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魔術師、協力する!



「──ん?」


 それから気がつけば五分ほどが過ぎていました……。

 我に返ってみると、ニーナさんが顔を真っ赤にして失神していたのです。


 う、うわぁぁどうしよっ!?

 夢中でまったく気づかなかったっ!!


「んん、ニーナってば完全に身体に力が入ってないです……」


 あぁぁ本当にごめんなさいごめんなさいありがとうございますニーナさんっ!


 取り敢えず、溺れないように支えて……。

 うーん。このままだと湯あたりの危険もあるし、どうにかしないと。


「よしっ」


 こういう時は、助けを呼べばいい。

 助けてくれる協力者を募るのです。


「精霊さーん! しゅ〜〜ごぉ〜〜!」


『──呼応。呼バレテ飛ビ出マシタ。恩人サマ!』

『──!』『──!』

『──!』『──!』

『『────♪』』


 精霊さん達が脱衣所の方からササっと集まってくれた。総員、隊列を組んで待機している。


 赤い火の鷹っぽい鳥くん。

 青い綺麗な水蛇さん

 茶色い可愛い栗鼠ちゃん。

 薄緑の燕っぽい鳥さん。

 楽しげに揺れる闇色と純白の蝶々ズ。

 そして、唯一話せる人を模した妖精さんみたいな精霊さん。


 全精霊、七個体。完璧です。

 まさか本当に言うことを聞いてくれるとは。少し驚いた……。まぁ、いいや。今はニーナだ。


「精霊さん精霊さん。僕を好きなだけ食べていいので、代わりに手を貸して下さい」

『歓喜。ハイ喜ンデ』

『『『『────!!』』』』

『『──♡♡』』

「ふふ、ありがとっ」


 喜んでって、精霊さんてばやっぱり感情あるじゃない。誰よ偽情報流したの……。

 でも、これは好都合だ。早速、生命力(おれ)を好きなだけ与えていく。

 当然焔魔纏は切ったままですよ。怖いですし。

 でもなんか、七体とも不思議なくらいキラキラしてるんだけど、大丈夫だよ、ね……?


 ん、気にせずいこう。

 俺はビシッと指示をだしていく。


「じゃあ、まず風の子にはニーナを脱衣所まで運んでもらって、土の子は脱衣所に簡易ベッドを作ってもらえる?」

『『──!!』』

「ん、お願いね。次に水の子はニーナの濡れてる身体の水分を取り除いてくれるかな? 火の子はニーナが冷えないように温めてくれる?」

『『──!!』』


 契約者でもない俺のお願いを、精霊さん達はとても素直に聞き、キビキビ従ってくれる。


 ニーナの身体を風が包むと優しく持ち上げ、脱衣所へとフヨフヨ移動する。

 俺も付き添うように脱衣所まで行けば、既に綺麗な石のベッドが出来上がっていた。

 そして、ベッドに横になったニーナの身体を水の塊が包み、剥がれると、髪や身体に滴っていた水滴と、水を吸ったタオルの水分までもが取り除かれる。

 その間に温かみのある炎が浮かび上がり、暖を取れるような準備が完了していた。


「ありがと。あとは……闇の子と光の子、あと人の子は〜……僕も良くわかんないから、好きに動いてもらえる?」


 うん、闇も光もかなり特殊だから、母様をしても僕に教える事が出来なかった。

 だから、何ができるか詳しくは分からないんだよね。適性自体は焔魔纏にあると思うから、いつか特殊魔法士の人に教えてもらえないかな?


 あと人の子は、そもそもなんの精霊なのかすら不明なのよ。だから、指示は適当です。


 とか思ってたら、三体の精霊さんが動き出した。

 人の子が何か念力チックなもので、ニーナのタオルを剥ぎ取り──って危なっ……くない!?

 え、光の子が出した謎の光で、ニーナの胸部と下腹部が隠されてるぅ!


「ん、闇の子はどうして僕の頭に止まってるの? ────ッんぇ!?」

『──♪♪』


 か、身体が勝手に動いてる?


 気づけば俺の身体が、自分の意思とは関係なく動いており、ニーナの服を丁寧に着せていく。途中から人の子の手助けもあり、片手でも大分スムーズに着替えが完了した。


 なんていうか……凄い。

 三体の精霊もそうだけど、他の子達も魔法とは違う原理で、かなり細やかに事象に干渉していたのだ。

 なんか、精霊使いの凄さの一端を知った気がする。


 ともかく、精霊さん。すごく有能でした。


「みんな、ありがとっ」

『答。イエイエ。当然ノ事ヲシタマデデス』

『『『『────ゥ!!!!』』』』

『『──ィ♪♪』』


 精霊さんと一致団結した所で、俺自身も着替えを済ませた。

 人の子が、またしても手伝ってくれたので、凄く楽でした。



 ◾︎◾︎◾︎



「それで、何かいうことはあるかしら?」

「えと、ごちそうさま?」

「なんでっ!?」


 あれから数分で、ニーナはあっさり目が覚めた。

 起きてすぐは、蕩けた顔でポ〜っとしていた彼女だったが、自分が服を着ていることを認識すると、何を思ったか瞬間沸騰の如く、羞恥に顔を染めていた。


 そして、何をやったのか問い詰めてきたところ……正直に白状しました。


 ただ、精霊さんも味方してくれたから、ニーナの誤解は比較的簡単に解けたけどね。

 裸は見たけど、全裸は見てないし。


 まぁ、ニーナは裸を見られたという方に意識が向いて、俺が手ずから着替えさせた点を見落としている。

 このまま気づかないでいてほしいな。



『助言。主ノ下着ハ純白。マサカノ勝負下着? 恩人サマハ、ドウ思イマシタ?』


 わ〜、わ〜、わ〜!!?

 何で言ってるのっ、この子っ!


「──ふぇ!? ぁ、ぁぅぅぅ……」

「あ、ちが、確かにイメージ通りだなとは思ったけど……ってそうじゃなくってぇぇ!」

「うぅぅぅ」


 あぁ、折角良い感じに纏まりかけてたのに。精霊さんのイヂワル。蹲ったニーナの、涙目な上目遣いが胸に刺さるよ。


 ん、もう。仕方ない。

 この際、丁度いいから、ニーナの罪悪感を消す為に、もう一押ししちゃおう。


「ニーナ、僕のお願い聞いてくれてありがとうね。すっごく嬉しかったよ」

「…………っ」


 ニーナはお願いのことを思い出したのか、少し表情が曇りかけたが、そうはさせじと畳み掛けた。


「それでもニーナが納得出来ないなら、この辱めに対する僕の謝罪とを合わせて、清算にしてくれないかな?」

「………………そんな言い方、ズルイわ」

「あはは、ダメかな?」


 苦笑いを浮かべながら問う。

 ニーナは俯きながらも立ち上がり、顔を少し背けて口を開いた。



「……あり、がと」


 そんな姿に、俺は胸を打たれる。

 なんといじらしいんだろう。

 普段のクールな姿とは打って変わって、儚くも可憐な一人の乙女がここにいた。


「あぁんもう可愛いなぁ〜」

「ちょっ、ちょっとぉ!?」


 衝動に任せてニーナを正面から抱擁した。

 背が低いせいもあって、ニーナの肩にあごが乗る形だ。そして目の前に素敵耳。


「んふふ。ニーナはもう少し心にゆとりを持とうよ。ん、そうだ。どうせなら家族になる? そうしたら僕が徹底的に甘やかしてあげるよっ♪」

「──かっ!?」


 ニーナって今のところ天涯孤独な状態なんだよね? いや、ニーナが師匠って呼んでるプルトーネさんが養母なんだっけかな?

 まぁ意味合いが違うし大丈夫でしょっ!

 母様達は俺が頑張って説得して、認めてもらおうっ! 大丈夫大丈夫。

 ニーナはと〜〜ってもいい子だもん。

 それに仲間想いだし、家族になる資格ばっちしっ。


 これで、これで──ニーナが僕の妹にっ!

 アルルも新しい家族ができたら嬉しがるだろうなぁ〜。



「かかかかかかかぞくっ!?」

「うんっ! 家族!」

「そそそそれって……おおおよ、お嫁さ…………──ダメよっ! 貴方にはアルルがいるじゃないっ!」

「うん、アルルがいる! でも大丈夫っ! 母様達は説得してみせるよっ!」

「ダメっ、アルルだって恩人なのっ。そんな申し訳ないこと出来ないっ」

「大丈夫っ! アルルだって大賛成すると思うからっ!」

「ふぇえぇぇえぇ〜〜っ!?」

「んふふふっ♪ 母様達が帰ってきた時の楽しみがもう一つ増えちゃったっ」


 ニーナは突然の出来事にあぅあぅ言ってるね。ふふ、微笑ましいなぁ。

 ……あれ? でもニーナって俺たちより少し年上なんだっけ。まぁ、大丈夫ですよね。

 それでも妹であることには変わりないっ。


「ニーナは別に年齢差とか気にしないよねっ?」

「──ぅえっ? そ、それは気にしないけど、……って、そうじゃないわっ! ちょっと待ってっ! おねがい、おねがいだから〜〜っ」

「だよねぇ、よかったぁ」


 なら、問題解決だね。

 僕にエルフな妹ができました!

 そうとなれば呼び方だよ。

 やっぱり無難にお兄ちゃん?

 お兄様? 兄上? 兄さん? シャル兄? うーん、迷うなぁ……いや、普通が一番かな?


「ねぇ、ニーナ?」

「ひゃいっ!」


 抱擁を解き、手をニーナの肩に乗せて瞳を覗き込む。ニーナの顔は火を吹くんじゃないかってくらい真っ赤。さっき耳触ってた時以上だ。大丈夫かな?

 いや、今はそれより。


「ニーナさえよかったら、」

「う、うん」

「僕のことは『シャルお兄ちゃん』って呼んでね?」

「……へ?」

「ん?」

「………………」


 ニーナが固まった。

 本当に大丈夫かな?

 とか思ったら、



「うわぁぁぁぁあぁぁぁ〜〜んっ」



 物凄い恥ずかしそうな顔を浮かべて、両手で顔を覆い走り去って行った……。


「あれ? そんなに恥ずかしがるようなことお願いしたつもりはなかったんだけど。ニーナ、大丈夫かな」

『問題無。勘違イ加速ノ結果デス。ソノ内、戻リマス』

「そう? なら良かったっ」


 精霊さんがそう言うなら安心だ。

 何せ一番の理解者とも言えるでしょうし。


 俺は安心すると、ニーナが置き忘れた木杖を持ち、そのまま七体の精霊ズを引き連れて、家に戻ったのだった。








 ──ちなみに。


 ニーナは精霊さんの言う通り、家に戻って少ししたら元に戻った。家族になるお話も、前向きに考えてくれたみたい。アルルも嬉しそうにしてた。


 早く母様たち戻って来ないかな。

 ニーナの事を早く伝えたい。


 それと、今夜の出来事のおかげで俺はニーナと、もっとグッと仲良くなれた気がする。

 混浴も我慢し続ければ、こんなに良いことが起きるんだね。

 これからは、アルルも少しはお目こぼししてあげようかな……?






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