管理者代理-α
*あなたはダレですか?*
謎の光線を照射された後、その声が聞こえた。
あの光線が原因とは思えない。
なぜならシールドで完璧に防げたのだから。
目の前には、頭部に獣の耳のようなもの(ただし金属質で排気口のようにも見える)が生えている少年?と、淡いピンク色髪色で服も淡い色の少女?の2人がいた。
*あの、キこえてますか?*
マイラと話している時に近い聞こえ方だ。
つまり念じれば通じるかもしれない。
『私は霧崎渚だ、あなたこそ何者か』
すぐに答えは返ってきた。
*わたしはStella、このラクエンでみんなにユメをミせている。
ナギサ、あなたのチカラでなんとかしてほしい*
『なんとかって言っても、何をどうすればいいんだ?』
*このラクエンをエンメイさせるか、オわらせるかキめてソウサしてほしい。
オわらせるならダレでもいいんだけど、エンメイはあなたみたいにギジュツのあるヒトしかできない*
なんとも重い課題を投げかけてきたものだ。
『ラクエンとは何だ?』
*チョクセツオクる*
次の瞬間、脳内にこの島の歴史が流れ込んだ。
死ぬ定めの人を幸せにするために作られ、管理者を失い、崩壊寸前で耐えてきながら毎月のように不幸な人が流れ着いてくる。
そしてもう根幹システムが壊れる直前で、対応について対立する2人のロボット。
*ラクエンのサダめを、あなたにキめてほしい*
少女⋯いやStellaはこちらの答えを待っている。
手を突き出して念じた。
『私のような余所者でよければ』
Stellaは手を握り返してきた。
触覚を制御されているからか、宇宙服越しに温もりを感じた。
ーーーー
EvaとStellaに連れられてメインシステムまで行く。
途中の通路は歩くことを想定されていないような構造をしていたが、数多の惑星を探検してきた私には安全な洞窟ぐらいにしか感じなかった。
ライトで照らすとその構造物の異常性がわかってきた。
最初こそ苔やツタが生えていたが、だんだんと菌類もいない空間になっていく。
数百年もの間放置されていたにしてはあまりに清潔だった。
<ATLAS、代理の管理者を連れてきました>
Evaがひび割れた球体に話しかけると、急に上から何か降ってきた。
それは立ち上がり⋯脚も腕もないロボットだと分かった。
▶Stellaノ言ッテイタ人カ.
『はじめまして、霧崎渚だ』
▶⋯登録完了.
▶オペレーターナギサ、指示ヲ.
指示⋯
『指示を出すにも情報が必要だ。
なので今のラクエンの状態を教えてほしい』
▶デハStellaカラ.
*はい。
さっきツタえたように、わたしがカンカクをセイギョしてミせていたユメをユメとリカイしてしまうヒトがフえてきた。
あなたのように、ここにハイりコんだのはハジめてだけど、フネをツクってタイリクにカエっていくヒトがたくさんいた*
『楽園帰りの正体はそいつらか。
しかしなぜそういった奴らが産まれるんだ?
私はともかく、五感全てで見せられている幻を脱するのは不可能なように感じる』
*わたしのユメはフカンゼン。
ゲンジツにあるものをユガめてミせ、そのヒトがカいだことあるニオいをカがせる。
オトとサワりゴコチ、アジはカンゼンにセイギョデキるのだけど、イタみとクルしさはサイゲンできない。
これはキカイがレッカするまえからだめだった。
でもイマは、ミせるユメもだめになってきた。
シアワセなものをミせることはできるけど、カクすべきものをカクすことができなくなってきた*
『なるほど、君の範疇を超えた故障になりつつあるのか』
▶次ハEva.
<はい、生命維持物資の生産が減少し、今の生産量では今ラクエンにいる人の3割ほどしか生かすことができません。
生命維持物資は薬品といった高度なものから食料品や飲料水等までありますが、枯渇しつつあるのは飲料水と薬品です。
地下水がなくなりつつあり、その影響で薬品の生産に滞りが出ています。
海水を飲用にできればいいのですが、残念ながらそんな技術私達には与えられていません>
『私がそういった機械を作れば解決するか?』
<そもそも私達の補修部品すら満足に作れていない現状では、生命維持物資の生産が解決しても維持する私達がいつか⋯というか今にも壊れるかもしれません>
▶メインシステムハココダ,直セルカ見テホシイ.
ひび割れた機械は外殻が壊れているのかと思っていたが、触れてみるとすさまじい高温で劣化した部分が溶け出したり熱が不均衡に伝わったことで割れてしまったようだ。
『この外郭は放熱板か?』
▶ソノ効果モ無クハナイ.
▶回路ヲ支エルノガ本来ノ役割ダ.
『整備のために開けられる部分はあるか?』
▶ドコモ開ケラレルガ,外郭ハ溶ケヤスイノデ注意.
外郭のまだ固い部分を開けると、探検家の私でもわかるひどい状態だった。
まず内部温度が数百℃で放熱が全く間に合っていない。
原因は冷却システムが融解していて意味を成していないことだが、かろうじて動けるように各機器の冷却ファンの方向を調整して外気を利用して冷却している。
なるほど、これではまず100%の性能は出せない。
それだけじゃない、あちこち断線して導電性の部品を組み合わせて繋げていたり、場所によっては外郭をそのままGNDとして使ったりしていた。
各パーツは見たことないものがほとんどだったが、高音を上げながら震えたりたまに動作が停止していたりとどう考えても壊れかけ。
『これは⋯思ったより状態がひどい』
<物資の生産所も初期のものはこの状態で、後から私が構造を模倣して作ったものはまだマシですが増築時に予備部品を大量に使ってしまったため修理用の部品は全く足りません>
『君のような優秀な機械が後先考えずに行動するとも思えないが、どうして予備部品まで使用したのだ?』
<当時の生産量では数日以内に餓死者が出るという計算になったため、故障時のことを無視してでも増産せざるを得ませんでした>
状況は良いとはいえない。
私の知らないパーツだらけだし、アマノガワの技術とはなにか大きく性質が違う。
いや私は技術者じゃないから、アマノガワでも探せばこういったパーツはあるのかもしれないが、少なくとも私は知らない。
ああ、こういうときミライ様がいらっしゃれば⋯




