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勇者の復讐  作者: 東井 タカヒロ
第二章 冒険者の旅立ち
12/20

12話:飛び級

「う、うわぁぁぁぁッ! 助けてくれぇッ!」

「ダメだ……! 数が多すぎる! 情報と違うぞ!」

岩場に悲鳴が響き渡る。

僕がたどり着いた依頼地点では、先に到着していたCランク冒険者のパーティが壊滅寸前だった。

彼らを囲んでいるのは『変異グリフォン』。

通常の個体よりも一回り大きく、鋼鉄のような羽根を持つ空の殺し屋だ。しかも、数は十体以上。

さらに悪いことに、群れの中央には角の生えた巨大な個体――『グリフォン・ロード』まで鎮座している。

「あ、あぁ……終わった……」

リーダーらしき男が剣を折られ、絶望に顔を歪める。

ロードが巨大な鉤爪を振り上げ、彼らの首を刈り取ろうとした、その瞬間。

「邪魔だ」

ザンッ!!

風が吹いた。

いや、そう錯覚するほどの速さで、僕が彼らの間を駆け抜けたのだ。

「……え?」

男が間の抜けた声を出す。

次の瞬間、目の前にいたグリフォン・ロードの巨体が、斜めにずり落ちた。

ドサァァァァッ!!

大量の血飛沫が舞う。

ロードだけではない。周囲にいた十体のグリフォンすべての首が、同時に地面に落ちていた。

「騒がしいな。獲物が逃げるだろう」

僕は『王家の短剣』についた血を一振りして落とし、何事もなかったかのように納刀した。

消費した体力はゼロ。

敏捷性+200の補正がかかった今の僕にとって、Cランクモンスターの動きなど、止まっているハエを叩くようなものだ。

「お、お前……Eランクの……?」

助けられた冒険者たちが、腰を抜かしたまま僕を見上げている。

感謝よりも先に、理解不能な現象への恐怖。

正しい反応だ。

「死体、いらないなら貰うけど?」

「あ、あぁ……全部、あんたの獲物だ……」

僕は作業的に素材を剥ぎ取り、袋に詰め込んだ。

ロードの角、変異種の羽根、魔石。

どれも高値で売れる。

(さて、帰るか)

僕は呆然とする彼らを放置し、街への帰路についた。

所要時間、わずか三分。

クエストというより、ただの「回収作業」だった。

     ◇

ギルドに戻ると、相変わらずの喧騒があった。

僕がカウンターに向かうと、受付嬢が嘲笑気味に口を開く。

「あら、もう帰ってきたの? 怖くて逃げ出しちゃっ――」

ドスッ。

ドササササッ!!

僕は血の滲む麻袋を逆さにし、中身をカウンターにぶちまけた。

転がり出る大量の魔石。

そして、禍々しいオーラを放つ『ロードの角』。

「……ひッ!?」

受付嬢が悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。

ギルド内が静まり返る。

冒険者たちが目を見開き、カウンターの上の「異常な戦利品」を凝視する。

「グ、グリフォンの魔石……それに、この角は……Bランク相当の『ロード』か!?」

「嘘だろ!? あの群れを、たった一人で……?」

「しかも、あいつ……無傷だぞ……」

ざわめきがどよめきに変わり、やがて熱狂へと変わる。

強者こそが正義。

さっきまで僕を馬鹿にしていた連中の目が、ひっくり返っていた。

「確認を頼む。……それとも、Eランクじゃこれは買い取れない?」

僕が尋ねると、奥から支部長ギルドマスターらしき女性が出てきた。

鋭い眼光の女傑だが、今はその目を見開いて僕を見ている。

「……買い取れないわけがない。これだけの戦果、正規の討伐隊でも難しいわ」

彼女はカウンターを叩き、高らかに宣言した。

「規定により、Eランク冒険者アレンのランクアップを認める! Dランク、Cランクを飛び越え……特例措置として『Bランク』への昇格とする!」

「「「おおおおおおおッ!!」」」

ギルドが歓声に包まれる。

飛びランクスキップ

数年かかる階梯を、たった半日で駆け上がった瞬間だ。

「報酬金だ。とっておきな」

渡された革袋はずしりと重い。

中には金貨がジャラジャラと入っている。

code

コード

【クエスト達成報告】

討伐対象:変異グリフォン群体 + ロード

評価:S(単独殲滅)

獲得報酬:金貨50枚

ランク変動:E → B(3段階アップ)

「悪くない」

僕は金貨の重みを感じながら、ニヤリと笑った。

これで資金はできた。

次は「仲間」だ。

僕の復讐を手伝う、優秀な手駒を探すとしよう。

僕は熱狂するギルドの喧騒を背に、新たな「力」を求めて歩き出した。

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