異常-Ϸ
<全く⋯どうしてATLASもStellaも諦めてしまうのだか。
機械である私たちは最新の命令を実行し続けるのが使命です。
命令からの逸脱は許されていませんし、ましてや命令に反する判断を下すなどもってのほか>
Evaは狭い通路をまるで重力などないように飛んでいった。
<私たちはもう助からない人を幸せにすることが使命。
病気の悪化や衰弱で死ぬまで幸せに生きてもらうように守ること。
そして、ここに侵入する作業員以外の存在はその場で始末すること>
通路は進むほど老朽化している部分が目立っていく。
<作業用通路が使われるなんていつぶりでしょうか。
人間の作業員もこなくなり私たちはコントロールルームだけで制御できるので通路の老朽化には気が付きませんでした。
物資に余裕ができたら補修しましょう、崩落してはこういった緊急時に対応が遅れます>
微かに光が通路に差す。
壁一枚向こうはもう外であるのだろう。
<アノマリーは⋯19か>
通路を飛んでいき、Evaはアノマリーの姿を見た。
<魔物か。なぜ「ラクエン」にいるのかは不思議ですが、排除させてもらいます>
そう言うとEvaは腰に着けていた大きな銃のようなものを構える。
アノマリーはこちらに気がついていないようだ。
銃からマインビームが発射された。
岩を穿ち鉄を割く強力な掘削用レーザーだが、生命体に対しても脅威となる。
しかし一瞬で大岩を壊せるが生物に致命傷を与えるまでは時間がかかってしまう。
そこは機械の利点である、一切ブレたりしない照準力がカバーできるのだが⋯
<おかしい、マインビームが直撃しても削れる様子がないです>
アノマリーは液状というわけでもないのに、マインビームの影響を受けていないようだ。
<逃げもしない⋯一体何物⋯?>
Evaが処理の限界までアノマリーが何物かを思考していると、後ろからStellaが走ってきた。
*Evaまって!そのヒト、「ラクエン」をナオせるかもしれない!*
<⋯[処理限界]⋯
え?「ラクエン」を直せるかもしれない人ってことは、私たちを作った人たちか、それ以上の技術を持つ人ってことですよ?>
*あのヒトがノってきたノリモノ、ソラの厶こうのさらに厶こう、ホシよりもトオいところから来たみたいなの!*
<星よりも遠いところ?>
アノマリーは何もせずこちらを見つめている。
Evaはアノマリーの方を向き、
<あなたは何者ですか?>
と聞く。
*Eva、あのヒトはここのコトバがツウじない。
わたしがチョクセツこねくとしてツタえてる*
<なら、早く何者か聞いてください>
*わかってる⋯*
するとStellaが目を閉じる。
しばらくして、アノマリーが動き出した。
Stellaが目を開けると、アノマリーが出した片手を握った。
*Eva、なんとかしてみるって*
<それはよかった⋯>




