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虚像‐α

「やあナギサ」

私はその声を聞き、声の主の姿をみた瞬間、発砲していた。

激しい怒りで手が震え、照準が定まらない。


「ひどいじゃないか、見かけ次第撃つなんて私のこと嫌いか?」

深呼吸してまた発砲、やはり当たらない。


「⋯ああ、あの人の姿を真似るお前は大嫌いだ」

そいつは”あの人”の姿で両手両足を広げて、

「真似るも何も、これは君が思うミライ・ミコロを再現した姿だ。

君の記憶からすれば本物に違いないはずだが?」


ブラスターはやめよう、時間とガスの無駄だ。

「本物のミライ様はこの星じゃスーツなしでは生きられない」

そいつは私を指差して嬉しそうに言う。

「大正解、じゃあ追加で問題だ、なんで私は宇宙服を着ていない?」


「私は⋯宇宙服を着たミライ様を見たことがない」

私の声が震える。

生きている間に、あの人が、ミライ様が宇宙服を着ている姿を、その身1つで敵と戦う姿を見ることはなかった。


そいつはさらに嬉しそうに言う。

「合格!ナギサはナギサのままじゃないか」

そいつは銅像の上に立ち、背を向けて言う。

城の亀裂からわずかに差し込む太陽光がそいつに2つの影を創り出す。

短く靡く髪は、オベロン演説のときのよう。

「なぜ私がいると思う?

いや、私はミコロの姿をしていると思う?」


わかりっこない、そもそもこいつはなんなんだ。


「それは、君、霧崎渚が憧れる存在なんてとんでもないに決まってるからさ。

アストロレクス皇帝は君の記憶を元に再現された私エイドロスを使おうっていうのさ」

私は限界を超えた怒りというのを初めて知った。

死者を、私の憧れの人を利用しようとした奴がいる。


そいつは急に振り向いて、満面の、生気のこもっていない笑顔で、

「愚かだよね。

君という自由人が憧れる存在が、独裁者に従うって思い込んでるところがさ」

「でもあなただって独裁者だった。

絶対的な権力を振るって、二度と民から政治が離れられないように構造を無理やり変えた」

「そうだね。

私ひとりですべてやった、だから私も独裁者だ。

ただ、民のことを考えない独裁者は嫌いでね。

ナギサも知ってるだろう?」


そう言ってブラスターとよく似た何かをどこからともなく取り出して撃った。

どこを撃ったかは分からないが、ミライ様を完璧に模倣しているなら、私利私欲に塗れた独裁者の皇帝はきっと殺される。


「さて、ミコロとしてのノルマは達成したわけだ。

どうするんだい?ナギサ。

この偽物を排除するのかい?

君が失った師匠と、同じ姿同じ声同じ能力同じ性格の私を」


違う、お前はミライ様じゃない。

近寄ってきてもそっくりな言葉で語りかけてきても、本物は私の知らないところで死んだ。

仕草も、言い方も、行動も、そして決して向こうからは危害を加えないことも、全部私の妄想のミライ様だ。


私はエレクトロンサーベルを起動して何発も斬りつけた、それはやつのエレクトロンサーベルに防がれた。


「決闘と行こうかナギサ。

私が生きてる間はついにできなかった、真剣同士の決闘を」

エレクトロンサーベルを構えるミライ様のような何かは、私がいつも模擬戦で見てきたミライ様の構えを取った。


私とそいつは同時に唱える。

「「ネクスシステム、アクティベーション」」

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