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ファーストコンタクトの結果-γ

ヴルガルの街は、強大な魔物を倒した上、空に消えていった者についての話題でいっぱいであった。


おかしなところが多いのである。

1つ、どうやってあの魔物を一撃で粉砕したのか。

2つ、なぜ声をかけても一切反応しなかったのか。

3つ、なぜ遠隔精神感応魔法には素直に応じたのか。

4つ、なぜ顔を含む全身を覆い隠すような格好なのか。

5つ、なぜ報奨金を受け取るのをためらったのか。

6つ、なぜあの巨体があの高速で飛べるのか。


様々な憶測が飛び交う。

世間を知らぬ大魔術師だという者、別国家の新兵器であるという者、別世界から来たという者、宇宙から来たという者、人に化けた魔法生物であるという者。

しかしその飛翔体は、噂が広まるよりも速く世界を渡るのであった。


ーーーー


レサン王国の精鋭の騎士団が魔物討伐のためヴルガルに到着すると、街の雰囲気が異様であることに気づく。

魔物の脅威に慄くのではなく、何かを囁きあい、首を傾げ考え合っている。

およそ襲撃を受けた街とは思えない。


不審に思った騎士団長が現地の防衛隊のリーダーのもとへ向かう。


「リーダーはいるか?」

「はい、今リーダーは作戦会議室にいます」

「そうか、そのまま会議室にいてくれと伝えろ」

「はい!」


ーーーー


「久しいな、モーホー」

「カービン騎士団長!」

作戦会議室に騎士団長が着くと、防衛隊のリーダーは驚いたような嬉しいような表情をした。

「騎士団長、もうご存知のこととは思いますが怪物ヴェルティアはもう討伐されてしまいました。あなた方真紅の騎士団を呼び、到着するまでヴェルティアを足止めしようとしたところ、謎の人物がヴェルティアを粉砕してしまったのです」

カービンは少し動揺した。

「粉砕しただと?解放騎士団があまりの頑強さに取り逃がしたあいつをか?」


解放騎士団とは、真紅の騎士団の次に強いとされている、レサン王国ナンバー2の精鋭だ。

彼らは堅実な戦略を練ることで有名であり、ヴェルティアとの対決時も綿密な計画の下攻撃したが、想定を大きく上回る防御力と生命力に歯が立たず撤退。

捨て身とも言われる超攻撃型の真紅の騎士団に要請が入ったのも「知だけでは勝てない」という上部の判断だ。


「たしかに彼はヴェルティアを粉砕しました。攻撃を受けて爆散するヴェルティアを防衛隊の多くが目撃したのですから間違いありません」

「そうか、それでそいつはどこのどいつだ?」

「それが全くわかっていないのです。こちらからの呼びかけに応じず、街にたまたま来ていた魔術師の遠隔精神感応魔法によって意思疎通が取れたものの頑なに報酬を受け取ろうとしなかったり、あげく報酬を詰め込むとどこかへ飛び去ってしまったのです」

バリン!

カービンが飲んでいたワイングラスが地面と衝突して破損した。

「飛んだだと!?そいつは人間なのか!?」

モーホーはカービンの剣幕に少し震えている。

「そ…それが、それすらわかっていないんです…

彼が人か魔物か、悪魔か神か、全く…」

「人は翼を持っていない!どうやって飛ぶというのだ!」

「の、乗り物のようなものでした!

大きな鳥のような何かに乗り込んで飛んでいきました…」

「乗れるほどの鳥?眷属に(テイム)された飛翔種の魔物か?」

「いえ、生きているもののようには見えませんでした。どちらかというとからくりのようなもので…」

カービンが頭に手を当て、何かを考えている。

しばらくしてから口を開いた。

「そいつはどっちの方角へ行った?」

「おそらく、ノイド川を越えて鉱山都市ヘトブへ向かったものと」

「ヘトブか、では私個人としてあいつの正体が気になるため向かってみるとする」


カービンが部屋から出ようとするとふと何かを思い出したようで、

「おいモーホー、あいつと会話したという魔術師は今どこにいる?」

「ああ、彼女であれば彼がヘトブの方に向かったとわかるとすぐに向かいましたよ。向こうで会えるはずです」

「そうか、いやありがとう」


そう言ってカービンは作戦会議室を後にした。

しばらくして騎士団員全員にシェンタへ帰還することをを命じ、自分はヘトブへと急ぐのであった。


ーーーー


ノイド川を越えてすぐの平原を馬車に乗って急ぐ女性の魔術師がいた。

彼女はヴルガルにいた馬車の中で最も速いと評判の者に運送料としては大金の50トラを支払い、可能な限り早くヘトブの街へ向かっていた。


「きっと祖国を救ってくれる…

彼か彼女かはわからないけど、とにかく話をつけなきゃ。

ヴェルティアを一撃で葬るなんて、魔族になったヴァルアキア人でも滅多にできない。

なんとかして説得して戦ってもらえれば、きっと勝てる!」


急ぐため悪路も高速で進む馬車の乗り心地は最悪である。

しかし彼女は先程のことを思い浮かべ、目を輝かせていた。

彼こそが希望であると言わんばかりに。

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