一か八か‐γ
4つの目が光る。
ナギサとミライの姿をしたエイドロスは青く輝くエレクトロンサーベルを構えて止まっている。
ネクスシステム、電磁波で神経と筋肉を刺激し、ナノマシンを用いて神経の伝達反応速度、脳の処理速度を飛躍的に向上させる、身体強化装置。
使い方を誤れば使用後に後遺症が残ったり、最悪使用中に突然死してしまう、恐ろしい装備である。
そしてそんな装備を互いに起動したということは、お互い「そうでもしなければ勝てない相手」と認識しているということである。
目が光るのはネクスの副作用であり、相手が普通の人間ならば威圧を与える効果がある⋯が、ナギサもミライもそんなことで動じるような者ではなかった。
いや、ナギサは過去に何度もネクスを用いた模擬戦をミライとしていた。
そして、一度も勝てたことはない。
どちらかがサーベルを振るうたび、空気を切り裂いてスパークが飛び散りドーンという大きな音が鳴る。
そしてぶつかり合うと強い光とプラズマが飛び散る。
それが、ネクスによって加速した動きと思考のもと行われるために花火のように連続して光る。
この場に彼ら以外に誰もいないことは幸いであった。
2人が激しくサーベルを振るうせいで酸素分子が分解されて、呼吸が困難な濃度までその部屋の酸素分子が薄くなっていた。
いやそれだけではない、エレクトロンサーベルによって予測不可能な原子の分解や再結合が起きている、有害物質に溢れてしまっている可能性だってある。
だんだんと押されるナギサ。
彼の記憶の中で、ミライは絶対的で最強な存在だ。
であれば勝つことは不可能、しかしナギサは死者を冒涜し、憧れの存在を模倣した存在を許せなかった。
いつもは冷静なナギサでも、これだけはと譲れないものがあった。
太陽のような光と雷のような音が空間を埋め尽くす。
普通なら鼓膜が破れたり失明するような激しい戦い。
一方の攻撃をいなして素早く反撃する、連撃を叩き込んで反撃の隙を与えない、重い一撃をいれて隙を作る、飛び上がったり宙を舞って回避する。
床、壁、瓦礫、像、全ては足場であり防御手段であり、武器であった。
ナギサはこの戦いは長引くほど敗色濃厚になることを分かっていた。
決闘の場では絶対にミライに勝てない。
けれど、これが決闘ではないとしたら。
卑怯卑劣な手を、しかし失敗すれば二度と通用しない手を。
ミライは、誇り高きミライ様はこんな戦法を知っているはずがない、ナギサがミライに勝てる唯一の賭け。
ナギサが縦に斬りつける。
ミライは横に防御する。
鍔迫り合いとなってスパークが飛び散る。
ナギサはエレクトロンサーベルを停止した、そしてすぐに起動した。
刀身なき柄は下に行き、ミライのサーベルを過ぎた場所で起動したナギサのサーベルはミライの半身を切断した。
不意打ち、一度は使い手の誰もが思い浮かぶが、自身の防御を捨てる賭けでもあり、正々堂々とはほど遠い手段。




