偶像-β
街に戻ってみると、教会みたいなところが光っていた。
教会自体珍しいけど、教会ってあんなに光るものだっけ?
興味本位で入ってみると、祭壇の代わりにステージがあり、神父と修道女が歌って踊っていた。
驚きつつも、その踊りと歌を聴いていた。
すごい…本職の歌い手や踊り子に遜色ない…
演目が終わり、みんなが拍手のあと教会から去ってから、修道女の人と話せる機会があって、気になっていたことを聞いてみた。
「どうして教会の人が歌って踊ってるんですか?」
「そりゃ、楽しいからでしょ!」
修道女の人はそう言いながら、ステージの奥の祭壇を見せてくれた。
祭壇はちゃんとしてるみたい?
実物を見たことないからわかんないけど。
一通りお祈りした後に修道女の人が、
「神様はもう私たちのことが見えないかもしれないけど、黙ってお祈りするよりみんなを喜ばせるようなことしたらきっと喜んでくれる」
「そういうものなんですか?」
「何より楽しいし!」
…なんとなく、私も踊ってみたくなる。
「あの、踊りを教えてくれませんか?」
「いいよ!⋯あそうだ、名前聞いてなかったね。
わたしペニテンシア!」
「私はマイラ、改めてよろしくお願いします!」
ーーーー
どれくらい踊っただろう?
以外とやってみればできるんだ、と感じた。
「すごいよ!吸収が早いからもうみんなの前に立てるかも!」
「あ、ありがとうござい、ます」
するとペニテンシアさんが真面目な顔でこっちを向いて、
「⋯ところでマイラ、あなたはどうしてここに?」
「え?」
驚く私をさっと引っ張って耳の近くで小さな声で続ける。
「ここは、身体か心に深い傷を負ったり、もう助からない病に罹ったりした人が来るところよ。
あなた今は心も身体も元気みたいだし、何かの間違いで迷い込んだんじゃなくて?」
「えぇ?えっと⋯」
すると神父さんの声が聞こえた。
「おーいペニテンシア、次の曲決めるぞー!」
「ああ残念、もう行かなきゃ」
別の部屋に行きそうなペニテンシアさんの背中に向かって、
「あの!ここってどういうところですか!?」
彼女は振り向き笑顔で、
「幸せになる場所よ」
と言った。




