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勇者の復讐  作者: 東井 タカヒロ
第一章 復讐の道のり
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プロローグ 平穏の崩壊

僕達は裕福とはいかなくても、それなりに楽しい生活をしていた。

朝起きて、畑を耕し、幼馴染のエマと笑い合い、夕暮れには家族と食卓を囲む。

ありふれた、けれど黄金のような日々。

「ねえ、アレン。明日も晴れるといいわね」

エマが花のような笑顔でそう言った時、僕は疑いもしなかった。

この光景が死ぬまで続いて、平和な日々を過ごすと、この時まで本気で思っていたんだ。

――世界は、一瞬で裏返る。

ガギィィィィンッ!!

脳内に響いたことのないノイズが走った瞬間、空が裂けた。

赤黒い亀裂から降り注いだのは、雨ではない。

「絶望」という名の、殺戮者たちだった。

「グギャアアアアッ!」

「ヒギッ、た、助け――」

悲鳴。

肉が裂ける音。

血の鉄錆びた臭い。

燃え盛る炎の熱さ。

現実は不条理で、残酷だ。

ついさっきまで「明日」を語っていた村が、今はただの屠殺場に変わっている。

「ア……レ、ン……」

足元を見る。

僕の腕の中には、エマがいた。

腹部からは、赤黒い何かがとめどなく溢れ出している。

その瞳から、急速に光が失われていく。

「いやだ、エマ。死ぬな、死なないでくれ!」

回復魔法? 使えない。

薬草? 燃えてしまった。

僕には何もない。

ただ、冷たくなっていく一番大切な人の体温を、指の隙間から零れ落ちる命を感じることしかできない。

最期に彼女は僕を案じ、事切れた。

「あ、ああ……アアアアアアッ!!」

歯を食いしばり、眼の前の光景を目に焼き付ける。

燃える家。食い殺される父と母。弄ばれる村の人々。

そして、それを見て嘲笑う、黒い翼を生やした魔族たち。

僕の心の中で、何かが音を立てて砕け散った。

同時に、どす黒く、熱い溶岩のような感情が噴き出した。

『条件達成。感情エネルギーが臨界点を突破しました』

『固有スキル《復讐者》が覚醒します』

脳内に響く無機質な声。

だが、そんなものはどうでもいい。

僕の手の中にある幼なじみの亡骸。

そして無惨に殺された家族。

僕は、魔族を許さない。

神が許しても、世界が許しても、僕だけは絶対に許さない。

「殺す……殺してやる……!」

これは魔族への復讐だ。

僕から家族や幼なじみを奪った事、地獄で後悔させてやる。

一匹残らず、根絶やしにしてやる。

『目標設定:魔族の根絶』

『ステータス:全リミッター解除』

炎の中で僕は立ち上がった。

かつての心優しい少年は死んだ。

ここにいるのは、復讐という名の燃料だけで動く、ただの「怪物」だ。

ここから、僕の――勇者の復讐が始まる。

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