表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の復讐  作者: 東井 タカヒロ
第二章 冒険者の旅立ち
14/20

14話:予兆

「ここが、今日から僕たちの城だ」

辺境都市の一等地にそびえ立つ、元貴族の別荘。

広大な庭園に、部屋数は三十を超える豪邸。

本来なら金貨1000枚はくだらない物件だが、僕の『Aランク(特務)』の権限と、ギルドマスターへの無言の圧力ネゴシエーションにより、破格の値段で買い叩いた。

「……

リズが呆れたように天井を見上げる。

彼女の身なりは見違えていた。

ボロボロの布切れから、漆黒の軽鎧へ。

僕が買い与えた特注品だ。銀色の髪が黒に映え、その姿は美しい死神を連想させる。

「形から入るのも重要だ。それに、すぐに狭くなるさ」

僕たちは二人だけじゃない。

これから戦力を増やし、魔王軍に対抗するための軍団を作り上げる。ここは、その拠点ベースだ。

「リズ、体の調子は?」

「……全快だ。溢れすぎて、制御が難しいほどに」

リズが庭の大岩に視線を向ける。

彼女が爪を一閃させた瞬間。

ザンッ。

音もなく、大岩が「三枚おろし」にされて崩れ落ちた。

魔法ではない。純粋な身体能力による斬撃。


【配下ステータス確認】

名前:リズ

Lv:40 → 45

装備:黒狼の戦装束(S級素材)

状態:魔力過剰適合

評価:単騎で城塞攻略が可能

「悪くない」

僕が頷くと、リズは尻尾を小さく振った。

忠誠心もステータスも、順調に育っている。

その時だった。

ズズズズズズッ……!!

突然、地面が低く唸った。

地震? いや、違う。

これは物理的な揺れではない。大気中の魔素マナが共鳴して震えているのだ。

マスター、これは……!」

リズが耳を立て、南の方角を睨みつける。

獣の勘が警鐘を鳴らしているらしい。

「ああ。……嫌な空気だ」

僕の肌にも、ピリピリとした不快感が走る。

ただの魔物じゃない。

この都市の地下深く、あるいは遠方から、何かが「目覚めようとしている」気配。

バンッ!!

屋敷の扉が乱暴に叩かれた。

現れたのは、息を切らせたギルドマスターだ。

「ア、アレン様ッ! 大変です! 緊急事態が……!」

彼は顔面蒼白で、一枚の羊皮紙を突き出した。

「たった今、都市の魔力観測機が異常数値を検出しました! 『忘却の地下遺跡』の方角から、信じられない規模のエネルギー反応が!」

「……遺跡?」

僕が受けているSランク任務の場所だ。

まだ手付かずだったが、向こうから挨拶に来たというわけか。

「数値から予測される危険度は……『災害級カタストロフィ』。この都市が……いや、この地方一帯が消し飛ぶレベルです!」

ギルドマスターの足が震えている。

都市の守備隊も、他の冒険者たちも、この「予兆」を感じ取ってパニックに陥っているのだろう。

だが。

「……ふっ」

僕の口から漏れたのは、乾いた笑いだった。

災害レベル?

都市が消し飛ぶ?

(それがどうした)

僕の脳裏には、あの日の地獄が焼き付いている。

魔法

「落ち着けよ。僕が行く」

「し、しかし……! 相手の正体も規模も不明なんですよ!?」

「だからこそだ」

僕は立ち上がり、腰の『王家の短剣』を撫でた。

リズが背後で無言に爪を立てる。主人の戦意を感じ取り、彼女の殺気も膨れ上がっている。

「デカい獲物なら、実入りもいいだろう?」

未知の脅威。

それは常人にとっては絶望だが、僕にとっては「莫大な経験値」と「レアアイテム」の塊にしか見えない。

「準備するぞ、リズ。稼ぎ時だ」

「帝国の意図」

窓の外、南の空が赤く染まり始めていた。

嵐が来る。

だが、その嵐の中心に立つのは、魔物ではない。

僕たちだ。

『クエスト更新:予兆の調査』

『推奨レベル:測定不能』

……ただ、一つだけ誤算があった。

この豪邸とリズの装備、そしてこれからの遠征準備。

僕の懐事情が、マズいことになっていることに、この時の僕はまだ気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ