候都での日々③
シャルがユミルネのお屋敷を訪ねていた頃。
時同じくして、アルルとニーナが慌ただしくファナールの街を駆け回っていた。
今日は依頼ではなく、街を発つにあたっての挨拶回りだ。こういう挨拶は早めに済ませておいたほうが良いだろうと、今朝から世話になった者たちの所へ顔を見せて回っている二人だった。
一番お世話になった蓮華亭のコレットには、昨日の内に三人でキッチリと伝えてある。
ただ予想通りというか、シャルたちを溺愛し、最大の癒しとしていた彼女には、出立の話は強烈すぎたようで、今日に至ってもまだ『セカイノオワリだぁぁ』と昏い影を背負っていたりする。
シャルたちを滞在するタイプの冒険者だと思っていたのもあるが、旅の理由が理由なだけに強引にも止められず、結果、幽鬼と化してフラフラと黄昏るしかないのである。
コレットは絶望し、白のコレットになってしまったのだ。
「ふぅ〜、次で最後だね〜」
「そうね。今日中に回りきれるか心配だったけれど、間に合ったようで安心したわ……」
明け方から挨拶回りを初めて半日以上。
あと残すは冒険者ギルドを残すのみとなった。
既に時刻は夕方に近づいている。
今日アルルたちが回ったのは、依頼などでお世話になった商業ギルドや魔道ギルド、その他に仕事で知り合って縁をもった人たちが主である。
アルルが持つ不思議な人徳により、彼女は候都で多くの繋がりを構築している。その為か、挨拶回り一つとってもかなり大変なことになっていた。
人付き合いが苦手なシャルとは大違いである。
ちなみに、シャルたちと関わりの深いジョルジたちは、半月ほど前に候都から旅立っているので、今日の挨拶回りには入っていなかった。
とはいえ、ジョルジたちとはしっかり挨拶を済ませてから別れたので、問題はない。
シャルなんて、別れ際にユミルネから太鼓判を押された自作魔法薬を、恩人価格という格安値で大量に卸していたくらいだ。これには流石のジョルジも引き攣った顔を浮かべていたらしい……。
「アルル。この辺りは人が多いからさっさと抜けるわよ。また囲まれたら面倒だわ」
「は〜い。じゃあ走るね〜」
アルルとニーナの二人は頷きあうと、人混みを縫うようにしてすばやく街路を駆け抜けていく。
ランクアップで有名になって以来、アルルが街を歩けばかなりの衆目を集めてしまう様になっていた。
それが高じて、挨拶回りの移動もたいへん不自由していたのだ。
「はぅうぅ、やっと着いたよ〜」
「……まったく不躾な視線ばっかり。まるで見世物みたいな扱いね。不愉快極まりないわ」
人波に揉まれた二人はぐったりとしつつも、ギルドの扉を潜る。入った直後に向けられる多くの視線を華麗に無視し、ホールを横切って受付にいる一人の受付嬢に声をかける。
「えへへっ♪ やっほ〜ミゼリスさ〜ん!」
「あら! こんにちはアルルちゃん、ニーナさんも」
「こんにちはぁ〜」
「ええ、どうも」
「今日は少し遅いですがこれから依頼ですか? まぁ、鎮静化したとはいっても、まだまだ討伐依頼は沢山ありますから……あ! それとも、ついにコミュニティ申請してくれる気になったとかです!?」
饒舌に少し食い気味で尋ねる、このミゼリスと呼ばれたギルド役員。
言わずもがな、シャルとアルルがファーストコンタクトをとり、冒険者になってからも色々と世話になった人物だ。
今ではシャルたち専属の担当受付嬢を、勝手に自負していたりする変な人でもある。
「ごめんねミゼリスさん。どっちも違うの」
「そうですかぁ、それは残念です。お二人とシャルちゃんが組めば、この候都でも名高いコミュニティとして登りつめられると思っているのですが……」
「流石に三人じゃ無理よ。というか、毎回折をみては私達に勧めてるわよね、そのコミュニティの話」
「ふふふ、ニーナさん。それは仕方のないことなのです。私の冒険者観察眼からすると、シャルちゃんの魔法士としての才能は実際かなりのものなのです。未だに魔道ギルドに誘致されていないのが不思議なほどに!」
「は、はぁ」
「えへへ、うんうん!」
「シャルちゃんは遠からず中級魔法も扱えるようになると私はみてます! そうすれば、前衛のアルルちゃん、後衛のシャルちゃん、遊撃のニーナさんとでバランスも良いですし、将来的にはどんどん勢力も拡大して、候都一のコミュニティ『黄金林檎』にも引けを取らないコミュニティになれますよ!!」
「へ、へぇ、そうなのね……」
「シャルくんの魔法は凄いもんね〜」
ミゼリスの勢いにひくニーナ。
アルルは柳に風と微笑で流した。
哀れ、ミゼリスは知らない。
今のシャルであれば中級魔法はおろか、上級の更に上、二種複合の大魔法を普通に扱える事を。
当然アルルとニーナはシャルの実力を知っているのだが、自信満々に未来を語るミゼリスに突っ込まなかったのは、彼女たちの優しさなのだろうか。もしくは面倒だったのか。
そして、受付嬢ミゼリスが先ほどから頻りに勧めているコミュニティとは。
冒険者による共同体を指している。
正式名称は『コミュニティルフェイト』という。
一時的な協力関係である『パーティ』とは違って、『コミュニティ』はメンバーが寝食を共に生活をし、一つの組織として冒険者活動をしていく、正しく運命共同体。
パーティに比べてコミュニティの方が信頼度が高く、大きな依頼も安心して斡旋出来るので、ギルドとしては実力あるコミュニティは大層ありがたい存在なのだ。
一つの街に腰を据えて活動する冒険者は、大体どこかのコミュニティに所属しているのもこの為である。
ただし、コミュニティ建ち上げには代表者となる冒険者のランクが『C』以上を求められる。
しかし、既にアルルはこの条件を満たしている、それもあってミゼリスはアルル達を懸命に勧誘しているのだろう。
「実力あるコミュニティがギルドにとって貴重なのは分かるけど、なんか貴女個人が熱烈に欲しているようにも見えるのよねぇ。何故かしら?」
「……うっ。さ、流石はニーナさんです。慧眼ですね。ええ、もうぶっちゃけて正直に言わせていただくと、私はアルルちゃんのコミュニティの監査メンバー志望なのですよ」
「監査メンバー?」
「はい。余り知られていませんが、大きなコミュニティには、冒険者ギルド所属の常駐監査員が一人送られます。それを私は狙っているわけですね!」
「へぇ、常駐監査員ねぇ。で? 一番の本音を聞いてもいいかしら?」
ミゼリスの本音を既に見抜いているニーナは、さらに平坦な声音で先を促す。
ウッとわずかに臆した様子のミゼリスだったが、女は度胸っとばかりに言い放った。
「……シャ、シャルちゃんと一緒に生活するとか最高じゃないですか! 毎日が楽しそうですし? あの子ってば抱きしめたくなるような愛らしさですし? あのふっとした時に覗かせる最強な笑顔がもっと拝めるかもですし? 一緒にお風呂とか添い寝とかできたらもう最高ですよ! あと、とても真面目な子ですから、監督する必要がなくて仕事も楽そうですからね!」
「はぁ〜……やっぱり……」
「えへへ 、ミゼリスさんってコレットちゃんみたいだよね。残念系〜?」
ニーナは深すぎるため息を零し、アルルは可愛いもの狂いの若女将を引き合いに出して天然で毒付いた。
そう、実はこのギルド役員。
シャルにぞっこんでシャルラブな、重度のシャルラハート信者なのだ。
普段の通常業務では、臨機応変に対応できるとっても有能な人物なのだが、ひとたびシャルが関わると、多分に私情が混じり始めるのである。
まぁ、オンとオフの切り替えができるといえばそれまでなのだが、その切り替えスイッチがおかしすぎる。
プライベートとそれ以外ならまだしも、シャルとそれ以外とは、なんというかアホだ。
そしてアルルの言う通り残念である。
或いは男女関係なく、その美貌で信者にしてしまうシャルが凄すぎるのかもしれない……。
「でもそうなると、私達はその希望を見事に打ち砕く事になるわね」
「あぁ、そっかぁ。そうだよね〜。……ミゼリスさん、ごめんね?」
「え、それはどういう……ぁ、そういえば今日の訪問は依頼ではないと仰っていましたよね。では一体なんの御用でこちらに?」
はて? という態度を取るミゼリスには悪いが、ニーナは容赦せず本題を語った。
候都に居を構える冒険者だと勘違いしているのは、このミゼリスも同じだった。
予想外の話を聞いては驚きもする。
「えぇぇええぇぇぇ〜〜〜〜!!? 候都を離れるんですかぁぁぁあぁぁ〜っ!? ──っ、す、すいませんっ!」
「はぁ、まぁ仕方ないわね」
「うん、うん」
大声を上げて驚きを露わにしたミゼリスは、その失態に気づいてすぐさま口を抑えるが、時すでに遅し、冒険者たちの視線全てが、アルルたちへと集まってしまった。
あれほどの絶叫だ、ミゼリスの言葉は丸聞こえだっただろう。多くの冒険者が様々な感情を露わにした。驚愕や好奇、悲観や安堵など多岐にわたっている。
それでもアルルとニーナは我関せずのスタイルを崩さなかったことで、次第に喧騒は収まっていったのだが、街を救った英雄とまで言われ、持て囃されているアルルが、候都を離れるという噂は瞬く間に広まるだろう。
──その後。
アルルとニーナがミゼリスに詳しい話をし、これまでの感謝を伝えた。
と、同時にミゼリスは、引き攣った笑顔で怒気を撒き散らす上司に呼ばれて、裏手の役員室へと連れて行かれたのだった。
これから不注意と漏洩ミスについて厳しい指導を受けるのだろう。
印象深かったのは、連行される前にミゼリスが発した『うぅぅ〜、いつかコミュニティを作ったら、是非とも私を指名して下さいね〜! 世界のどこにいても駆けつけますからぁ〜』という鬼気迫る言葉だった。
ニーナはミゼリスをそこまで篭絡したシャルに戦慄し、アルルは『は〜い』と笑顔で安請け合いしていた。
そうして、冒険者ギルドでやる事も済み、外も薄暗いし、精神的に疲労も溜まってきていたし、と蓮華亭へ帰ることに決める。
ミゼリスがいなくなった受付に背を向けると、二人は両開き扉に近づいていった……
……のだが、ここで一つ騒動が起きた。
これを世は『お約束』と言う。
「おいおい、なんだなんだぁ? どうしてガキなんかがこんな場所にいやがんだ?」
「おっ、こいつら武器なんか持ってやがるぜ。まさか冒険者ごっこでもしてんのか?」
扉をあけて入ってきたのは、冒険者であろうガラの悪い二人組の男たち。
男たちはアルルとニーナが視界に入った瞬間、ニヤニヤとした醜悪な笑みを浮かべて嘲りだした。
しかし、二人は不躾な態度や言葉も意に介さず、速やかに脇にずれて男たちを空気のごとく無視。
さっさと扉から出て行こうとする。
「ぎゃははっ、なんだよ逃げるんでちゅか〜? それじゃあイチリューの冒険者になれまちぇんよ〜?」
「ははっ、おいおいオメェかわいそうだろ? いじめてやるなよ?」
見逃せば良いものを、二人組はそこまでして弱いものいじめをしたいのか道を塞いだ。
途端、冒険者ギルドの空気がかなり張り詰めたものとなる。
『おいおい、誰だよあいつら。バカじゃねぇの』
『どうせ最近きた他所もんだろ? あの二人を知ってたらあんな自殺行為しねぇよ』
『年齢で判断するとか程度がしれるわね』
『それをあんたが言うのか? 前に絡んで行って痛い目見たくせに』
『う、うるさいわね! 酔ってただけよ』
『あ、おれアルルちゃんが片付けるに銀貨三枚な』
『ふん甘いな、儂はニーナ嬢が軽くあしらうに銀貨五枚だ』
『じゃあ大穴で、シャル様が舞い降りて二人をボコるに金貨一枚よ!』
『あんたら子供で賭博をするなよなー……だが、俺は二人がそれぞれ瞬殺に銀貨四枚だ!』
と、アルルとニーナを知る冒険者はみな、二人組の男を冷めた目で見て、事の行く末を見守っていた。
「ねぇオジサン、どいて?」
アルルはキョトンとしつつそう言う。
シャルが聞けばビックリするだろう無機質な声音だった。ニーナはもとよりアルルも、冒険者としての冷徹な一面は既に備えている。相手方が悪意や敵意を持って近づくならば尚のこと前面にそれが出る。
「ねぇどいて? だってよぉ!! 一丁前に平静を装うなんてオジサンビックリだなぁ! ぎゃははっ!」
毛ほども似ていないモノマネをして更に煽りながら、前方へと回り込んで完全に進路を塞ぐ男たち。
この行動に対し、ニーナもフードの奥の瞳を底冷えにして睨みつける。
「邪魔よ、退きなさい」
ニーナの澄んだ声がギルドホールに染み渡るようにして広がった。
決して大きな声をあげた訳ではないのにも関わらず、冒険者たち全員の耳朶を打ち、ギルドの空気はより一層張り詰めたものとなる。
「はっ。んだこのガキ。生意気な目してると思えば態度もかよ。乳クセェガキがいきがるんじゃねぇよ!」
「聞こえなかったのかしら? 私は退けと言ったのよ」
「ぎゃはは、退いて欲しけりゃ、ごめんなさいー、道を空けてくださーいって跪いて懇願するんだな。心の広い俺はそうすりゃ許してやるぜ?」
「ここはガキの遊び場じゃねぇんだ。さっさと謝って消えやがれってんだ」
ますます調子付く二人組。
「ニーナちゃん、このオジサンは言葉がわからないのかな〜?」
「ええ、わからないのでしょうね。たぶん人の格好をした獣なんじゃないかしら?」
「──ッ!」
「んだとコラァ!!」
散々煽っていた男達だったが、二人の軽い挑発一つであっさり激昂した。
男達は嘲りの領域を超えて害意を見せてしまった。
口汚く罵りながら男が拳を振り上げる。
「まぁ、これだけ観客がいるなら大丈夫よね……」
ため息混じりにニーナがポツリと呟く。
「死ねやコ──ぶげらっ!?」
「クソガ──ふほぉうば!?」
拳が飛んでくるのに気づいたアルルは、自然体のまま鞘に収まった状態の短剣を、片手で横薙ぎに払う。脇腹を強打された男はアホみたいな速度で吹き飛び、ギルドホールの壁面に突き刺さる。
ニーナは迫る男の拳を躱そうともせず、木杖を軽く地面に突く。すると、突如男の下顎を風の弾丸が打ち抜き、そのまま男は天井に突き刺さり宙ぶらりんとなった。
所要時間、数秒での決着。
秒殺とはどう言うものかを明確に示した、鮮やかなお手並みであった。
一部始終を静観していた周りの者達は、結果に驚くわけもなく、寧ろ当然だといった風にアルル達の戦いに歓声をあげて、勝手に盛り上がっている。
「はぁ……」
ニーナは煩わし気に一人のギルド役員を捕まえると、壊してしまったギルドの修理費を男達に請求するように伝えてアルル共々、蓮華亭に帰っていった。
まぁ、男達にとってこの程度で済んだのは救いだっただろう……。
もしこの場にあのシャルが居ようものなら、ギルドにいる過激派な信者たちによって、男は拉致られ、裏で全裸に剥かれた挙句、全身に『幼気な子供にちょっかいをかけて手も足も出ずに負けた塵屑男』という醜文を書き込まれたのち、逆さ磔で袋叩きにあっていた筈である。
接触禁忌種より恐ろしい幼女冒険者。
以後、冒険者ギルドの間でまことしやかに話される二人の噂話は、ここが起源なのだった。
◾︎◾︎◾︎
騒々しい一日を終えたアルル達は、蓮華亭に帰ると早々に入浴を済まして、それぞれの部屋へと戻っていく。
まだ寝静まるには早い時間だが、アルルの部屋には既に同室のシャルが戻ってきていた。なぜかグッタリとした様子で、ベッドに仰向けで寝入っている。
アルルはシャルを起こさないように側へと近寄ると、無垢な寝顔を覗き込む。相当疲れているようで起きる気配は全くなかった。
「はぁ〜、シャルくんの寝顔可愛い〜♡」
蕩けたような笑顔で呟くアルルは、そっとシャルの髪を梳きながら撫でる。サラサラで癖になるような触り心地をアルルはしばらく堪能する。
アルルは、シャルの寝顔をぼうっとした表情で見つめると、吸い込まれる様にシャルの唇に自分の唇を近づけて、静かに軽く触れさせた。
シャルは当然知らないのだが、アルルは騒乱後から、こうして彼の寝込みを襲うことが多々ある。
その頻度も常習犯レベルである。
女々しくも純情なシャルがこれを知れば、耳の先まで真っ赤にして思考がしばらく止まる事は請け合いだろう。知らぬが仏とはこの事か。
「……んっ、えへへ♡」
気づけば彼女の左手の甲に、淡い光で紋印が浮かび上がっていた。
あの日、シャルと初めて口付けを交わした日から、度々浮かび上がるようになった謎の紋印。陽光のような象形にハートを組み合わせた綺麗な紋だ。
アルルは、この紋印からシャルとの繋がりと暖かさを感じているようで、表情は凄く柔らかい。というか蕩けている。
普通なら、いきなり浮かんだ謎の紋印など不気味に思うのかもしれない。だが、シャルに対する愛情値がカウンターストップ状態のアルルにとって、多幸感しか感じていないみたいだ。
大好きでたまらない者との繋がりなど、むしろご褒美以外の何者でもないのだろう。
ただ、そのせいかシャルと口付けを交わしたくなる衝動が増してる様にも見えるが、そこはご愛嬌なのか……。
「う〜ん。やっぱり、同じ〜?」
蕩けた表情を少し改めて、ふと自分の母親にも似た紋印が浮かんでいたのを思い返した様子のアルル。
この紋印はいったい何なのか。
何を意味しているのか。
何故、母親にも自分と似た紋印があったのか。そもそも自分は何者なのか。
そんな答えのでない思考を、半ば蕩けながら彼女は巡らせる。
シャルの両親もそうであるが、アルルの母親も不思議な所が多くある。
しかし、それは彼女の前で無防備に眠る少年にもいえる事で、加えて……
「……あたしも」
そう。彼女にも不思議なところが多くある。生まれつき闘力が異常に備わっていたり、その闘力を負荷もなく自然に扱える。
本来の肉体機能も一般的な人族の子供とはかけ離れている。強靭な身体をもつ闘人や魔人と比べても同等かそれ以上なのだ。
「……ふぅ」
下手に考えるのをやめたアルル。
彼女は良い意味で大雑把なのである。
思考を打ち切りアルルはベッドに潜り込むと、シャルに添うような位置取りをして、頭をシャルの胸元に埋めながら身体を預ける。
「あったかい♪」
翳っていた心は暖かい光に照らされる様に、すぐさま消え去っていく。
そうして何時もの調子を取り戻したアルルは、しばらくの間大好きなシャルをホールドし、スリスリもふもふナデナデチュッチュと存分に堪能したあと、眠気に従い意識を手放したのだった。
──ちなみに。コレットは幽鬼であった。
2015/10/11-誤字修正




