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ソウゼン+ボウゼン=


「あ、それとね、あたしとシャルくんは姉妹じゃないよ?」


 ──ん、そうそう。

 そこはちゃんと言ってほしいところ。

 最近ますます女の子にしか見られなくなってて困ってるのだ。

 だから、ここでニーナにはちゃんと俺が男だと認識を改めてもらいたい。



「えっとね、シャルくんはね…………」



 うん、うん。



「────あたしの許婚なの」





 ……………………





 …………は?




「「はぁぁあぁあぁあぁああああッ!?」」


 素っ頓狂な叫びが飛び出した。

 奇しくもニーナと同じ反応になる。

 いや、今はそんなのどうでもいい。


 それよりアルルはなんと言ったのだろう。

 聞き間違いじゃなければ、『許婚』。

 いいなずけ──そういった筈だよね。

 ……え、なにそれ。どういうこと?



「待ってっ。それ僕も初耳なんだけど」



 アルルに詰め寄って問いただす。

 これは予想以上に由々しき事態だった。

 なんて爆弾投下してんのよアルル。


「いつそんな事決まったの? 僕、母様から何も聞いてないよ?」

「えーと、あたしとシャルくんが初めてあった、つぎの日〜かな?」


 それって、ほぼ初めからじゃない?

 んぅ……いつの間にそんな。


 あ。


 そういえば、アルルと初めて会った日って母様の様子が少しだけおかしかったよね。

 もしかしてそれが関係してたの?


 なんで母様は、そんな大事な話を俺にはしてくれなかったのですか〜〜!?

 え、本人の意思は度外視なの? そんなぁ〜〜……。


「それでアルルはその話を受けたってこと、だよね?」

「うん! だってあたしシャルくんのこと、だぁ〜〜〜〜い好きだもん!! えへっ♪」


 そんな魅力的な笑みでハッキリと告白はやめてぇ〜。

 いや、すごく嬉しいけどさ。照れちゃうじゃん。

 顔が赤くなっていくのが自分でも分かるくらいには火照ってるよ……。



「……んぅ」


 確かに、アルルの許婚発言には驚いた。

 うん。ものすごく驚いた。

 びっくりして反発的な声も出してしまったけど、もちろんアルルが嫌ってわけじゃない。好きか嫌いかで言えば、大大大好きだ。


 けど色々とマズイと思うのこれは。

 アルルのことだから、よく分からずに許婚になった可能性はないと思う。


 お互い七歳になったばかりの子供なのに、なんでこんな話が?

 ああ、いや別におかしくはない?

 日本に限らず世界でも昔から頻繁にあったっていうし。それに、実際結婚するのはこの世界の成人──十四歳になってからだもんね。



 それなら別にいいの……?

 アルルのことだ、成人する頃には更にステキな女の子になってると思う。今だって超絶良い子なのだから余計に。

 能力面だって成長と共にできる事が増えていくだろう。まさに才能が開花するかのように。性格はすこし甘えん坊さんだけど、それも含めてとっても良い子だ。

 もう俺なんかとは全く釣り合わないほどに成長する未来しか見えないね。



 ……って。流されてる流されてる。

 俺はここまでアルルの兄としてして、このポジションを全力で保ってきたのだ。

 それを忘れてはいけない。

 そう。たとえアルルが俺を一度として兄として扱ってくれなくても兄なのだ!


 アルルと俺は既に兄妹。身内であり家族の関係。

 つまりそれは夫婦に匹敵する究極の関係なのだ。わざわざ結婚なんて今までの関係をかき乱す危険を侵す必要はないのっ。


 それに。アルルには俺みたいな釣り合いの取れていない奴より、もっと彼女に相応しい幸せにしてくれる相手がいるだろう。


 こう、優しくて慈愛に溢れてて家族思いで、純粋であり誠実でもあって、そして堅苦しくなく朗らかで、感受性も豊かで空気が読めて、ちゃんとアルルのために怒ることが出来て、影からも表からもしっかり支える事が出来て、才能豊かで頭も良くて、取り敢えず三年くらいは健全に手をつなぐ程度の関係を保てる自我の強さを持ってて、強さだって鼻歌交じりにあらゆる敵を蹴散らせて、足踏み感覚で大地を粉砕したり、気合いで海や空をカチ割れるような、勇者の中の勇者より勇者らしい素晴らしい男性がいるはず……いる、と思う! いなさい!




 あー、んー、でも……。


 一応、兄妹とはいっても結局のところ血は繋がってないんだよね。だったら形式上の婚姻なら結んでも……。

 どこの馬の骨とも知れない男なんかにアルルを任せるくらいならいっそ……。


 いやいや! だからそういう問題じゃない。


 確かにアルルは超絶可愛くて世界中見渡しても比肩できる者がいないレベルで素敵な天使さまだよ?


 でも家族なのだ。妹なのだ。そんなアルルには絶対に幸せになってほしい。

 じゃあ俺には無理ということになるじゃない。

 そもそも俺にはその資格がない。許されないし許せない。




 あー、なんかめがまわってきた〜〜!?

 もうあたまぐちゃぐちゃだよ〜〜!!




「……あの、よくわからないのだけど、一つ確認していいかしら?」

「ん、な〜に? ニーナちゃん」


 脳内大混乱の俺は置いておくとして、先ほどから黙っていたニーナが口を挟んだ。


「貴女たちの話は少しおかしいわ。なんで女性同士なのに許婚なの? ──この国って確か同性婚は認められていないわよね」


 ここに来てもまだ誤解が解けていないみたい。


「ニーナちゃんはと〜ても大きな誤解をしているの。シャルくんは女の子じゃなくって、男の子なんだよ?」


 ──ピキっ。

 ニーナ、フリーズ。


「…………うそ、よね?」

「ううん、ほんと。──ね? シャルくん」

「──え、あ、うん。そうだね。アルルの言う通り僕は男だよ。一人称もずっと『僕』って言ってたでしょ?」


 俺は無理やり脳内に収拾をつけて自身の性別を伝える。


 ちなみに一人称だけど、俺自身は『俺』ってつもりで言葉を発しているのだが、それはこっちの言葉でいうところの『僕』に該当している。

 転生当初、まだ言葉を覚えてない時に勘違いでこの一人称が定着したから、今更直そうとしても違和感があって直せなかったりするんだよねぇ。



「………………」


 ニーナは信じられないというように、ポカンとしている。

 こんな表情のニーナを見るのは初めてかも。まぁ、俺の性別を知ると大体の人が似たような反応をするけどね。

 結局周りは信じてくれないんだけど、ニーナはどうなんだろう。


「……ほ、本人がそう言うのなら本当ってこと、よね。わざわざ偽る利点なんて無いし。なら……──っ!?」


 自問自答の末、なんとか信じて納得した様子のニーナだったが、またすぐに様子がおかしくなった。

 今度は顔をカァと赤く染めて(うつむ)いてしまった。


 そして、俺も気づいた。

 と同時に──焦る。


「えっと昨日の夜のことだよね?」

「……!!」


 返答はなかったけど、ニーナの態度から的を得ているのは分かった。


「──ごめんニーナっ。朝に打ち明けて謝ろうと思ってたんだけど、起きたらいなかったから……ぁ、でも大丈夫。ニーナが抱きついてきたことに関しては気にしてないし、僕の方からも何もしてないか、ら……あ」


「──────え!?」


 ……俺のバカぁ。何してるのよ〜!?

 うぅわ。やっちゃったぁぁ〜〜っ!!


「──ぅ、ごめんなさいッ」


 俺の言葉に、ニーナは頭からボフンと煙を出し赤面とともに思考停止した。

 同じく俺も脳内オーバーヒートが再発。


 唯一、冷静のアルルは、何故か俺の左腕にムキュっと抱きついて笑顔を咲かせている。



 ──これまさにカオスという。

 この場にはカオスが降臨してしまった。







 ………──。







 はたして。記憶はないのだが俺は場のクールダウンに全力をつくしたのだろう。

 しばらくすると、俺たちはなんとか冷静さを取り戻すことが出来ていた。



「こほん……見苦しいところを見せてしまったわね」

「んん。僕の方こそ」

「えへへ〜」


 ニーナの顔がまだ若干赤いけど、余裕は取り戻してきている。

 アルルはいまだに離れていないが、それはいつもの事だから別に良い。


 許婚の件はとりあえず保留とした。

 いま勢いだけで決めるには大きすぎる事案だし、家に戻った時に母様からいろいろ聞いて考えた上で、改めて答えを出した方がいいからね。


 そしてニーナの件も、謝り倒してなんとか許してもらえた。幸いニーナとの友情(もともと一方通行の友情だったかもしれないが)にヒビが入ることも無くて安心した。


 そうして、やっといつもの通りの空気に戻り、俺は安堵した──……時だった。


「……あの、ちょっといいかしら? いまのゴタゴタのせいで貴方に言いそびれた事があるのよ……」

「僕に?」

「……ええ」


 ニーナが如何にもな態度で、俺に話を切り出し…………。



 ──再度、巨大な爆弾を投下した。





 ◾︎◾︎◾︎





 ところ変わって蓮華亭。

 そこでは……


「──すみませんっでしたーーっ!」


 俺のソプラノボイスが一階フロア全体に大きく響き渡っていた。

 その声に食事中のお客さん(冒険者さん)たちが、何事かと注目をするが、残念なことに気にする余裕はない。


 あれからニーナの言葉を聞いて。

 俺は顔面蒼白にしながら全力疾走で戻ってきたのだ。

 そして夕食の準備・配膳をしていたコレットちゃんを見つけると滑るように謝罪した訳であるが。


 目の前。当のコレットちゃんは、そんな俺の行動に当然ながらキョトンとしている。


「シャルっち、いきなりどうしたの? 戻ってきたと思えばいきなり謝ってさ。……あ! もしかして審査に通らなかったとか?」

「アルル共々受かりました」

「おぉ、おめでとー! その年で受かるなんて二人とも凄いよ、ほんと凄い!」

「滅相もございませんっ」


 直立不動でハキハキと答える。

 危うく敬礼まで仕掛ける勢いであったが、そんなの気にしない。


「──あれ? なら、なんで謝るのさ?」


 目の前のコレットちゃんが不思議がっているので一から事情説明を始める。


「……えっと」


 いざとなって少し臆するが、そんな気持ちは無理やり振り切り、ニーナから聞いたこの宿屋の真実を口にする。


「ニーナから聞きました。ここが……」


 目をギュッとつぶり──


「──ここが、ここが、女性専用の宿屋だったってことを……っ」



 ──そう、これが真実。

 さっき教えられるまで思いもしなかった、蓮華亭の重大な事実。


 この宿屋は普通の宿屋と違って、女性のお客さんしか対象にしていない。

 それも女性冒険者を中心のターゲットにした宿なのだという。


 昨日は夜遅かったし、今日の朝も朝食などのピークを過ぎてから一階に降りたので、他のお客さんたちを見る機会もなく、気付けなかった。

 共用の洗面台の所でも、お客さんと会ったりもしたけど、たった数人見ただけじゃ、やっぱり違和感を感じられなかった。


 しかし、納得した事もある。


 この宿屋には地下に大きな風呂場があるが、昨日は混浴だと勘違いしていた。

 しかし、実際には女の人しかいないから混浴であるわけがない。そもそも成立しない。


 言われてみれば、宿屋全体の雰囲気だって、なんか澄んでいるというか清雅な感じ。

 後悔先に立たずとは言うけど、もし昨日に戻れるなら『しっかり確認してよ』ってどついてやりたい。


 でも、知らなかったとはいえ蓮華亭に一泊してしまった結果は変えられない。

 だからこうして、一発ぶん殴られるのを覚悟で謝りに来たのである。


 多分コレットちゃんは、俺が女の子だと思っているから、暴露しなければ気づかれないのは確実なんだろうけど。


 コレットちゃんは恩人だ。

 そんな真似はしたくない。

 まあ現状は既に、貸し借り云々以前の問題にまで至っているんだけどさ。

 もう社会的に死にかねないです。あはは……。

 


「……ん〜?」

「………………」


 そんな覚悟を知ってかしらずか。

 俺の後ろではアルルが不思議がっており。

 ニーナもなんともいえない心配そうな苦々しい表情を浮かべている。

 彼女からしてみれば、宿まで案内したのが自分だから複雑なんだろう。ごめんね。




 それで……コレットちゃんは。


「あ〜、そういえば言ってなかったよね。どうせ今日も泊まらせるつもりだったから、後でもいいかなーって思ってたんだよねー」


 あっけらかんとした態度で答え『でもー』と続ける。


「なんでシャルっちが謝ってるのかな? 別に悪いことしたわけじゃないのにさ」


「……まぁ、普通はこうなるわよね」

「うん」


 やっぱり勘違いしてたね。



 ──ってことだから。

 さっさと自白、自白。


 かくかくしかじか。

 カクカクシカジカ。

 斯斯然然。



 …………。




「つまり、シャルっちはどうみても女の子にしか見えないけど、男の子ってこと?」

「まぁはい、そうです。言うのが遅くなってしまい申し訳ないです」

「…………ふーん」



 ジーーーーーーーー…………っ


 ジーーーー…………っ


 ジーー……っ



 コレットちゃんは真顔で鼻を鳴らしながら詰め寄ってきて、これでもかと注視し始める。

 なんかコレットちゃんが怖い。

 なにぶん美人さんだから、怖さ倍増。

 顔立ちが整っている人が無表情になると怖いのはアルルで知ってたけど、やっぱり怖いものは怖い。耐性なんかつかないね。

 


「──さ」


 さ?


「さいっこうね!!」

「…………は?」


 ……いまなんと? さい、最低? 最高?

 さいっこう……最高っ!?


 ──何故に?



「そっかそっか〜! まさかこんな要素を加えてくるなんてねぇ。予想外だったわ! でもこれは僥倖(ぎょうこう)よね、ふふ。あーシャルっちー、もう謝んなくていいってば、私は気にしてないからさー」


 世間話をするくらいあっさりと許しを頂けたんだけどさ、イマイチ理解が出来ない。

 どういうこと?


「いや、この宿って男子禁制なのでは?」


 そんな困惑気味の台詞にコレットちゃんは『シャルっち、それは少し違うわ』と前振りし。


「──いい? この『男』っていうのはね? つまり繊細(せんさい)さと品性の欠片もない粗暴(そぼう)で下品で可愛さとは対極に位置する奴等のことを指しているのよ? だから、断じてシャルっちは男じゃないわ!!」


 ビシィぃと断言される。

 だがコレットちゃんのマシンガントークは(とど)まるところを知らない。

 ……てか性格変わってない?

 コレットちゃーん戻ってきてー。


「逆ね、逆! むしろシャルっちは誠実で健気で礼儀正しくて、ムリして大人っぽく振る舞い、変にませてる所が可愛い! あとアルっちに振り回されて驚いてる表情も可愛い! そしてなにより、ふとした時の自然な笑顔が最っ高に可愛い!!」


 始めはフラットな声音で話していたコレットちゃんだったが、喋るうちにどんどんヒートアップにテンポアップ。

 頬を上気させながら、どんどん変な方向に進んでいって……──。


「──そう! つまりシャルっちは女の子なんだよ!!」


 とんでもない場所に結論が着地した。

 

「ぶふっ!? なんでそうなるんですか!」


 いきなりぶっ飛びすぎだって!

 脈絡もなく俺を女の子にしないで!

 俺の男としての尊厳が消し飛んじゃったよ。……ん? もとからなかった?


「あーあ。……やっぱりコレットが暴走しちゃったわね……」

「んぅ? どういうことニーナちゃん?」

「えっと。コレットって普段は元気で真面目な子なんだけど。ひとたび『可愛いモノ(・・・・・)』を見ると性格が変わる変態なのよね。それもある一定の線を越えると……こうなるのよ」

「そっか〜! えへへ、シャルくんって可愛いもんね〜。納得だよ〜」


 おい、後ろ。話が丸聞こえですから。

 てかアルルも納得しないでね。

 ニーナに関しては、こうなる事が分かってたみたいな口調だし。


「──ねぇねぇ、シャルっち!」

「は、はぃっ」


 見えなかった……なんて速さで接近してくるの……。あと、お顔が近いです。

 しかも、また真顔に変わってるし。


「まさかだけどぉ〜、この宿から他の宿に移ろう、な〜んて考えてないわよね?」

「……う、移りますよ。だって僕は男だし、こ「駄目よ!!」こは…………ぁぅ」


 最後まで言わせてくれなかった。

 もうっ、怖いよぉ。違う意味で母様超えてるよ、この人ー!!


「はは、ごめんごめん。シャルっちは、お真面目さんだもんね。だったら強行案を使う事にするよ。──シャルっちは私に少しなりとも恩を感じている……そうよね?」


 一応、合っているのでコクコクと首肯するが、何を言われるか考えると気を抜くことは出来ない。


 すると、やっぱりコレットちゃんは俺の予想斜め上の要求(?)をしてきた。


「ならばコレット・ロチェスが命じるわ。シャルっち! 蓮華亭に留まりなさい! これはお願い(・・・)じゃないわ命令(・・)よ!」


 なにそれ、どこの独裁者ですかそれーっ。

 拒否は認めないってヒドいっ。

 恩は確かに感じてるけど、それじゃ強行案というより、俺からしたらもう脅迫だからね!?


「でもコレットさんがこんな事を勝手に決めるのはダメなんじゃないですか? 留まるにしても女将さんとかに相談しないと……」

「──じゃあ問題ないわね!」


 やっぱり断言。二の句も継げぬ俺。

 こっちは踏み込んでも良い所なのか、微妙な所を頑張って突っ込んだのに、まったく動じていないし。

 あ、もしかして……。


「ねぇ、ニーナ」

「──なにかしら?」

「もしかしてさ。コレットさんて」

「ええ、そう。蓮華亭の若女将よ」

「…………」


 その可能性は確かに考えてたよ。

 でも低いとも思ってもいた。だってコレットちゃんの容姿ってまだ中学生くらいで、幼いし女将には早いだろうって。


「ふふん。これでも私は成人してるのよ。年齢的には女将でもおかしくないの。──さ、シャルっち。さっき言った通り蓮華亭にいてくれるかな?」

「えと」

返事は(・・・)?」


 コレットちゃん笑顔。


「……はい」


 俺も笑顔。

 視界が滲んでるけど気のせいだ気のせい。




 ──結局、この謝罪騒動(バカ騒ぎ)はコレットちゃんの暴走により有耶無耶に収拾した。


 結果を見れば、俺もアルルも変わらず蓮華亭に泊まれるから良かったのかもしれないけど。俺の中ではコレットちゃんの見方がかなり変わった。怒らせて(暴走させて)はいけない存在として。

 ちなみに、他のお客さんはコレットちゃんの変態性を熟知しているのか、途中からは俺たちを微笑ましげに、もしくは笑いの種として見ていた。

 そして、俺の秘密はすぐに蓮華亭で拡散・共有されて、一躍有名人になっちゃったとさ。

 ──って。他の女性客も順応早すぎるよ。

 なにこの許容力。団結しすぎでしょう。


 はぁ。……もういいや、疲れたよ。

 今日は肉体より精神の消耗がとっても激しかった。こんなに驚かされる日はもう来ないんじゃないの?


 今日は早く寝よう。

 そう、ふて寝だ。ふて寝をしましょう。




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