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エピローグ→NextStage

「むふふ。シャルラスってばやるよねー。こんなにアッサリと、あのめんどっちぃを祝典を済ましちゃうなんてさ〜〜。さすがさすが〜、さすがはボクの最愛の子だ」


「畏れながらリーベ様。この結果は必然であったかと愚考いたします。何せ御使いが既に侍っていたのです。祝福を待たずして契りを結べるのですから」


「ん〜まぁね。確かにその通りなんだけどさ。それでプーちゃんはどう思うー? あの契りを結んだ銀髪ちゃんについてー」


「……そうですね。同じ御使いとして言わせて貰うと、感情制御面に些か難がありますね。

 とはいえ、資質は中々のものかと。流石は彼女の娘といったところです。あとリーベ様、私のことをプーちゃんと呼ぶのはお止め下さい、泣かしますよ?」


「えー、いいじゃーん可愛いいよぉこれ? ……って、やっぱりあの御使いちゃんってメルメルの娘ちゃんなんだー?」


「リーベ様の目を通して見ただけなので確実とは言い難いですが、闘気の表情がとてもよく似ていましたから」


「へぇーそれはそれは。運命って奴はなんとも不可思議で面白いねー、むふふ♪」


「それでリーベ様。この先はどうするおつもりで?」

「んー? どうするって何のことだい?」

「ですからリーベ様との繋がりが切れては……」


「……あ。ぁ、あぁぁああぁーッ!? そ、そうだったぁぁぁあぁ〜〜ッ! 繋がりきれたんだったぁぁ〜〜ッ! これじゃあシャルラスの成長を覗き見……もとい見守れないじゃないか〜〜っ!! あんのクソ猫めぇ、ボクのシャルラスを殺そうとしやがってぇぇ〜〜!! 許すまじっ! たかが獣風情がぁ、この世から根絶してやろうかぁア"ァン!?」


「……はぁ、騒がないでくださいリーベ様。それに落ち着いてください、口調が大分おかしいです。守護に関しては適当に繋いでたリーベ様が原因ですよ? 保険だとか言って結局切れていては世話ないです」


「だってだってー! あの時は可愛すぎるシャルラスと対面したら、どうしたらいいのか分からなくなっちゃったんだもんさー! これはプーちゃんにはわからない気持ちだよー。あんな愛らしい瞳で見つめられたら、もうねー……あぁん♡ 思い出しただけで悶えちゃうぜぇ〜〜♪ ふぅ〜〜!!」


「……ふん。それで不意打ちの接吻ですか。そんな一瞬の接触で守護を与えようとしたからこうなるんです。本当にもうダメダメですね。ですから私にお任せして下されば良かったものを……」


「ぅぐ。だってー! プーちゃんが行ったら絶対抜け駆けするじゃないかー! それはズルいっ! シャルラスを最初にギュッとする役目はこのボクなんだぞ!!」


「あぁ、全く嘆かわしいです。リーベ様はそんなくだらない理由のもと行動をしていたのですね。私、貴女様の御使いとしてとっても恥ずかしいです。その上、見栄まで張って、なけなしの力を使って自身の御姿を弄り、挙げ句の果てにはそれが原因で力が枯渇しているんですから、全く笑えませんよね……」


「むぐぐぐぐ。プーちゃんがいじめる〜〜。なにさなにさ。ボクはプリムラちゃんみたいにシャルラスと触れ合えないんだから、少しくらいワガママを言ったって良いじゃんかよ〜〜ぅ」


「あぁもう、騒がないで下さいよ。分かりました。抜け駆けなんてしませんから私に行かせて下さい。私が改めて繋ぎ直してまいりますので」


「……ほ、ホントぉかぁい? 抜け駆けしないって言うのかよ? それを信じろとー?」


「私は己が主に不義は働きませんから」

「よくいうぜー、いつもからかったり、おそろしいウソついたりしてイジめるくせに〜」

「あれはリーベ様の戯れに付き合っているだけですから、本意じゃないです」

「じゃあもうこれからイジめないのかい?」

「それとこれとは話が別です」

「ほらダメじゃん! なに話すげ替えてるのさ〜〜。ウソついてるじゃん!?」

「ふふ、冗談です。リーベ様が可愛い反応ばかりするからからかいたくなるのですよ」


「……むぅ、わかったよ。プーちゃんの事を信じるよ。どのみちプーちゃんに頼むしかないんだし。でーも! くれぐれもシャルラスに余計な真似はしないこと! いいねっ」


「承りました。では行って参ります。あぁ、それとリーベ様──私をプーちゃんと呼ぶのはお止め下さい。ぶっ叩きますよ?」


「──ひぃ!?」









 ◾︎◾︎◾︎









 重苦しい曇天が夜空を覆い月光を遮る。

 乾いた夜風が虚しく荒野を吹き抜けていく。

 けれど死の匂いは決して消えない。



「白狐。任務は完遂か」

「……」


 白狐と呼ばれた少女は小さく頷く。

 少女の辺りには、十数人に渡る人族の亡骸と、それに比する血液で溢れていた。

 その少女が手にするのは、身長との釣り合いが全く取れていない巨大な斧。返り血で真っ赤に染まったその斧は、まるでギロチンの刃を無理やり括り付けたように無骨で恐ろしい形状だ。


 そんな巨大斧を少女は乱雑に引きずって、呼びかけてきた一人の男の下に近づいていく。


「……黒狼。……次、は……」


 少女は恐ろしく無機質な眼差しを向けて、ポツリと言葉を紡いだ。それに対し、黒狼と呼ばれた男は感情を伺わせない表情で、淡々と答える。


「次はマールス侯爵領で仕事だ。今回は特別依頼となる。──お前の担当する標的は冒険者の二人。他にも多くの者が動員されるが、気にせず普段通りに動け」

「…………かくにん」

「なんだ?」

「……ひょうてき、なまえ……」


 少女は男と同等か、それ以上に平坦で人間らしさのない声音で再度問う。


「……あぁそうだな。標的名は『シャルラハート』に『アルリエル』だ。容貌は追って伝えよう。既に各担当地域の者達が首都ファナールへ向かっている。お前もこのまま向かえ。オレも主に報告後すぐ向かう」

「……」


 少女は小さく頷くと、次の瞬間には身を翻して闇夜に姿を消していった。





――――――――――――――――


【第二章】幼少期『候都騒乱編』:(終)


――――――――――――――――


【第三章】幼少期『白の凶獣編』:(始)


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