もう一つの-γ
「例え、を見せよう」
ノーレはナギサを見据える。
「君は気がついてないが、まだ稼働する部分がある。
腕がある、脚がある、頭がある。
しかし、普段は収納されている。
それを出そうとしてみてほしい」
「本当にそんな物があるのか?」
「もちろん、私は嘘はつけない」
「しかしやり方が全く思いつかない。
どうすればいい」
「腕でやってみよう、両手をしっかり結び、その状態のまま私の手を取ろうとしてみてくれ。
自信がないなら、目を瞑ったっていい」
ナギサは目を瞑る。
そして、思い浮かべる、もう一つの手。
そういえば、人工尻尾を初めて使ったときもこんなことをした気がする。
あれはまさしくもう一つの手だったような。
「予想とは違うが、興味深い結果を得れた。
もう目を空けてよい」
ナギサが目を開けると、いつの間にか自分の尾骨から人工尻尾が伸びていた。
「なるほど、君には既に3本目の腕を使った経験があったのだろう」
装備しているはずのない尻尾はナギサの思い通りに動く。
「見ただろう、彼から「生える」さまを」
「ま、まあ⋯」
「なんか変幻魔物に近い動きでしたね」
ノーレが言う。
「君はなんでもないし、なんでもある。
なろうと思えば何にでもなれるし、やろうと思えばいかなる姿にもなれる。
変幻魔物のそれとの違いは、確かな機能まで引き継ぐことだ。
エイドロスに近いが、明確に自意識を持つ点でエイドロスと異なる」
「つまり?」
「君は船にだって悪魔にだって、神にだってなれる。立場や実績はついてこないが、能力と容姿は完璧に模倣できる。
君は人の姿を模倣している、なんでもあるなにかである」
「あー、つまるところナギサ殿はシェイプシフターということでよいか?」
「この世界にある分類ではそれ以上は不可能だ」
「納得してくれたようだし⋯
ナギサ殿はシェイプシフター⋯
ん?ならば魔物?というか本来の姿は?」
「魔物ではない、彼は外星から来た生物故、魔物の定義、魔王の産物またはその子孫というものに反する。
しかし性質はまさしくシェイプシフター。
彼は真の姿などない、彼は状態が変化し続けるのみでこれが彼である」




