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8話「弔いの湖」

 天使が群れをなしている。


 遠くから見た光景は白い鷺や白鳥やらアヒルやらが湖の畔でトリの群れが休息するために止まっているように見えるが、あれらが魚か虫や水草を食べているのではなく、人を、人の亡骸を啄んでいる。


 この湖は名も知らぬ身寄りのない者を弔う場所として、こうして天使に食べさせている。食べさせることで亡き者を天に連れていってもらうという考えだそうだ。

 湖の畔の遺体の側には大事に花や線香やお供え物を置かれているが、天使達は、そんなものはお構い無しに遺体を食い散らかしている。食い散らかした体の欠片が供え物の花の赤い色と似ているからか、赤いバラの花びらのようだった。だが、これのどこが天に連れていってもらえると思えるのかが私には到底理解出来ない。


 ざっと見て、トリは20匹ぐらいはいる。

 面倒だな、さてどうするものか。


 私があの生臭坊主に看護された教会から歩いて森を抜け、ここの湖に出た。

 湖の名は弔いの湖という。

 私からすれば弔っているようには見えない。何度でも言う。規模の小さい湖で中央の方に小島が点々と3つある。一つは木や草花が生えている島で、もう二つは岩肌の島、湖の畔は砂浜の陸地と島の向こう側の岸は険しい崖になっている。空は曇りで湖の色はどんよりとした曇の色で水面から今にも霧が発生してもおかしくない景色だ。

 以前、私は白薔薇隊であれらを駆除する仕事をしたが酷かった。現場が食い散らかした遺体の欠片と臭いがまだまだ記憶に新しい。あの生臭坊主のいる教会の近くに集落があり、そこの住民の一人が天使に襲われ、その住民が両目を失明した被害があった。被害を食い止めるために奴らを駆除をした。

 駆除の最中に「天使を殺すとは罰当たりな」と信者達が暴徒と化し、部隊の仲間の一人が防衛で信者三人を(あや)めた。一般の人には手を出すなという命令があるがそのまま殺される訳にはいけなかった。

 (あや)めた事がきっかけで沈静化したのが何とも言えなかった。私達が命令とはいえ一般の人に手を出さないと鷹をくくったのだろう。

 それで何を思ったのか、同胞の一人のそいつは、この仕事が終わった後に行方を眩ました。行方を眩ました仲間をヴィクトリア隊長は気にかけていたが気のせいだろう。あの姉にそんな物は持ち合わせていない。


 私は辺り一面を見渡し、また弔いの畔に目を向ける。

 トリは相変わらず遺体を貪り食べている。辺りには食い散らかした肉片が赤い花びらのように散らばっている。私はもう少しきれいに食べられないのかと思ったがすぐに頭から追い出した。やはり私はここが好かない。剣を固く握った。


 黄金色(こがねいろ)になって枯れたガマや(あし)が水に刺さるように群生している。その黄金色(こがねいろ)の草の隙間から白い鳥ような物があちらこちらに小さい点を描くように覗いた。

 やはり多い。一人で相手にできるような数ではない。相手にしない方がいい。静かにこの湖から離れる事にした。トリのいる方向とは真逆に迂回をした。来たことがあるので道がどこに繋がっているのかはわかる。


 しばらく道なりに行くと白いトリの羽が草むらに散らばっていた。運が悪いな。ここもか。

 こいつらの死骸があると仲間思いなのか、臭いにつられてなのか、すぐ集まる。別の道に行きたいが拠点に戻れるこの湖周辺の道はこの迂回の道しかない。ミザリコードの引き金を軽く押し当てながら歩いた。

 散らばった羽を辿ると元の羽の持ち主の死骸があった。白鳥や鷺ぐらいの大きさだ。珍しい事にこの死骸の周りには他の仲間がいなかった。ただ変わっている事はこの天使の死骸の腹が人為的に刃物で切り裂いたような裂け方をしていた。

 斬り方がきれいだ。手慣れている。仲間か他の同業かと考えを巡らせた。こいつの死骸の傷口を観察した。傷口の肉に混ぜ返したような痕跡があった。何のために?

 次にトリの目を確認した。目がない。

 天使には階級があり、目がないものは一番下の階級らしく一番数が多い。他の生命とこいつらが違うのは腐らないことだ。腐らないものは只者ではない。


 片足でトリの死骸の頭を軽く蹴った。ぴくりとも動かない。よし、大丈夫だ。

 もう一度来た道を振り返った。仲間が死んでるのも知らずに人の遺体を相変わらずトリは食い散らかしていた。そのトリの死骸を横目に静かに私は通りすぎた。

 気になることはこいつを斬り殺した奴の顔がみたいと思った。気が合いそうだ。

 私はまた剣を固く握った。

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