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4話「ジェーン・ドゥの祭壇」

 祭壇は生け贄を力にする。


 祭壇は器のようなものだ。だが生け贄を生かすのも祭壇である。

 この国の神々がいなくなったのだから、祭壇が生け贄を肉と血にしなければならない。そういう理なのである。この鏡の国では。生け贄は名も知られない者が、祭壇と契りを交わす。


 ジェーン・ドゥは生け贄で。

 私は祭壇で。


 泉の前にして、泉に写る自分を確認をした。これは酷い、返り血だらけだと。

 短く束ねた淡い色の金髪は血で赤褐色の場所があり、固まっている。肌も血が伝って通った道ができ、それに病人みたいな青白い肌と目の下の隈と鋭い目付きで赤い瞳が強調される。

 ジェーンからは生まれつきの私の目を石榴石みたいでキレイだとよく誉めてくれたなと手元に抱えた彼女の一部を見て思い出した。だが、今の私には自分が化け物に見えた。

 兵士服は一番下にワインレッドのシャツ、シャツの上には白の革製の胸当てに、ダークブラウン系の布のズボンに革製のロングブーツに銀の丸い形のした膝宛。

 更に特徴的な物は右腕の赤地に白い薔薇の腕章と服と同じ色の外套。腰には、剣や武器やら納める鞘とベルトをつけているが、もうひとつ鍵が外れた白い革製の貞操帯を履いている。白の胸当てとマントはどうしても汚れるが、それ以外は色が全体的に暗く、汚れが目立ちにくいのが幸いした。血で固まって束になった髪の毛を軽く引っ張った。


 陣笠を被ってくれば良かったか。


 禊をするために着けている装備を外し、服を脱いで泉の水で髪を洗った。血生臭さは取れないが不快感がいくらか解消された。続けて体も泉に浸かる。自分の腹には戦いで出来た傷痕がいくつもあり、触ると傷痕の凹みと盛り上がる手のひらでの感覚の不快感は消えない。


 私は祭壇。


 腹の傷痕を触り、ジェーンの心臓を手に持ち、眺める。


「ジェーン・ドゥの心臓を取れ。命令だ。彼女は供物者だ」


 ヴィクトリア隊長が私にそう命令をした。本当にこれで良かったのだろうか。いや、これで良かった。仕事だ。


「…………」


 服と一緒に置いてあるミゼリコードが視界に入った。置いてある岸辺に近づき、泉から出ないでそのまま剣を取った。刃は月明かりを反射する。


 いざというときは、同胞に殺してもらえればいいか。


 胸に剣をあてる。生き物や人、天使を幾度も切ったが自分となると躊躇をしてしまう。


 慣れろ。


 思いきって、胸を縦に切り裂いた。切り裂いた胸の中はあるはずの物が無く空洞になっている。自分でもわかる。


「うっ、ぐぅっ……」


 呻きながら、ジェーンの心臓を自分の中にいれるため、胸の穴に心臓ごと手を突っ込み、入れたあとは自分の血で汚れた手と泉が赤く染まった。剣に仕込まれている薬のお陰でか、楽に出来た。


「はぁ……はぁ……!」


 目を瞑り、自分で空けた穴と傷痕を触る。傷口を触ると湿ってくっついた後、空気を含んだ開く音が少しした。


 痛い。

 

 これでしばらくは天使からの強奪には抵抗しやすくなるだろう。

 急に片膝がよろめいたので、泉から出た。地面に片膝をつきながら、目を瞑る。


 剣の薬が効いてきたか。


 血で汚れた服と剣を抱き抱えたまま、私はその場で横になった。


 もし天使が来たら、寝てでも叩き切ってやる。

 渡さない。

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