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下心
同じ専攻の浅倉藍音という人を見たのは、入学して間もない、少人数講義の休み時間だった。
女子が少ない物理専攻のなかでも、誰とも群れていなくて、いつも一人でそこにいた。
ただ、そこにいただけなのに、私は彼女を見ると妙に臆病になってしまっていた。
程よい肉付き、長い髪、白い肌、清楚な輪郭、小綺麗な装い、隠せない知性……それらを上手く避けられる私ではないと知っていたのに、目が離せなかった。
狙っちまおうだなんて、そんなふうに驕り高ぶったことを考えようにも一苦労だった。
私が下心を持つ相手ほど、私を嫌うだろうから。
「ねえ、移動教室あっちであってるよね?」
獲物が自ら来た。
私は、仕留める武器を持っていなかった。
狩人にもなれないから、友達になるしかなかった。
友達になったから、清さを纏った。
清くなれば、穢れを閉じ込められた。
穢れは閉じ込められたから、私を、内側から蝕み始めた。




