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22

 その次の日から、俺の神職としての修行も兼ねた、神社の手伝いが始まった。

 神社の諸々の作業を通じて、神職としての仕事の段取りを覚えていく。

 とはいえ、神職見習いである出仕の仕事は、当然だが雑用が中心だ。

 出仕は他にも何人かいるが、俺以外のみんなは、それぞれ余所の神社の跡取り息子らしく、この神社で修行を積んでいると聞いていた。


「あー、かったりいなぁ」


 だるそうにぼやいたのは、俺達出仕のリーダー格である最年長の奴だ。

名前はケン。歳は15歳との事だったので、俺より4歳ほど年長ということになる。

 ちなみに、種族は普通の人間だ。

 俺は今、そいつと一緒に、神社の外にお使いに出ているところで、両手には買い物袋をぶら下げていた。

 祭りまでまだ日にちはあるが、参道には既にいくつもの縁日の屋台が立ち並び、その殆どが営業している状態だった。

 その殆どが食べ物の屋台であり、丁度昼飯前だったこともあって、空きっ腹にはけっこう堪えた。


「なあ、買い食いでもしていかねえか?」

「遅くなると怒られるよ」


 そいつは俺の模範的な回答が気に入らなかったらしく、つまらないと言いたげな顔で舌打ちした。

 心情的には分からないでもないけれど、神職見習いになったばかりの身分で、粗相をやらかすわけにはいかない。

 何より、俺が叱られるようなことになれば、姉さんの顔に泥を塗ることにもなる。

 それだけは、絶対に避けなければならない。


「これだから、真面目君は……おっ!」


 鼻を鳴らした後、すれ違った獣人――兎耳(とじ)族の女性に気をとられて、そちらを視線で追い始めた。


「なあなあ、今すれ違った兎女。結構いい女じゃね?」

「え? ああ、そうだね」


 注意深く見てはいなかったけど、男も女も美形揃いの兎耳族だ。

 きっと美女だったんだろうと、適当に聞き流す感じで相槌を打った。


「淡白だなー。まあ、まだガキだから仕方ねーか」


 年上ヅラしてしたり顔で頷いたりしているのがイラっと来たけど、いちおう相手は先輩なので、態度には出さないようにした。


「そういや、お前の姉さんって、すげえ美人だよな!」

「うん。まあね」

「あんな美人の姉ちゃんと旅してるなんて、羨まし過ぎる!」


 姉さんが美人であるのは、事実だけど、こいつに言われると何か腹が立つな。


「なあなあ。恋人とかいるのか? なぁ、どうなんだ?」

「……いないと思うけど」

「マジで? じゃあ、俺立候補しようかな!」


 調子に乗ってそんなことまで言い出しやがった。

 ここまで向こう見ずだと、怒りを通り越して呆れてしまう。

 年上の綺麗なお姉さんに憧れているだけなんだろうけど。

ちなみに姉さんは、ここの神社の巫女でもあるケーネさんと一緒に、神楽舞を奉納することになっている。

 境内にある神楽殿で、本番に向けての舞の稽古をしているところだ。

 

「お前の姉さんって、どんなタイプが好みなの?」

「うーん……」


 十一歳の子供にする質問じゃないだろうと思いながらも、少し考えてみる。

 いちおう、俺は将来の婿ということになっているが、姉さんの好みってわけじゃないだろう。

 実際のところ、どうなんだろうな。

男の好みなんて、聞こうと思ったことも無ければ、考えたことも無かった。


「ちょっと、わかんないな」

「なんだよ。弟のクセに、そんなことも知らないのかよ。つかえねえな」


 無難にそう答えてやったところ、あからさまに失望されてしまった。悪かったな。


「よし。明日までに好みのタイプを聞いて来い。先輩命令だ」


 ……いい加減、うざくなってきた。


「お! なんだ、あの人だかり」


 どう言い返してやろうかと思案していると、ケンは前方に見える人垣に気を取られていた。

 立ち並ぶ人々の間からは、時折歓声や拍手が上がっている。

 何か見世物でもやっているみたいだ。


「おい。行ってみようぜ」


 自分の荷物を俺に押し付けると、野郎はさっさと人混みのほうへ行ってしまった。

 放っておくわけにも行かず、俺は両手に荷物をぶら下げたまま後を追って行った。

 どうやら大道芸をやっているようだった。

 真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、俺と同じぐらいの歳に見える兎耳族の少女が、空中で見事にトンボを切っている姿だった。

 助走もつけていないのに、まるで足元にトランポリンでもあるかのように、軽々と三、四メートル程飛び上がっては、空中で身を翻して、観客達に笑顔を振りまいていた。

 彼女が飛び跳ねている下では、人間の少年が片手で何本もの短剣をジャグリングしている。


「おおー、すげー!!」


 ケンは最前列で、他の観客に混じって暢気に歓声を上げていた。


「おい! 早く戻らないと、禰宜さんに叱られるぞ!」


 そう声を掛けてみたが、周囲の観客の声に掻き消されて、奴の耳には入っていないようだった。

 もっとも、たとえ入っていたとしても、無視されたかもしれない。

 仕方が無いので、俺も少しの間、見学することにした。

 地上では、短躯族の男性が太鼓を叩いていて、兎耳族の少女は、その音頭に合わせて飛んだり跳ねたりしていた。

 こういうサーカスみたいな芸を生で見たことがあまり無かったので、すっかりお使いを忘れて夢中になってしまった。

 ただひとつ気になったのは、観客に愛想を振りまいている彼女の、兎耳族の特徴である兎のような耳が、片方半ばから千切れるようにして切断されていることだった。

 他の芸人仲間をよくよく見てみると、半数ほどが獣人だったが、驚くことに、そのほぼ全員が身体に大なり小なりの傷を負っていた。

 太鼓を叩いて音頭を取っている短躯族の男性は片足が義足だし、片腕でジャグリングを披露している少年も、ナイフをお手玉している右腕しかなかった。

 観客達には非常に好評で、彼らの前に置かれた箱には、次々とお捻りが放り込まれている。

 どうしよう。俺も入れたほうが良いのかな。

 荷物を地面に置いて、懐を探ろうとしたその時だった。


「いい加減にしたまえ!」


 役者顔負けの張りのある声が響いた。

 芸人達は驚いたように演技をやめ、観客達の熱狂が漣のように引いていった。

 何事かと、声のしたほうに目を向けてみると、そこに立っていたのは……ライトノベルの勇者様だった。

 うん。そうとしか表現のしようがない格好だった。

 金髪碧眼のイケメンだったりするところとか。

 後ろに美少女をひきつれているところとか。

 傷一つ無いきらびやかな装備を身に着けているところとか。

 街並みやら人々の服装やら、割と和風な感じのこの世界で、ファンタジーRPG風の格好が随分と浮いていた。

 イケメンだけあって、観客の女性陣の中には、うっとりとした溜息を漏らす人もいた。一部男性の中にも。

 そんな外野の視線を全く気にした素振りも見せず、勇者っぽい男は、芸人達のほうへずかずかと歩み寄っていった。

 その後ろに、男の連れららしい二人の女性も追従する。

 軽装の鎧と小ぶりな小剣を両腰に差している剣士風の赤銅色の髪の女性と、ちょっと目に痛いピンク髪の方士っぽい狩衣姿の女性だ。

 RPG的に言うなら、戦士と魔法使いポジションなのだろう。


「責任者は誰だ!?」


 呆気に取られる芸人達を前に、詰問するような声を張り上げた。


「そうだ! さっさと出て来い!」

「こんな非人道的な真似は許されません!」


 お連れの美少女三人組のうち、剣士と方士が口々に非難がましい声を上げた。


「まさか、一宮のお膝元で、このような蛮行がまかり通っているとは……!!」


 芝居がかった仕草で俯き、金髪男は肩を震わせていた。

 観客達は、とつぜん乱入してきた彼らに奇異の視線を向けているが、関わりあいになるのが嫌なのか、口を出すものはいなかった。


「わ、私が一座の団長ですが、うちの芸人が何か不手際を……?」


 頭髪の薄い人間の小男が、手拭で顔を拭きながら、恐縮したように出てきた。この人が一座の団長らしい。

 金髪男は、キッ! という擬音が聞こえてきそうな鋭い視線で小男を睨みつけ、これまたビシッ! という擬音が聞こえてきそうなポーズで、一座の団長を指さした。


「とぼけるな! 哀れな障碍者達に奴隷労働を強いるなど、人間の所業ではないぞ! 恥を知れ!!」

「ど、ど、奴隷労働!?」

「そうだ!」


 目を丸くする団長に向かって、金髪男は胸を逸らして言い放った。


「障碍者がまともな職に就けないことを良い事に、見世物にしてこき使っているではないか!」

「そ、そんな。ち、違いますよ! こいつらはうちの正規の団員だし、給金だってきちんと払ってますよ!」


 団長が慌てて弁解するも、金髪男と取り巻きの美少女達は聞く耳を持たない。


「この期に及んで、言い逃れなんて出来ると思っているのか!」

「そうよ! 奴隷じゃないって言うのなら、その証拠を見せなさい!」


 剣士と方士の二人が、口々に金髪男に追従した。

 方士のほうなんて、ずいぶんと無茶なことを言っている。

 無い証拠なんて、見せようが無いだろうに。


「奴隷だってよ……」

「ひでえな。本当かよ」

「そういや、そんな感じの人ばかりね……」


 金髪男ご一行様が、あまりにも自信満々だからなのか、観客達の間からそんな声がちらほらと聞こえ始めた。


「そ、そそ、そんな……」


 半分泣きが入った団長の視線が、救いを求めるように周囲を彷徨い、成り行きを見守っていた俺のところで止まった。


「あ、ああ! か、神主さん! 良い所に!」

「んえ!?」


 地獄に仏と言わんばかりの表情で、一座の団長は俺に向かって叫んだ。

 金髪男ご一行様だけでなく、観客達の視線も一斉に俺に集中した。

 俺の今の格好は、姉さんと旅をしている時のような水干ではなく、白衣に白袴という神職見習いである出仕の格好だ。

 そのせいで、団長の目に留まってしまったらしい。


「神主さん! 説明してやってくれよ! うちは、きちんとここの神社から許可貰って営業しているんだ! 奴隷労働だなんて、とんだ言い掛かりだよ!」

「え、あ、いや……」


 俺はまだ正規の神職じゃないし、そもそもこの神社の所属じゃないし。

 しどろもどろになりながら、ケンに助けを求めようとしたが、奴はとっくのとうに姿をくらませていた。


(あ、あの野郎……!!)


 団長の縋るような視線、金髪男ご一行様の訝しげな視線、そして野次馬達の好奇の視線が俺に集中する。

 こんな状況で、今更ばっくれるのは無理だった。

 俺は重い足取りで、口論の場へと足を運んだ。

 いちおう、見習いとはいえ神職なのだから、神社に関してのトラブルは放置できない。


「君は、この神社の神職か?」


 早速とばかりに、金髪男が口火を切った。


「そんなところです。まだ見習いですが。いったい、何の騒ぎでしょうか」

「見れば分かるだろう!」


 金髪男が手を広げると、纏っていたマントが大きく広がった。

 いちいち、リアクションが大袈裟で鬱陶しい。


「いったいどういう了見で、こんな奴隷労働を強いる連中を、神社組合は野放しにしているのだ!?」

「そうだ、そうだ!」

「納得のいく理由を説明しなさい!」


 剣士と方士が野次を飛ばすように続いた。

 この二人は、さっきから、金髪男に追従するような発言しかしていないな。


「その前に、あなた方が、奴隷労働と判断する根拠はあるのですか?」


 姦しい女二人を無視して、俺は金髪男に向かって尋ねた。


「今回、参道に出店している出店や一座は、全て当社、ひいては神社組合テルナーテ支部が許可を出したものです。違法性があれば、その時点で出店を拒否します」


 傍で、一座の団長が、我が意を得たりとばかりに、何度も頷いていた。


「団長さん。許可証はありますか?」

「ああ、もちろん!」


 団長は大きく頷くと、懐からしわくちゃになった組合の許可証を取り出した。

 それを受け取った俺は、神社組合のテルナーテ支部の判が押されていることを確認した。


「確かに、組合の出した正式な許可証です」

「そんなはずは無い! 大方偽造でもしたのだろう!」


 金髪男はしつこく食い下がってきた。

 この判はただの判子ではなく、組合所属の方士が複数の応用式(アプリケーション)を組み合わせて作成した特殊な印だ。

 用紙のほうも、見た目はただの紙だが、こちらも方術を練りこんだ特殊な製法で作られており、専用の印でしか判が押せないようになっている。

 方士としてのかなり高度な知識と技術が要求されるため、偽造は非常に困難だ。


「そういうわけで、偽造の可能性はほぼありません」

「な、ならば! 組合の判断に誤りがあったのだ!」


 若干弱腰になりつつも、これだけ大騒ぎした後では引き下がれないのか、斜め上のいちゃもんを付け始めた。


「……組合の判断を疑うというのであれば、それなりの証拠を示してください」

「そんなことはどうでもいい! 問題は、障碍者が奴隷扱いされてることだ!」


 そう言ってまたもや大袈裟な身振りで腕を広げてみせた。

 不安そうに成り行きを見守っている団員に、ちらりと視線を向ける。


「……もしかして、彼らが障碍者だからというのが根拠なのですか?」

「そうだ!」


 息を吹き返したように、自信満々に断言された。

 どうやら、あまり深く考えずに、はた迷惑な正義感を発揮しただけみたいだ。


「そんなものは根拠になりませんよ。あなた個人の主観です」

「なんだと、こら!」

「ちょっと、君! 言葉に気をつけなさい!!」


 激昂したのは、金髪男ではなく、取り巻きの赤毛の剣士とピンク髪の方士だった。

剣呑な目付きがなんか怖い。


「二人共落ち着け。子供の言うことだ」


 金髪男がいきり立つ女二人を諌めた。

 余裕ぶってはいるが、ほんの少し口元が引き攣っているのを、俺は見逃さなかった。


「君は神社の外の世界のことを知らないから無理は無いかもしれないが、神社組合の決めたことが全て正しいわけではないのだよ」


 子供に言い聞かせるような口振りで、決め付けるように言った。

 姉さん以外の奴に子供扱いされるのは、無性に腹が立つ。

 そもそも、なんで組合が間違っていることを前提にしてるんだ。


「逆に尋ねよう。君は私の主観に過ぎないと言うが、その根拠はなんだい?」

「根拠も何も。上辺だけで判断してるじゃないですか」

「う、上辺だけ……!?」


 取り繕っているような金髪男の笑顔が歪んだ。

 相手に反論されることに慣れていないのかもしれない。


「だって、そうでしょう。もし、彼らが健常者だったら、同じような判断はしましたか?」


 気付かないフリをして、俺はさらに質問をぶつけた。

 障碍者が芸をやっている! きっと、無理矢理やらされているに違いない! 止めさせる俺カッコイイ! みたいな論法に至ったんじゃないかと思ったからだ。


「どうなんですか?」


 金髪男は言葉に詰まった。

 どうやら、図星みたいだ。


「そういえば、さっき、言ってましたよね。『障碍者がまともな職に就けないことを良い事に……』って」


 俺は、更に、この手の連中が最も忌み嫌う言葉を続けた。


「それって、差別ですよね。良くない思いますよ、そういうの」

「な、ななな、なんだと……!!」


 思ったとおり、一気に化けの皮がはがれた。

 顔を赤黒くして、憎々しげに俺を睨みつけてくる。

 子供相手に大人気ないなあ。せっかくの美形が台無しだ。


「おい、ガキ! お前じゃ話にならん! 大人を呼んで来い!」

「そうよ! 見習い風情が生意気よ!」


 剣士と方士が、金髪男と俺の間に立ちはだかるようにして捲し立ててきた。

 クレーマーにありがちな「上司を出せ」パターンだ。


「それは結構ですが……」


 どのみち結論は変わりませんよ、と続けようとした時だ。


「いい加減にしやがれ、手前ら!!」


 べらんめえな口調に驚いてそちらを振り返ると、声の主は、軽業を披露していた片耳が千切れた兎耳族の少女だった。


「大人しく聞いてりゃ、好き勝手なこと抜かしやがって! あたし達が奴隷だって!? ふざけんじゃないよ!!」


 予想もしなかった展開に俺も金髪男と取り巻きの女達も、呆気に取られていた。


「ああ、そうさ。てめーの言うとおり、こんなナリのせいで、あたしらにまともな働き口なんて無い! だからこうやって、芸で日銭を稼いでるんだ!」


 少女の言葉に、他の芸人仲間が一斉に頷いていた。


「お前らが変なケチをつけたせいで、客が引いちまったじゃねーか! どうしてくれんだ、コラ!」

「え、ああ、いや……」


 殺意すら感じられるその視線に、金髪男は及び腰になっていた。


「お前らが、その儲け分の補填でもしてくれんのか!? どうなんだ!?」


 ずかずかと男の傍まで歩み寄ると、眦を吊り上げ、ねめつけるように下から見上げた。


「おいこら! お前、こっちはお前らのためにやってんだぞ!」

「そうよ! 私達に文句を言うのはお門違いよ!」


 先に立ち直った女二人が、口々に叫んだ。

 台詞がいちいち恩着せがましい。

 唾でも吐きそうな表情で、兎耳族の少女は、女達を睨み付けた。


「人の仕事の邪魔しておいて、何言ってやがんだ、あぁ!? キレイに畳むぞ、ドブス!」

「ど……!」

「ドブス……!」


 威勢のいい啖呵と共に、暴言が飛び出した。

 頭に血が上っているからなんだけど、それはさすがに、ちょっと言いすぎだ。

 ドブス呼ばわりされた女二人は、怒りで顔を真っ赤にしている。

 まずいな。どんどん収集がつかなくなっていく。


「いいぞ、ウサミミの姉ちゃん! もっとやれ!」


 そんな声と共に、箱に小銭が放り込まれた。

 姿は見えなかったが、その声はケンのものだった。

 その声に、これが見世物だと思ったのか、比較的近くで見守っていた野次馬達からも小銭と歓声が飛んできた。


「いいぞ、嬢ちゃん! そんなスカシ野郎はやっちまえ!」

「ハンサムな金髪様! 負けないでぇ!」


 冷やかし半分のそんな歓声がそこかしこから上がった。

 その大半は、金髪男達三人に威勢のいい啖呵を切った兎耳族の少女を応援する声だった。

無責任な野次馬の声援に、金髪男とお供の女二人は明らかに狼狽していた。

 

「い、行くぞ!」


 耐えかねたのか、金髪男は逃げるように踵を返した。


「ま、待ってください!」

「殿下!?」


 剣士と方士の二人が慌てて後を追って行く。

 去り際に、こちらにガンを飛ばしてくるのも忘れない。


「二度と来るな!!」


 はしたなく中指を立てる兎耳少女に、やんやの喝采が降り注いだ。

 方士の女が金髪男の事を「殿下」と呼んでいたけど、身分の高いお貴族様か何かだったんだろうか。

 見世物は終了したと判断したのか、金髪男達が立ち去った後は、観客達も思い思いに散り始めた。

 なんか、有耶無耶になってしまった感があるけど、ひとまず結果オーライってことで良いんだろうか。

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