11話:E級冒険者
王都から馬車を乗り継ぎ、数日。
僕がたどり着いたのは、国境沿いにある辺境都市『ボーデラ』。
ここは「忘却の地下遺跡」への最前線基地であり、腕に覚えのある荒くれ者たちが一攫千金を夢見て集まる場所だ。
「空気が悪いな」
街に入った瞬間、鉄と血、そして欲望の臭いが鼻をつく。
王都の洗練された雰囲気とは真逆だ。だが、今の僕にはこの殺伐とした空気の方が肌に合う。
僕は路地裏に入り、懐から『Aランク冒険者カード(特務)』と『銀竜の騎士章』を取り出した。
(これを使えば、VIP待遇だろうけど……)
乗る
「遺跡の力を手に入れる」という真の目的を果たすには、目立ちすぎる肩書きは邪魔になる。
ここからは、ただの一人の冒険者として動く方が都合がいい。
僕はアイテムボックスにそれらを放り込み、フードを目深に被ってギルドの扉を蹴り開けた。
◇
「新規登録だ」
カウンターで短く告げる。
受付の女性は、気だるげに僕を見下ろした。
「はぁ……また家出少年? ここは遊び場じゃないのよ。死ぬ前にママンのところに帰りなさい」
周囲の冒険者たちがニヤニヤと笑う。
辺境のギルドは実力主義。見た目が子供の僕は、格好の嘲笑の的だ。
「手続きを」
僕が無表情で硬貨を弾くと、受付嬢はため息交じりに用紙を出した。
「はいはい。じゃあ、まずは『Eランク』からね。最底辺よ。ドブさらいでも薬草採取でも、地道に頑張ることね」
渡されたのは、錆びついた鉄のプレート。
刻まれた文字は『E』。
ゴミ同然の扱いだ。
「おい、新入りィ!」
背後から肩を掴まれた。
振り返ると、歯の欠けたスキンヘッドの男が立っていた。
ランクは『C』。この辺りでは中堅といったところか。
「ここでのルールを教えてやる。先輩には敬語! 稼ぎの三割は上納! 分かったら靴を舐め――」
「……触るな」
僕は男の腕を払いもせず、ただ一瞥した。
ゾクリッ。
「ひっ……!?」
男が悲鳴を上げ、尻餅をついて後ずさる。
周囲がざわつく。
「なんだ? あいつ、転んだのか?」
「いや、今……空気が凍ったような……」
男は青ざめた顔で僕を指差し、口をパクパクさせている。
僕が放ったのは、騎士王から学習した『王の威圧』の、ほんの数パーセント。
それだけで、三流冒険者の心臓を握り潰すには十分だ。
「Eランクでいいよ。どうせ、すぐに上がる」
僕は錆びたプレートを受け取り、掲示板へと歩き出した。
そこに貼られている依頼書を、片っ端から剥がしていく。
「お、おい! Eランクが受けられるのは『薬草採取』だけだぞ!?」
「そんなもん、受けるわけないだろ」
僕が手に取ったのは、『Eランク推奨』の依頼ではない。
『緊急討伐:変異グリフォンの群れ』
『推奨ランク:C~B』
「おい馬鹿! それはパーティ必須の高難度依頼だ! ソロのEランクが行っていい場所じゃねえ!」
受付嬢が血相を変えて叫ぶが、僕は無視して出口へ向かう。
「ルールなんて知らない。結果を持ってくれば文句はないだろ?」
ギルドを出る瞬間、僕はニヤリと笑った。
(Eランクスタートか。悪くない)
王都での地位も楽しかったが、実力だけで底辺から一瞬で駆け上がるのも、また違った快感がありそうだ。
【現在のステータス】
名前:アレン
ランク:E(偽装中)
実力値:Sランク相当
状態:『舐められプレイ』開始
錆びたプレートを指で弾く。
これが「金」に変わるまで、そう時間はかからないはずだ。
まずは手始めに、この辺境の常識を書き換えに行くとしよう。




