世界樹の伝説‐α
「空って、神様がいる場所ですよ!いらっしゃいませんでしたか!?」
困った、こういうとき事実を言うべきか、嘘を付くべきか。
どちらも経験がある、事実を言ったときは彼らの宗教の否定になり、襲撃を受けたり集団自殺が発生したりした。
嘘をついたときは異星人お墨付きとその宗教が広がり絶対化してしまった。
*なぎさサマはカミサマがどんなヒトかわからないの、セツメイしてくれない?*
ありがとうステラ、念じるだけだか確かに感謝している。
「あ、そうでしたね!」
「ではまず、この教会に代々伝わる神話から、のほうが理解できると思いますので、概略をお伝えしますね」
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かつてこの世界には神がいた。
世界樹という大きな木を通して地上に恵みをもたらし、人々が祈る力を世界樹を通して得ていた。
神は1人か2人か、あるいはもっといたかもしれないが、人々が祈るのをやめてから世界樹は枯れていき、最後は朽ちてしまった。
世界樹が朽ちたことで地上には魔物が溢れ、世界は穢れ、恵みはなくなった。
世界樹は朽ちる前に、一度燃えたことがある。
そのとき神の怒りが降り注ぎ、地上の人類は天罰を受けたという。
燃えてもかろうじて残った部分がそれでも地上と神世を繋いでいた。
神に恐れをなした人類はひたすら祈り、それは教会という形で世界中にも広がった。
あるときから人は神の存在を疑うようになった。
神聖な力は太陽の光であると、恵みは天からではなく地下から湧くと、神はいたとしても地上に干渉していないのではと。
神はいない、その考えが主流となり、祈るのは教会の僅かな人だけ。
その祈りだけでは世界樹を維持することもできず、世界樹は朽ちる。
朽ちた世界樹の廃材は魔力源にも燃料にも薬にもなるので多くの人が求めた。
しかし限られたその資源は貴重であり、人類は争った。
世界樹が朽ちて最初に起きたことは、戦争なのである。
教会の人々の間である伝承がある。
この世界のどこかに、世界樹の種はまだ残っている。
祈りが蘇ったとき種を植えれば、再び世界は神世との繋がりを持てる。
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「⋯で、神様は人と変わらない姿と大きさで、雲の上に今は居るとされています」
とするならうまくはぐらかせるな。
「残念だが、私は高速で飛行しながら人を見ることができるほど目がいいわけじゃないんだ。
なにより、飛んでるときは景色をじっくり見る余裕などない、おそらく私は見落としてしまったのだろう」
世界樹、様々な惑星の民間伝承に度々出てくる巨大な樹木。
ある惑星では異常成長した樹木のことであったり、切り株のように見える巨大な岩石であったり、またあるときは海底から海上まで伸びた石灰生物だったことも、外来文明による通信施設だったこともある。
どういうわけか創世神話につきものの、不思議な存在。
そして、この世界にもまたそんな話があるというわけだ。
まあ、そんなものを信じ続ける彼らは敬虔だが、いささか現実が見えてない。
「種の形はいろいろ説があります。
普通の豆のようなものだとか、光り輝く球体だとか、硬くて角ばっているものだとか」
「そういえば、どうやって種を見分けるんだ?」
「意外と簡単ですよ。どの種の伝承でも「触ることが難しいほど熱い」というのが共通しています」
ん?そんなものを持っていたような気がする。
「それを植えたらどうなるんだ?」
首を振りながら、
「わかりません、神話では「世界樹が再生する」とだけ。
一気に生えるのか、少しづつ伸びていくのか。
しかし、世界樹を蘇らせたものは願いを叶えられると言われています」
なら⋯少し期待してみるか。




