みんなみんな
〈颱風の予報を嗤ふ秋の空 涙次〉
【ⅰ】
ところは故買屋Xの事務所。「さて、あんた云ふところの、* 俺の貯へも盡きた」-もぐら國王「なんだあんた、地獄耳なんだな」-故買屋「あんたがテオさんの計画通り、あんたの首に架かつた賞金の分け前、2500萬(圓)ゲットしたのはとつくに察知してるんだ。この上は、あんたにその分の埋め合はせ(?)をして貰はにや、ならない」-「その賞金も、俺は使ひ果たしてゐる」-「おいおい。相變はらずの浪費癖、だうにかならんのか」
* 当該シリーズ第113話參照。
【ⅱ】
*「つて云つたつて、こちとら引つ越しの代金が入り用だつたんだ。地下のアジトはだうしても必要だ」-「他人の地處の地下だろ? 地代は掛かるまい。また豪勢な『御殿』を造つたのは、分かつてるんだ」-「おいおい、仕事か内輪揉めか、どつちなんだ」-「分かつたよ。今の俺に必要なのは、あんたに一働きして貰ふ事だ」
* 当該シリーズ第77話參照。
【ⅲ】
で、仕事は流石國王で、きつちり恙無くカタを付けたのだが。彼には思ふところがあつた。
(確かに、俺の「宵越しのカネは持たねえ」式の丼勘定ぢや、躰が幾つあつても足りんな)國王、反省はしてみるのだが、反省なんて猿にでも出來る。その點カンさんは- 資金運用なんて云はずとも、きちんと帳尻を合はせて事務所の切り盛りをしてゐる。* 金尾がゐなくとも、それをやつてのけてゐる。一つ、秘訣を訊きに行つてみやうか。
* 当該シリーズ第115話參照。
※※※※
〈秋の雲戰地で見たる兵士にはたゞ腹減つたと思ひ一つよ 平手みき〉
【ⅳ】
アポなしで行つたので、カンテラ「方丈」に用があり、不在だつた。(さう云ふところがねえ、計画性がないつて云はれるのよ、國王さんは)-(あれ、その聲は- 君繪ちやん?)-(如何にも君繪よ。「相談室」で待つてるわ)
【ⅴ】
君繪は國王に、一つお説教を垂れてやる積もりでゐた。(國王さん、わたしもカンテラ一味メンバーとして、サラリー貰つてるつて知つてる?)-(その話、初めて聞いた)-(わたし貯蓄してるのよ。一部、株に回してるけど)-(へえ、大したもんだな。流石エスパー幼女だ)-(そのおカネ、自分の將來の為に使はうと思つてね)-(學資とかゝい?)-(さうよ。パパは將來わたしを官僚にしやうと思つてるのよ。日本を動かしてゐるのは、政治家ぢやなくつて官僚だわ)-(そいつはスケールのでかい話だ)
【ⅵ】
*(POMちやんつてゐるでしよ?)-(あゝ、哲平のところの鸚鵡の仔。三つ目でこれもエスパーらしいね)-(彼が云ふのよ。「僕がビッグになつたら、君繪さんを迎へに行く」つて)-(たゞの口から出任せぢやないのかい?)-(さうかも知れない。だけどわたしには分かる。彼は鸚鵡として初めての、ピンのお笑ひ藝人になる。然もそれで成功するわ)-(エスパーなりの勘で、分かるのかい?)-(さう。わたしその約束、言質に取つてるのよ)-(鸚鵡だぜ。人生の伴侶として、君繪ちやんは認めるの?)-(セックスしなくたつて、男女の仲つてのは成り立つわ。** テオちやんと市上さんが實証濟み)
* 当該シリーズ第124話參照。
** 当該シリーズ第94話參照。
【ⅶ】
これには國王、当惑してしまつた。自分と朱那の仲には、セックスの事を織り込み濟みだからだ。だが、これこそがカンテラ一家の「計画」、君繪なりの「計画性」だと云ふ事は、理解した。到底眞似出來んな。然し、あのまさに口から生まれたやうなPOMが、藝人目指してゐるなんて、キャラどんぴしやりで、痛快さゝへも覺えるぢやないか... 何故かしら、みんなみんな生きてゐるんだ友逹なんだ、と云ふ子供向けの唄が、眞實を示すものゝやうに思へた。
※※※※
〈秋日差し死に處探しの蛾の舞へり 涙次〉
【ⅷ】
「-と云ふ譯なんだ」。再び故買屋事務所。故買屋「ふーん、ま、一つの所謂『眞理』だな。鸚鵡眞理教? 莫迦な」彼は自分で云つたブラックジョークに、自分で嗤つた。
計画性と云へた義理がない、私・永田だが(私はどちらかと云へば「國王」派だ)、一應これを書いて置く。カンテラ、決して行き当たりばつたりで生きてゐる譯ぢやない、その証拠として。お仕舞ひ。




