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勇者の復讐  作者: 東井 タカヒロ
第二章 冒険者の旅立ち
16/20

16話:秘宝の宝

『忘却の地下遺跡』。

その名の通り、歴史から消された古代王国の成れの果てだ。

入り口に立つだけで、肌を刺すような瘴気と、重苦しい魔力の奔流を感じる。

普通の冒険者なら、この時点で足がすくみ、引き返すだろう。

だが、今の僕たちは違った。

「……匂うな」

「はい、マスター。濃密な……血と死の匂いです」

「違う。カネの匂いだ」

僕は鼻を鳴らした。

視界に映る遺跡の壁面。苔むしているが、その下にあるのはただの石材じゃない。

古代魔術で強化された『魔抗石アンチ・マジック・ストーン』だ。市場価格、拳大で金貨一枚。

「リズ、壁を剥がせ」

「……はい?」

「この遺跡は宝の山だ。壁も床も、落ちてる瓦礫も全部金になる。袋詰めだ」

「ぎ、御意……」

リズが呆れながらも、鋭い爪で壁を切り裂く。

僕たちはSランクダンジョンに挑む冒険者ではない。

ただの悪質な「解体業者」として侵入を開始した。

     ◇

「グオオオオオオッ!!」

地下二層。

行く手を阻んだのは、全身が宝石で構成された巨大な人型――『クリスタル・ゴーレム』の群れだった。

通常種ではない。長い年月を経て魔力を吸い、硬度と凶暴性が増した変異種だ。

「硬いぞ、リズ。斬れるか?」

「愚問です」

リズが地を蹴る。

銀閃一閃。

ゴーレムの剛腕が振り下ろされるより速く、彼女の爪がそのコアを貫いていた。

パリーンッ!!

美しい音を立てて、巨体が砕け散る。

散らばったのは、ただの破片ではない。

ルビー、サファイア、エメラルド。

王都の宝石店ならショーケースの最上段に並ぶクラスの原石が、ゴミのように転がっている。

「……素晴らしい」

僕は震える手で『極上のルビー』を拾い上げた。

これ一つで、リズの装備代がチャラになる。

「主よ、次が来ます!」

「歓迎するよ。全部『換金』してやる」

ポーションがない?

関係ない。攻撃を受けなければいいだけだ。

僕たちは踊るようにゴーレムの群れを蹂躙し、宝石の雨を降らせた。

戦闘というより、収穫祭だ。

恐怖の対象であるダンジョンモンスターが、今の僕には「足の生えた財布」にしか見えない。

『アイテム獲得:深紅の魔核(S級素材)×12』

『アイテム獲得:古代結晶(高純度)×35』

『推定売却額:金貨500枚相当』

「はは……笑いが止まらないな」

麻袋がパンパンに膨れ上がる。

だが、僕のスキル《復讐者》の『因果律操作』が、さらなる獲物を感知していた。

この奥だ。

このフロアの突き当たりに、通常のルートでは辿り着けない「隠し部屋」がある。

「リズ、そこを壊せ」

「壁ですが……?」

「いいから全力でやれ」

リズが咆哮と共に、何もない壁に必殺の爪撃を叩き込む。

轟音と共に壁が崩落し――その奥から、黄金の光が漏れ出した。

「な……っ!?」

リズが息を呑む。

そこにあったのは、部屋ではない。

山だ。

金貨、宝飾品、魔導具、古代の武具。

それらがうず高く積み上げられ、小山を作っていた。

『忘却の地下遺跡』の噂は本当だった。

ここは古代王国の隠し金庫。

数百年分の国家予算が、手付かずのまま眠っていたのだ。

「……秘宝の宝、か」

僕は金貨の山に手を突っ込んだ。

冷たくて重い、富の感触。

たった数時間前まで「銅貨3枚」だった貧乏人が、今この瞬間、国一番の大富豪へと成り上がった。

【財宝獲得ログ】

・古代金貨:測定不能(推定100万枚以上)

・国宝級魔導具:多数

・スキルスクロール:『全属性耐性』他

「主よ……これ、どうやって持ち帰りますか? 袋に入り切りませんが」

「アイテムボックスがある。……っと、容量がいっぱいか」

Aランクカードの特典である収納空間も、この量は想定外らしい。

僕は贅沢な悩みに頭を抱え、そしてニヤリと笑った。

「全部は無理だ。……だから、一番『高い』やつだけ持っていく」

僕の視線は、金貨の山の頂上。

そこに鎮座する、異様なオーラを放つ「一つの箱」に釘付けになっていた。

金貨の山など、この箱の「台座」に過ぎないと思わせるほどの、圧倒的な存在感。

(あれだ。あれが、この遺跡の真の『秘宝』だ)

僕が箱に手を伸ばした、その時。

ズズズズズズッ……!!

部屋全体が激しく揺れ、金貨の山が崩れた。

地面から、禍々しい漆黒の霧が噴き出す。

「貴様ラ……我ガ眠リヲ妨ゲ、宝ヲ奪オウトスル盗人カ……」

脳に直接響く、重低音の念話。

箱の背後から、巨大な影がせり上がってくる。

この財宝を守る番人ガーディアン

Sランク冒険者パーティを何組も葬ってきた、絶望の化身。

だが、僕はその影を見上げ、不敵に笑った。

「盗人? 違うな」

僕は短剣を抜いた。

「『徴収』だ。この世界の全ては、僕が魔王を殺すための糧になる義務がある」

『ボス出現:古代王の守護霊スペクター・ロード

『推奨討伐レベル:Lv.80』

格上だ。

だが、今の僕には「金」という最強のバフ(モチベーション)がかかっている。

誰にも止められない。

「どけよ亡霊。その宝は、僕の軍資金だ」

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