大怪魚‐α
水深5320m、着底。
砂とマリンスノーが舞い上がる。
*ほんとにイキモノのハンノウある*
<それもナギサさんの言う通り噴出口の近くほど強い反応です>
ここから数百年単位で生きてきたであろう生物を探す。
<大きな反応があります、左14°>
「14°左に」
<2キロメートル、反応は右に向かって鈍足で移動中>
「進路と2°以上ズレたら言ってくれ」
<了解>
エヴァはすっかり私の単位を覚えて使いこなしているようだ。
ステラはまだ分からないが、エヴァと同じ性能なら行けるはず。
<残り1キロメートル、方位修正してください>
赤外線ライトを点けて見る。
なにかいないか、目視で確認できてもおかしくはない距離だ。
<残り800m、反応は動きを止めました>
影は見えない、が赤外線が少し返ってきているので近いは近いのだろう。
<残り400m>
赤外線でようやく全貌が見えた。
推定500mの巨大な魚だ。
<残り100m>
「よし、一度ここで停止する」
あの生物の年齢を測る方法がある。
「ステラ」
*わかった*
ステラが船から出て動かない生物に触れる。
*すくなくとも、1300ねんはいきてる。
それよりまえはわすれたみたい*
「十分だ、魔石がありそうな場所は?」
<魔石は肝臓か腎臓、心臓のどれかにあります。
この生物からとてつもない魔力反応があるので魔物なのは間違いありません。
魔法を使う魔物の場合は心臓付近、そうでないなら血中から不純物を濾過する腎臓か体内に入ったものを分解する肝臓です>
「頭は吹っ飛ばしていいんだな?」
<大丈夫です。
が、一応遺伝子を採っておきたいので少し待っていてください>
ステラと入れ違いでエヴァが接近し、魚から血液を採取していた。
その青い血はなんとも神秘的に光っていた。
エヴァが帰ってきたあと、横から頭を撃ち抜く。
元から動いていなかったため分からないが、多分死んだのだろう。
もしくは、私が手に掛けるまでもなく寿命死していたか。
エヴァと協力して魚の体内を切り進む。
これに関してはエレクトロンサーベルを使う他ない、ブラスターは最低威力でも炸裂してしまうから。
エレクトロンサーベルを起動すると柄から電子の刀身が現れる。
原子もバラバラにできるこの道具は大気中や水中で使うと触れた原子を分解する。
今も水分子などを分解しているため表面から泡を出し、時折ピンク色のプラズマが光っている。
エヴァの銀色のメスと私の淡く緑に発光するエレクトロンサーベルが内壁を切り裂きながら進む。
<肝臓にはありませんでした>
「腎臓もだ、となると心臓か」
切り進むほどに青い血が海中に広がる。
バイザーが埋め尽くされることがあるので何回も拭き落とす。
やっと巨大な心臓にたどり着く。
心臓を割ると中から眩しい光を放つ大きな物体が。
<とても起爆しやすいので気をつけてください!>
反物質用容器に入れてみる。
反物質ほどの不安定さはないと思うが、エネルギー量的には起爆したら私は消し飛ぶかもしれない。
蓋を開けて筒の中に入れ、磁力で浮かばせる。
⋯なにもおきない、うまくいったようだ。
残りも回収して船に戻る。
一応ワープドライブができるか試す。
ワープドライブを起動すると次元の孔が空いてそこに入るとワープ開始、という感じだ。
「ワープテスト開始」
ワープドライブのスイッチを入れる。
次元の孔特有の、空間の歪みとどこか違う景色が一瞬見えた。
太陽魔石でワープドライブは問題なくできそうだ。




