ep.1 憧れた世界
ども、veilです。
この作品の世界観は「シ〇ングリ〇フロン〇ィア」と「メイ〇イン〇ビス」を思い浮かべるとわかりやすいと思う。
一応伏字にしたけど怒られるかな…。
まぁ今は気にせず楽しんでいってくださいな!
…
……
………___システム起動。「Yggdrasil/」を開始します。___
…目の前が真っ白く光っている、かと思えばすぐに色彩豊かな中世の様な街並みが目の前に現れた。
周りにはファンタジーの様な甲冑や布・革製の服を着た人々で溢れていたが、現代チックな服装をした人もかなり居る。
今は西暦2045年、しかしここはゲームの世界だ。周りを見渡せばそこには様々な時代・世界の恰好をした人がいるし、聞こえる言語も多種多様だ。
このゲームでは「探索」「収集」「製造」「戦闘」が主な要素で、最初は先輩プレイヤーからチュートリアルに付き合ってもらい、ある程度の知識とアイテムを受け取ってようやく本格的にゲームスタートなのだが…。
「あれ…スットンどこだ?これ…」
なんてこった、これからチュートリアルをしてくれるはずのスットン(プレイヤーネーム「ストロング」)が居ない…取り合えず入ったらそこ居ろって言ったのアイツなんだが…。
まぁ一応連絡してみれば問題ねぇか、えーとメールメール…え、もう既読ついた。
メール(ストロング「わりぃ!ちょっっっと外せねぇ用事出来たから先やっててくれ!代わりの奴行かせたからそいつに話聞いてな!ほんじゃ!」)
何言ってんだコイツ。どう思う?言い出しっぺの既存プレイヤーが初心者ほっぽり出して他の用事に行くの、やべぇだろマジで。
しかし文句を言っても始まらない。取り敢えずは”代役”を待つとしよう…。
??「アンタ初心者か?」
お?さっそく来たか!意外と早かったなぁ…
「そうです、えっともしかしてスットン…ストロングの代役さんですか?」
??「いやちげぇな、ンな奴知らねぇし。」
「…?えっとじゃあどちら様…?」
一般通過おじさん「まァただの一般通過おじさんだ、別名チュートリアルおじさんとも言う」
知らない人に絡まれた。素朴な革の服を着ていて、グローブや登山靴など機能的な装備をしていた。背中にはドデカいバックを背負っており、腰にはツルハシやスコップがぶら下がっている。ちなみにハゲだ。
どうやら人違いだったようだ。でも初狩りとかじゃ無さそうで良かった!一瞬不穏だったからな…。
「なるほどチュートリアルの方でしたか!あでもすみません…先約が居るもので…」
一般通過おじさん「みてぇだな、しかし俺はお節介焼きなんだ。というかお節介焼く為に生きているようなもの、よって君にこれをやる。」
そうして渡されたのは明らかに過剰な量の通貨・初期探索セット・「黒キ彗星」の紹介小切手・謎にハイレアなツルハシだった。
「…は?は!?いやいや何ですかこの物資量!?」
一般通過おじさん「いやなに、そろそろ転生(※今のアカウントを捨てて別のアカウントを作って戻ってくる事)するんだが、別アカウントへの所持品引継ぎは出来ない仕様なんだ。生まれ変わるついでに「伝説」の新米プレイヤーを誕生させたくなった…それだけだ。」
「えぇ…(ドン引き)」
ゲームとはいえ伝説とかなんとかって拗らせすぎだろこのおっさん…こんなのどうしろってんだ…
一般通過おじさん「通貨と装備は先約に任せるとして…まず「黒キ彗星」の紹介小切手だが、強くなりたいのであれば直接「黒キ彗星」へ会いに行き、「風銀」からの紹介だと言え。このツルハシは…まぁ詳細は「黒キ彗星」に聞け。こっちの先端で打つと普通に、だが効率よく鉱石などを掘れる、効率強化の魔法が付与されている。こっちの先端は主に戦闘向けだ、打つと爆発する、使用者に反動ダメージは無いが他の者にとってはこの上ない脅威になる。ちなみに「黒キ彗星」についt…」
おじさんがマシンガントークを始めたその時、おじさんの背後からまた別の人がおじさんに話しかけた。
??「ねぇ…何やってんの父さん?」
一般通過おじさん「…それではな若き伝説よ、来世でまた会おう。」
??「ちょっと!」
突然饒舌になり解説を始めるおじさん…を話しかけただけで逃走させた少女は、おじさんを追いかけることなくこちらへ向き直った。
??「あんた、もしかしてストロングの…?」
少女は俺をじっと見つめている。睨んでいるわけでは無い様だが、まるで獲物を定める鷹のように鋭い目だった。
「そうです!あの…ストロングさんの代役の方ですよね?」
俺がそう尋ねると、少女はふっと表情を和らげた。
白風「うん、そう。はじめまして。私は白風。」
白風と名乗る少女は、俺より少し背が低く、つややかな黒髪をポニーテールにまとめている。ザ・登山家って感じの服を着ており、足元はごつごつとした登山靴。シンプルながらも機能的な服装が、彼女がベテランプレイヤーであることを物語っていた…もしや、今日の俺は猛者プレイヤーにしか会えないのかな?
「あ、はじめまして。俺はオーゼスです。」
自己紹介を済ませると、白風は俺の手元にある大量のアイテムに目を留めた。
白風「…って、何これ!?あんた、もうチュートリアル済ませたの?」
「いえ、まだなんです…!さっきのおじさんが勝手にくれて…。」
白風は信じられないものを見るかのように目を丸くした。
白風「まさか…風銀のおっさん…?!」
「風銀…?」
白風「あの人、このゲームの世界じゃ結構有名なプレイヤーなの。特に収集と製造分野では右に出る者がいないって言われてる。その人が、あんたみたいな初心者にこんな大量のアイテムを渡すのは…珍しくはないけど、大切って言ってたツルハシまで渡すなんて…!」
白風はツルハシを手に取り、まじまじと見つめる。
白風「すごい…これ、マジモンだ。噂の「神々の戦」時代の産物。「赤月龍」の鱗を使って作ったっていう、伝説のツルハシ…。」
俺はただただ呆然としていた。さっきのおじさんが言っていた「来世」だの「伝説」だのは、単なる比喩じゃなかったのか…。てか「神々の戦」ってなんだ…。
「あの、白風さんは「黒キ彗星」って知ってますか?」
俺が尋ねると、白風はピクッと肩を震わせた。
白風「…なんでその名前を?」
「さっきのおじさんから、紹介状を貰ったんです。強くなりたいから会いに行けって…。」
白風は一瞬言葉を失った後、深いため息をついた。
白風「…あのバカ親父、また余計なことして…。」
「バカ親父…?」
白風「うん。さっきのおじさんは私の父親。プレイヤーネームが「風銀」。で、「黒キ彗星」はうちの探窟隊の元リーダーだった人。今はもう引退…というか独立しちゃったけど、伝説級のプレイヤーだったって、親父から聞かされてる。ランクは確か…いや確かというか最高位の上の特設ランク「ブラックダイヤモンド」。あと、さっきのツルハシを作ったのも「黒キ彗星」で、原材料の厄災級モンスター「赤月龍」を討伐したのもその人とさっき居た私の父親「風銀」がリーダーやってた探窟隊なんだって。」
「ええっ!?」
あまりの事実に、俺は言葉を失った。あの変なおじさんが、伝説級のプレイヤーで、しかも「黒キ彗星」の知り合いだったなんて。それに、その娘がチュートリアルの代役だなんて…世界は狭い。いや、ゲームの世界は狭い…?てか、スットンはなんでそんな人達と繋がってんの!?
白風「いやもう、ホントごめんね。うちの父親が勝手なことして…」
「いやいや!お気になさらず…でもこのツルハシ、本当に貰っちゃっていいんですか?」
白風「うん。貰っといて。あいつが一度あげたものは、絶対に取り返さないから。それに、あんたが強くなるきっかけになれば、父も本望だろうし。」
白風はそう言って、俺の背中をポンと叩いた。
白風「さ!気を取り直して…チュートリアル、始めよっか!まずは基本の『探索』から。このゲームでは、とにかく歩いて、見て、触ることが大事なの。あ、それと、もう敬語はしなくて良いよ、ストロング君の話だと私達同い年らしいし。」
白風はそう言いながら、俺を広場から少し離れた森へと案内する。
「…で、このゲームのチュートリアルって、具体的に何をするんですか?」
白風「んー、そうね…まずは簡単なクエストを一緒にこなしていこうか。最初は『薬草収集』。この森には色々な薬草が生えているから、それを集めてきて。場所は…」
白風がそう言って指差した先には、木々の間にひっそりと隠れるようにして、いくつかの薬草が群生していた。
「あ、あの薬草ですか?」
白風「うん。そう。…あれ、なんか色が変だな…。」
白風が首を傾げた、その時だった。
??「あら? もしかして、その薬草を探しているのですか?」
木々の間から、ゆったりとした足取りで一人の少女が姿を現した。夜闇のような漆黒のローブを身に纏い、腰に短剣を携えている。その顔はフードで隠されているが、どこかおっとりとした声が聞こえてきた。
白風「…どちら様ですか?」
白風が警戒するように弓を構えるが、謎の少女は気にせずのんびりとした口調で答えた。
??「ああ、ごめんなさい。わたくしはただの通りすがりの者ですわ。ただ、この薬草がとても珍しいものに見えまして…もしよろしければ、この薬草を譲っていただきたいのですが。」
白風「いや、それは私たちの…」
白風が言いかけたところで、謎の少女は俺に視線を向けた。
??「あの、そちらにいらっしゃる初心者さん。そのツルハシ、とっても素敵な色をしていますわね。ちょっと見せてもらっても?」
挑発的というよりは、純粋な好奇心に満ちた声だった。俺は戸惑いながらも、ツルハシを構える。
「…すみませんが、大事なチュートリアル中でして…これは譲れませんねぇ。」
俺がそう答えると、女性は少し残念そうに、しかしすぐに楽しそうに言った。
??「そうですか。では、少しだけ…遊んでくれませんか?」
女性は短剣を抜き、俺に斬りかかってきた。その動きは滑らかで、まるで呼吸をするように自然だった。俺は咄嗟にツルハシを振るって防御する。少女は互いの獲物が当たる寸前で軌道を変えて軽やかに避けた。
白風「オーゼス、危ない!」
白風が俺を庇うように矢を放つが、少女はそれをひらりとかわし、再び俺の懐に潜り込もうとする。
「…やるしかねぇな!」
俺はツルハシの戦闘向けの部分で少女を打ち据えようと振りかぶる。武器のその瞬間、ツルハシが爆発的な閃光を放ち、女性はゆっくりと吹き飛ばされた。
??「あら、まあ…!すごい威力ですわね。わたくし、ちょっとびっくりしてしまいました。」
吹き飛ばされ、よろめきながらも少女は楽しそうに笑った。
??「どうやら、わたくしにはまだそのツルハシを扱うのは難しいようですわ。今日はこの辺で失礼しますね。」
少女はそう言い残すと、木々の間にふわりと消えていった。その場に残されたのは、俺と白風、そして穏やかな静寂だけだった。
白風「…オーゼス、大丈夫?」
白風が心配そうに駆け寄ってくる。俺は頷き、ツルハシを見つめた。
「…このツルハシ、本当にすごいな…」
白風「でしょ?でも…あの子、たしか『夜桜』…だったかな…?この辺りで有名な盗賊なんだけど…強いのにずっとこの町にいるらしいんだよね。」
俺は嫌な予感を覚えた。
俺の新人プレイヤー生活は、伝説のツルハシと、奇妙な出会いに満ちた日々となったのだろう。
変な色の薬草「…あれ?俺は?」




