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18話「セージとエリカ」

 羽衣に包まれ、心の臓は高鳴る。剣は鋭く。

 

 本当に格好がつかない。護衛してやるとか言っといて、このザマだ。大広間一辺、セージがエリカに接触した瞬間、強い光が発した。

 眩しさのあまり一瞬目を瞑ったが腕で光を遮りながら、目を細めて様子を見た。しっかりと。

 セージとエリカが光っている間に起きたことがあった。

 銀のフクロウがセージをミゼリコードで胸部を刺していた。刺した時に光をセージとエリカからの発した光は消えたのだ。その時に。だが、銀のフクロウが刺したセージとエリカの姿は変わり果てていた。刺したのはもうセージではなくなった物だった。

 セージとエリカがくっつき、上半身から下は混ざり、樹のようになっているのだ。体中、羽毛や翼がいくつも生え、二人の脚だったものは鳥の足の独特な肌でさらにいくつも重なって生え、長年生きてきた樹のようになって太く固まっている。この世の物とは思えなかった。 そのくらい、変形が激しかった。

 ただ、セージとエリカの顔だけは安らかに眠っている顔だけ、上半身が残っている。

 それを銀のフクロウがセージの上半身だけを自らの剣で刺していた。 銀のフクロウ、ヴィクトリアは血の花びらを浴びている。

 

「セージ、私は甘かった」

 

 仮面の下のくぐもった声はどこか冷たくも優しかった。

 私は押さえていたビルギットの方を見ると、彼女は祈るようにひたすら「エリカ」と呟き続けている。

 私はフクロウの仮面を被っているヴィクトリアに声をかけ叫んだ。

 

「姉貴! どういう事だ!!」私は声を荒げた。

 

 今にも姉の顔面の片方を殴りたいのを我慢している。

 

「ジナヴラ、お前はここにいるべきでない!」

「ビルギット、お前もだ!」

 姉は冷たく返してきた。

「答えになっていない!! 何だよ! これは!!」

 私は剣でヴィクトリアの手前にある物を指した。

「こいつか? 目をくり抜かれた供物者の末路だ」

 ヴィクトリアはビルギットの方から私の方まで視線を移す。そしてセージとエリカの天使の樹に視線を向けた。

 ヴィクトリアはまた繰り返す。

「私が甘かった」

「私がセージとエリカを処する」

「ジナヴラ、ビルギット、お前達は退け」

 仮面の下の声は震えてはいなかった。


 私にも姉のヴィクトリアに用がある。退くわけにはいけない。この状況下は酷だが丁度いい時に目の前にいる。言うことはもう聞かない。

 

 返せ。ジェーンの心臓を!

 

 私はビルギットを押さえつけるのを止め、立ち上がり剣を強く握った。その時、剣についているシリンダーの中の液剤の残量を確認した。未だ少しだけ残っている。ニ、三回斬りつけたら終わりだろう。だとしたら後ニ本。

 

「退けだと?」

「私は先程ビルギットとエリカを護衛してやると言った。そしたらこうだ。格好がつかなかった」

「それで退いたら、もっと格好がつかなくなるじゃないか。ヴィクトリア姉様よ」

 皮肉混じりにこう呼んでやった。

「一生、格好がつかなくなるのならな」

 フクロウの仮面は呟いた。


 一方、ビルギットは相変わらず「エリカ」と繰り返し呟いていたので、私はうんざりして、ビルギットの片方の右の頬を殴った。鈍い音がし、ビルギットは同胞の遺体の山の方へ飛んだ。ビルギットは右の頬を抑えながら立ち上がった。そして刀を持ち、こちらをあの時の鋭い目で睨みつけてきた。

 だが、その目には涙を溜めていた。

 ヴィクトリアの方を見ると後方に姿が変わり果てたエリカとセージの天使の樹から距離を取っていた。私がビルギットに殴っている間にいつの間にか樹が大きく広がっていた。

 私とビルギットが少しの間の見ないうちに樹は成長し、広がっていく。広がり方が早いので遠くへ距離を取った。

 エリカとセージの安らかな顔はそのままに樹の部分がどんどん大きくなっていく。枝には翼と羽がいくつも着き生い茂り。その枝の先には花の蕾がついた。色は白っぽく、薄い肉色をしていて、春先に咲く木の花を連想させる。

 私とビルギットは慎重に観察を続けた。翼の枝の蕾を見ると開花した。花が咲いた。開花した花の形は百合の花のようだ。開花したその時、花から青白い光を発し、矢の形状になった。


「破魔の矢だ!」

 私は見て焦りで叫んだ。


 一番初めの開花の破魔の矢は私とビルギットを狙って放ってきた。私は左側へ、ビルギットは右側に間一髪で回避した。ビルギットの黒服の袖が少し焦げた後を残した。破魔の矢はセージが眠っていた月明かりの瓦礫の山に当たり、焦げた跡と砂埃を残した。

 エリカとセージの樹は蕾と花を次から次へとつけ、破魔の矢を放つ。

 私とビルギットとヴィクトリアは回避するため、走る。

 こんな物がこのままにしていれば、私達どころか、他の人達にも被害が及ぶ。この忌々しい天使の樹が成長し続けるのなら、この地域に危険が及ぶ。私の勘がそう叫んでいる。

 私とビルギットは一緒に時計周りに走り、私は剣をビルギットは刀を、構え、いつでも破魔の矢をかわすために。

 頭上から羽と赤い花びらが降ってきた。上を見るとヴィクトリアが天使の樹の上に登っていた。登った位置が丁度セージの近くの枝にいた。そこの枝についてる花と翼が無くなっていた。

 ヴィクトリアはセージ目掛けて、枝の上を駆け寄りセージを上半身ごと斬った。切り口からは赤い花びらと透明な水が流れ出た。ヴィクトリアは斬ったセージの上半身を片手で持ち、さらにセージの胸に切り裂き、手を突っ込んだ。丁度、心臓当たりに。

 

「セージの心臓が無い!」

 ヴィクトリアが叫んだ。

 

 叫んだ瞬間、他の花が開花し、破魔の矢がヴィクトリア目掛けて放たれた。ヴィクトリアは破魔の矢を回避するために花がついている枝に飛び乗り、花と翼を剣で刈った。白い花びらと羽が散る。刈った花はヴィクトリアに目掛けて破魔の矢を放った花だった。ヴィクトリアはまた花を刈り始めた。

 

「心臓は!? セージの心臓はどこだ!?」

ヴィクトリアは叫ぶ。


 ヴィクトリアが叫んでる合間にいつの間にかビルギットも天使の樹の上にいた。丁度エリカの近くの枝に飛び乗っていた。

 だが、ヴィクトリアとは違い、目に涙を溜め刀が震えていたことだった。戸惑いがある。ビルギットはエリカだった物の胸を縦に斬った。ビルギットが意を決した所に供物者であるエリカの心臓を取ろうとした瞬間、ビルギットの後ろの枝に突如蕾がつき花が開花し、青白い光を発した。 ビルギットはそれに気がついていない。

 私は体が咄嗟に動き、ビルギットの後ろの花の方へ飛び乗り、ビルギットを樹から突き落とした。ビルギットは背中から落ちた。

 私は枝が垂れるのを利用し下に避けた。そして、私はエリカの元に行き、ビルギットがつけたエリカの胸の傷に手を突っ込んだ。私は片手でシリンダーを回し、ミゼリコードの刃を慈悲の雫で潤した。残り1本。

 片手でエリカの心臓を探る。生々しい感触が未だ慣れない。


 何処だ? 何処にある?


 片手で探っているうちに、私はエリカだった物の体の内部から片手に強く引っ張られたので抵抗した。力強く。それも虚しく、私はエリカの中に引きずられていってしまった。


「ジナヴラ!!」

  二人の叫び声が聞こえた。が、もう遅い。

 

 言ったとおりに退く事は出来ない。もう終わりだと。天使の樹の中に私は完全に飲み込まれてしまった。

 エリカの体を切る前に少しだけ顔を見たが本当に安らかな顔だった。直に私もそうなるのだとしたら、らしくない。退けぬのなら、前に進むしかない。


 何処だ? エリカの心臓はどこにある?

 

(叩き斬ってやるから待ってろ!)

 私は今の状態に腹を立てていた。


 天使の樹の中は水のようなもので満たされていて、内側は肉が植物の繊維質のように縦に並んでいて、さらに中心にはいくつ物の管が無数に並んでいた。おそらく枝や翼や花に繋がるものだろう。

 私はエリカとセージの心臓を探すために目の前にある幾つものの管を剣で斬って進んで泳いだ。斬った管からは泡が出てきていて、視界の邪魔になっている。だが、斬らないと前に進めない。


(眠くなってきた。目が霞んでくる!)

 急がねばならないと必死に手探りで探し斬って行く。


 私はこの天使の樹の中の水は、このミゼリコードの慈悲の雫(液剤)と同じ効果のある水だと判断した。

 急がねば息が続かなくなるか、眠るかのどっちかでしか無い。こんな目に合ってたまるかと。

 

(何処だ!)


 私は無我夢中に剣を持っていない方の手で探す。すると、管とは違う感触の物に触れた。

 私は触れた物にミザリコードで突き刺した。

 その時、白い光に包まれ、私は眩しさのあまりに目を瞑ってしまった。まだ目を瞑る訳にはいけない。目を細め、腕で光を遮り見る。

 その時見たものは自分がミゼリコードで突き刺したエリカの心臓と目の前にジェーンがいた。

 ジェーンは微笑みながら、光と共に飲み込まれて泡のように消えていった。この水が見せる幻覚なのかはわかっている。

 私は瞼を閉じてしまった。

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