9話:円卓の騎士
騎士団本部の最奥。
そこは、選ばれた12人の英雄しか立ち入りを許されない聖域――『円卓の間』。
重厚な扉を蹴り開けると、円卓を囲んでいた視線が一斉に僕に突き刺さった。
「……何者だ、貴様」
「子供……? 警備は何をしている」
部屋に満ちているのは、先日会った騎士王にも劣らない濃密な魔力。
ここにいるのは全員が「一騎当千」。
王国の最高戦力、『円卓の騎士』たちだ。
僕は臆することなく、円卓の空席――まだ誰も座っていない13番目の席に足をかけた。
「ギルドから来た。あんたたちが管理してる『Sランク任務』、僕がもらう」
静寂。
そして、爆発的な殺気。
「……増長するなよ、新入り」
音もなく立ち上がったのは、緑色の鎧を纏った男。
『疾風』の異名を持つ、円卓序列7位、ゼフィル。
王国最速の槍使いとして知られる英雄だ。
「陛下のお気に入りか知らんが、我々の領域に足を踏み入れるには、まだ100年早い」
ゼフィルの姿がブレた。
消えたのではない。速すぎるのだ。
音速を超えた刺突が、僕の眉間へと迫る。
(……挨拶代わりにしては、殺す気満々だな)
本来なら、反応すらできずに脳天を貫かれて終わりだ。
だが、今の僕には「世界が止まって」見える。
装備している『王家の短剣』による敏捷性+200の補正。
そして、復讐者としての動体視力。
僕はあくびを噛み殺しながら、迫りくる槍の穂先を――人差し指と親指で「摘んだ」。
キィィィィィィンッ!!
金属音が響き、衝撃波が円卓の間を駆け抜ける。
「な……ッ!?」
ゼフィルの動きが強制停止した。
必殺の槍が、たった二本の指で止められている現実に、彼の目が限界まで見開かれる。
「馬鹿な……!? 我が槍は音速だぞ……!?」
「遅いよ。止まって見えた」
僕は指に力を込める。
バキィッ!!
「う、嘘だろ……!?」
国宝級の魔槍が、飴細工のように砕け散った。
僕は破片を弾き飛ばし、呆然とする英雄たちを見渡した。
「これが円卓の実力か? 期待外れもいいところだ」
「き、貴様ァァァッ!!」
激昂した他の騎士たちが武器に手をかける。
だが、それを制したのは、上座に座っていた巨漢の男だった。
「やめろ。全員、殺されるぞ」
円卓序列1位。
『剣聖』ガラハド。
騎士王に次ぐ実力者が、冷や汗を流して僕を凝視している。
"誤解"
「なっ……筆頭がそこまで言うのか!?」
ガラハドの言葉に、騎士たちが息を呑む。
僕は肩をすくめた。
戦う手間が省けたようだ。
「……アレン、と言ったか。認めるしかないようだな」
ガラハドが重々しく頷き、一枚の羊皮紙をテーブルに滑らせた。
「持って行け。我々でも手を焼いていた『指定Sランク任務』だ。……失敗すれば死ぬぞ」
「死なないよ。魔王を殺すまでは」
僕は羊皮紙を掴み取り、踵を返した。
背後から、畏怖と驚嘆の囁きが聞こえてくる。
あのプライドの高い英雄たちが、たった一度の交錯で僕を「格上」だと認めたのだ。
部屋を出た瞬間、システムログが視界を埋め尽くす。
『クエスト達成:円卓への実力証明』
『称号獲得:円卓級の実力者』
『報酬:Sランク指定任務の受注権』
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コード
【受注クエスト】
討伐対象:旧時代の遺跡の主(Sランク)
報酬:莫大な資金 / クラン設立権限
「……クラン設立権限?」
文字を見て、僕はニヤリと笑った。
ちょうどいい。
魔王軍との戦争になれば、個人の力だけでは限界が来る。
僕の手足となって動く「軍隊」が必要だと思っていたところだ。
「さて、稼ぎに行くとしますか」
僕は羊皮紙を握りしめ、冒険者ギルドへと戻る。
ここから先は、ただの討伐じゃない。
僕の「王国」を作るための礎だ。
『現在のステータス』
Lv:65 → 68(実戦経験値により上昇)』
『評価:国内最強クラス』




