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ボウケンシャ+シンマイ=


 ──こほん! では簡単に。


 冒険者として登録したことにより、ギルドで斡旋している数多くの依頼を受けることが可能になりました。

 その他にも、冒険者ギルドと提携している他ギルドや商家に、冒険者証を提示することで様々なサービスを受けられたりと、多くの利点が得られます。

 その辺りは、必要時においおいご説明するとして。


 まずは冒険者ランクについてです。

 冒険者にはランクという階級分けをおこなっていまして、最下級から──


 F、E、D、C、B、A、AA、AAA、S


 ──と。九階級に分けています。


 これは、冒険者の実力を示すものでして、ランクが高ければ高いほど腕の立つ冒険者となります。

 そして、高ランク冒険者はそれに伴って、信用や名声、富などを多く得る事にもなります。

 ただ、ランクが上がればそれだけ危険も多くなるという事も忘れないでくださいね。


 新規登録であるお二人の冒険者ランクは、当然ではありますが『F』ランクです。


 ランクは、依頼の達成実績や本人の戦闘力、冒険者としての資質などを総合的に評価して、ギルド側で決めさせていただいております。時に、実力を見定める為の特別依頼を出したりもするので、覚えておいてください。


 なお、緊急依頼が発行されると、ギルドに居る『D』ランクからの冒険者は強制的に召集されるので、心構えとともに覚えておいて下さい。



 ──では、最後に。

 冒険者は実力至上主義のお仕事です。

 力及ばず落命する方も少なくありません。

 ギルドでも出来る限りのバックアップはいたしますが、実地に出るのは冒険者の皆様です。

 なので、油断や慢心はしない様に心がけて下さいね。


 ──これで基本的な説明は以上です。おわかり頂けたでしょうか?」


「はい、大丈夫です」

「うん、うん!」

「それでは、ギルドカードの発行に移りたいと思います。準備をしますので少々お待ち下さいね」


 そう言うと、お姉さんは応接室を出て、何処かへと消えていった。




 ◾︎◾︎◾︎




 アルルの瞬殺劇を終えてお互いに合格となったあと。受付に戻って正式な手続きを済ますことになった。


 それで、一階まで戻ってきてみれば。

 例の手続きや案内をしてくれたお姉さんが出迎えてくれた。

 やけにソワソワしていたから、何かと思ったが。


『審査官の側が怪我を負う事になるなんて思ってもいませんでしたよ! お二人には驚かされてばかりです!!』


 ただ、驚いてただけみたい。

 そんな言葉を皮切りにお姉さんは俺たちを応接室に案内して、あれよあれよと受付で本登録を始めた。

 こういう切り替えはやっぱりプロだった。


 本登録と言っても面倒な事は一切なく。

 冒険者ギルドの仕事や、基本ルールなどを説明してもらって、ギルドカードを発行すれば終了。

 案外あっさりしてるが、かたっくるしいのよりはマシだ。

 冒険者ギルドらしい──っていえばらしいし。この後は予定がないとはいえ、早く済むのは助かる。


 あ。そういえば。

『冒険者ランク』の説明を受けて思い出したのだが。

 俺たちが候都に向かう途中で戦った、あの自爆ワンコ。ジョルジさんがランクを言っていたが、魔物として結構な強敵だったようだ。


 なんでも、審査で戦ったあのオジサン。

 あの人のランクがなんと『Eランク』での上位辺りらしい。


 ランクでいうと下から二番目なのだが。

 冒険者の大抵はEランクかDランク。

 冒険者審査を通れても才能が乏しければ、ずっとFランクらしい。

 Sランクはもとより、BランクやAランクになれる程の冒険者は、全体に対してかなり少数のようだ。


 そう考えると、オジサンのランクは平均的なみたいだから低くはないのかな?

 お姉さんは簡単そうに言ってたけど、ランク付けはかなりシビアみたい。


 まぁ、そんなオジサンのランクを聞いて、自爆ワンコの方がランクが上だったから少し驚いた。

 ワンコのランクは、ジョルジさんが言うところ『Dランク』だ。

 あの時は、そんな格付けの平均値は知らなかったから普通に戦ってたけど、周りが驚いていた理由が今になってやっと理解できた。



「──お待たせしました。こちらをお受け取り下さい。これよりギルドカードを作る作業に入ります」


 思考断裁。

 受付のお姉さんが戻ってきた。


「ありがとうございます」

「かーど? なにも書かれてないね〜」


 俺とアルルはトランプサイズのカード? を受け取る。

 手渡されたモノは真っさらの白で、何も書かれていないため、ただの板切れにみえる。



「お二人とも持ちましたね。そしたらカードに魔力または闘力のお好きな方を流し込んで下さい」


 よく分からないが、言われた通り俺たちはカードに『力』を流していく。

 俺が魔力でアルルが闘力だ。


「……お、光った」

「シャルくん、あたしの方も光ったよ〜」

「では次に、この石板へ同じく魔力か闘力の登録をお願いします」


 お姉さんが取り出したのは、三〇センチ四方の黒い石板。

 そこにまた同じように力を流す。


「……はい。これでギルドカードの発行は終了です。いまお持ちいただいているカードがお二人──シャルラハート様とアルリエル様のギルドカードになります。ご確認ください」


 ギルドカードの発行時間。

 およそ一分ちょい。

 あっという間に終わってしまった。


 そして、お姉さんに言われるがままカードを確認すると、手元のカードにある変化が起こっていた。


「さっきと全然違うね」


 手元にあるカード。

 さっきまではなんの変哲もないカードだったのだが。

 今はカード全体が濃い青色に変わり、スターサファイアの如く光を当てると、キラキラ反射している。宝石をカード状に加工したと言われても、全く違和感がない変貌を遂げていた。カードの隅には剣をクロスさせた紋章も刻まれている。お〜〜かっこいい。


「ん、アルルは色が違うんだね」

「──うん! もしかしたら闘力と魔力で色が分かれるのかもしれないね〜。綺麗〜っ♪」


 アルルが両手で大事そうに抱えているカードの色は、琥珀色っていうのかな?

 黄色よりの橙色をした、こちらも宝石のように綺麗なギルドカードに変わっていた。


 アルルも言ってたけど、込める力の種類によって完成後の色が分かれるんだろうな。


「アルリエル様のおっしゃる通りです。このギルドカードは登録時に込める力によって、二種類に色が分かれます」

「どこか違いはあるんですか〜?」

「いえ、色が異なるだけで変わりはございません。ただ、そのカードは見ての通り特殊な素材で作られていますので、紛失や盗難で再発行を行うと金貨3枚が必要になります」

「金貨3枚っ?」

「お〜〜!」


 それって銀貨換算だと30枚で。

 銅貨換算だと──300枚!!

 コレットちゃんに聞いた蓮華亭の一泊料が、部屋にもよるけどご飯付きで銀貨1枚半(お一人様)くらいだから……。


「迂闊に取り出すことも出来ないかも……」

「ふふ、ですがそれも仕方がない事なのですよ。そのギルドカードは一種の魔法具ですからね。値がはるんですよ」


 お姉さんは再発行料に軽く戦慄する俺を、微笑ましく見ながら説明してくれた。


 つまりギルドカードとは、原理は理解できないけど、何百何千といるであろう冒険者を、個々に判別出来る魔法具って事らしい。


 そんなハイテクノロジーな魔法具があるなんて、地味にすごいよ異世界っ。


 ……となると。ギルドカードを狙った強盗とかもいそうだね。気をつけないと。



「そうですねー。確かに新規冒険者の2割近くが半年のうちにカードを失ってしまっているのが現状です。ですから新規冒険者の最初の仕事は、自身のギルドカードを守り抜くことーとも言えますね」



 顔に出ていたか、口に出ていたか。

 お姉さんがそう答えてくれた。

 うん。油断しないでおこう。


「さて、話が逸れてしまいましたが、以上で本登録は終了となります。何か質問はありますか?」


 聞きたいことは聞き終えているので、首を横に振る。


「では、お二人は正式に冒険者です。これからよろしくお願いいたしますね、シャルラハート様、アルリエル様」

「はい、よろしくお願いします」

「えへへ、よろしくおねがいします〜!!」


 俺たちは、握手を交わした。

 そんな感じで、何事もなくギルドカードを作り終え。

 俺たちの冒険者登録は完了。

 冒険者を目指し始めてからここまで来るのに3年と少し。

 だいぶ時間がかかったものだが、夢への大きな一歩を踏み出せた。

 俺は感慨を噛みしめつつ、受付のお姉さんに一礼して冒険者ギルドを後にした──






 ──いや。

 後にしようとした、かな。



「あ」

「お〜!」

「……!」


 冒険者ギルドの出入り口にて。

 亜麻色の髪をもつ少女と。

 3度目の偶然の遭遇。



「えへへ、ニーナちゃんだ〜! わーい!」

「ちょ! なんでいきなり抱きつくのよ!? は、離れなさいってば!?」


 冒険者ギルドの扉口でニーナを見つけるや否や、瞬時に距離をつめて抱擁をするアルルさん。最近、人目とかをあまり気にしなくなる所まできちゃってるよ。


 ギルド内が一瞬ざわっとした。

 確かにこの二人って冒険者ギルドとはミスマッチな容姿だからね。目の保養にはいいかもねー。


「あーうん。それはアルルの癖? みたいなものだから気にしたら負けだよニーナ」

「そんな迷惑な癖なら直させなさいよッ!」


 うーん。そうは思うんだけど。俺がお説教しても直らなかったし? それに俺以外には母様とかミーレスさんにしか抱きついてなかったし。

 見境がないわけでも無いから別にいいんじゃないかな〜なんて。


「それに何で貴女たちが冒──」

『あぁぁあぁぁぁぁぁーー!?』


 ニーナが何か言おうと口を開いたが、それを掻き消す大声。


 声のした方──右手側の依頼板が置いてある方を見ると、飛びかかるように此方へ走ってくる一人の男性が見えた。


 誰だろう? 知らない人だ。

 あっちは知ってるみたいだけど。

 全く、次から次になんなんだ?


「シャルさんにアルルさんですよね!?」

「はい」

「ん〜?」


 よく知らんけども返事を返す。

 ニーナは意味がわからず口を閉ざし、アルルは相手の顔を見てなにやら唸っている。


「良かった〜! やっと見つけられました」


 安堵の息を漏らす青年。

 見た目が十代後半、もしくは二十代前半に見えるこの青年。

 この反応、俺たちとどこかで会ったことあるのかな。どこだろ、全然覚えてないや。



「ジョルジさんの所にいた商人さんだ〜!」

「……?」


 そうなの? 流石アルルよく顔覚えていられるね。俺は言われた今もわからないんだけど。昔から他人の顔覚えるのは大の苦手だ。

 ジョルジさんの隊商にいたのかこの人。


 へぇ〜〜……あれ?

 ジョルジさんの所にいた商人さんって事はさ──つまり。


「──シャルさんにアルルさん! 隊商長がお待ちしています。ついてきてもらっても良いですか?」

「「 おぉー 」」



 やっぱり!

 本日二度目のミラクルっ。




2017/08/25:誤字修正しました。


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