剣の能力をここまでしか引き出せなかったからだそうだ。
あとは俺が左腕に着けた腕輪について。
これは身に付けると武器に属性を纏わせることができるらしい。
纏わせられる属性は火、氷、風、雷の四つだった。
試しにやってみたところエスレシオンの刀身が紅くなり熱を放つようになった。
とりあえずここまで読んで一旦止めにしておく。
こんなの読んでいたらキリがない。
「さて、これだけでも分かっただけで上出来だな。さっさと出口へ行くとすっか」
「そうねっ。さぁ!ちゃっちゃと歩きなさい」
今度こそ出口を目指して歩きだす。
出口がこっちで合っているかとか一本道だから案外すぐに着きそうだ。
歩いている途中に人とすれ違うこともない。洞窟なんだから当たり前といえばそうだが少し不安になってくる。
そして、一時間も歩かない内に日の光が差し込むのが見えてきた。
「おっ、着いたか」
レフィリアが反応しなかったのでひとりでにつぶやいたようになってしまった。黙っていると思ったら俺の肩で涎を垂らして寝ているレフィリアが目にはいる。
一瞬、このまま落としたら面白いなんて思ったり思わなかったり。
そのまま少し歩くと外へと出る。
目を焼くような日差しに青い空、穏やかな陽気を運ぶ風に、洞窟内の淀んだものとは比べ物にならない澄んだ匂いが鼻をついた。
やっと俺は外に出ることが出来た。
「ん‥‥んんっ〜」
陽射しが目に入ったのか寝ていたレフィリアも目を覚まして伸びをする。
「よっ、おはようさん」
「んー、おはよう。外に出れたのね」
「ああ、やっば外は気持ちがいいもんだな」
改めて辺りをみるとどうやら山の奥地のようだ。
所々に木々が茂っている。
「こっからどうすっか。野宿ってわけにもいかねぇしなぁ」
耳を澄ませば水の流れる音が聞こえるから水分には困らないが食料がない。
神の造った体だからか戦闘をした後だってのにあまり疲労感がないがしっかりと食事と休憩はとっておいたほうがいい。
「ちょっ待って。えっとこのまま山を下ると小さな町があるわね」
どこに向かおうか迷っているとレフィリアが何かを探すような仕草をしてから情報を提示する。
「なぁ、さっきから気になってんだけどよ。お前さんさっきからどうやって情報確認してるわけ?」
「んー?簡単に言うと神のデータベースがあってそこに接続してるだけ」
「ほー、それじゃ大抵のことは分かるってことか。そりゃ便利でいいや。じゃ、その町に向かうとすっか」
レフィリアが肩に止まったのを見てから
山を下るために走りだす。
新たな目的地へと向かって。
と、ここまでが数時間前のこと。
「おらぁ!こいつの命が欲しかったらさっさと金目のもんと有り金全部置いてきなぁ!」
「に、逃げてください!早く!」
目の前には髭面の強面のおっさんとそのおっさんに組み敷かれている身なりのいいおっさん。
どうしてこうなったんだか‥‥
本日二話目