皇帝の御前‐γ
「そうか⋯いやいい、これがエイドロスの力⋯」
アストロレクスは右足を破壊されて苦しんでいた。
偶然にせよ、大広間から物理的に距離のある自分の部屋まで貫通する攻撃手段を持つのだ。
それも、対魔法の加工を施された壁面を次々貫いて。
しかしなぜ攻撃を受けたのか、それは分からない。
あまりの痛みに動けない、なぜか治癒が始まらない。
そのまましばらくしていると、訪問者が現れる。
「ナギサ殿か、見ての通り今は万全とは言えない状態だが⋯いいだろう、何の用件かな」
『お前はここで終わらせる』
「⋯すまないが、我々にも通じる言葉で喋ってくれないかな?」
*ナギサさんはオハナシしたいんだって*
「ほう、きみが通訳なのか」
*うん*
「じゃあ伝えてくれ、エイドロスは⋯どうなっている?」
『ミライ様を模倣したあれは消えた』
*きえちゃったって*
「そんな⋯!
し、しかし何かは残ったはずだろう!?」
『お前に渡すものはない』
*なにも、だって*
「⋯そうか⋯」
アストロレクスは玉座に座り直す。
「戦闘になってしまったのだろう、それは謝罪する。
本来であれば貴殿がエイドロスに接触してすぐ、他の者が貴殿を遠ざけ、エイドロスを回収する手筈だったのだ」
『回収だって?』
<ナギサさん落ち着いて、まだ聞かなきゃいけないことがいろいろありますから>
「貴殿のような異邦人の憧れる存在がいれば、我々の力になるはずだったのだが⋯」
*それで、なにをするつもりだったの*
「ヴァルアキア人の夢を叶えるのさ」
両手を広げて、
「世界征服さ、世界は我々を差別し排斥する異民族どもに溢れている。
不平等じゃないか、だから我々は復讐し、すべての民族と人種に平等をもたらすのさ⋯万人が、万人に対して争い合う、自然の摂理に従った世界を」
*それだけ?*
「ああそれだけさ、エイドロスをいただく対価として用意していたものがあるが⋯エイドロスがいないのでは渡せないな。
非常に残念だ」
*いいたいことは、それだけ?*
ナギサは生物の目には認識できない速度でブラスターを撃つ、アストロレクスの頭は弾ける。
*ナニかあるんだって*
<探しましょう、何かの役に立つかも>
玉座の周辺には何もなかった、が物音がした方をナギサが見ると腰を抜かした衛兵がいた。
部位欠損した皇帝の死体があれば誰だって驚く、ここの3人が麻痺しきっているだけである。




