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20話「祝詞」

 祝詞。

 

 弔いの湖付近の教会は今日も香を焚き、祭壇に花や香をそえ、何なら他の人が持ってきた採れたての野菜や果物を供えたりと祭壇はにぎやかだ。快晴で陽の光がステンドグラスからよく射し込んでいる。 私も供え物をしにこの生臭僧侶、元白薔薇隊の兵士のいるこの教会にやってきた。


 持ってきたのは、はちみつの甘いお酒に、白い百合の花と白い薔薇に、剣を。これを供えに来た。

 さて、あいつはいるかと探したら、すぐに見つかった。祭壇の前で礼拝しに来た人達を誘導し案内をしている。黒い僧侶服はいつもなのか、はたまたそれしかないのか。毎日、顔が蝋に覆われて顔を見せない無愛想な女神像の祭壇の前に案内しているのが、何となく皮肉に思えてくる。私は祭壇へ足早と歩いた。


 剣を持っているせいか、仰々しく見られ、他の人達の視線を集めているのが私にほかの人たちの視線が刺さる。あの僧侶もこちらの姿を見たときには釘付けになり固まっていた。

 無理もない。動揺はするだろう。私、ジナヴラは銀色のフクロウの仮面を着けて、ここにやって来た。

私は祭壇に着き、剣を先に供え、つぎに白い百合と白い薔薇を供え、最後は甘い蜂蜜のお酒だ。


 瓶からあけないと女神も飲めないだろう。いや、顔が蝋で覆われているから元より飲めないか。

 私は元白薔薇隊ビルギットと言う僧侶に話をかけた。ビルギットの表情が険しくなっている。


「お酒を供えたいのだが、器か杯はあるかな?」

 と要望を言いながら、辺りを見渡した。

「こちらになります」

「どうも」


 ビルギットは私に真鍮の杯を渡し、私は祭壇に置いて、(さかずき)に甘い蜂蜜のお酒を注ぎながら祝詞を呟く。

 

「女神の涙に見立てた神酒を杯に満たしては祭壇に」

「泣き止まぬ女神の首を斬った花の女神の代わりとなる薔薇と百合を祭壇に飾る」

「飢えた愛しい人逹へ甘い眼を与えすぎた女神の眼球を真珠に見立て飾る」


 杯は甘い蜂蜜のお酒で満たされた。私は祝詞を続けた。


「愛は目には見えないので生け贄の心臓を祭壇に捧げる」

 

 私は祝詞を淡々と呟き終わり、そして銀のフクロウの仮面を外す。

 

「調子はどう?」

 私は何気なしに訪ねた。

「あなたこそ」

 ビルギットはどこか嬉しそうな上ずった声を出した。が、私の慣れ親しんだいつもの彼女に戻った。

「心がなくて良かった、と言ってたじゃないですか」

 いつものビルギットが私の目の前にいた。

「心がなくても、人でありたいから掟を守るものだ」

 

 私は仮面をつけ、祭壇から背を向けて歩く。

 白薔薇隊の掟、人死を弔う事。

 私はどうもこの祝詞が好きじゃないようだ。教会の窓から入ってきた風が強く私の背中を押した。



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