楽園の土地-δ
アガラシは驚くべきことにナギサとの約束を守った。
敵の主力を壊滅させたということで国境部のエムレーオの城塞を今回武勲を挙げた騎士団に与えたぐらいしか拡張をせず、エムレーオとの交渉で平和が訪れた。
壊滅的な被害を被った街の復興が始まった。
ただ、壊滅的な被害を食らった嬢さんは立ち直れそうにないな。
明らかに笑顔が消え、顔には陰がちらついている。
ナギサの提案で、しばらくアガラシの首都、ソル・へラードで過ごすことになった。
大抵のものは買えるのと、農村部ではあの惨事を思い起こさないかと、2つの理由かららしい。
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俺はあれからいろんな場所を巡ってマイラを復活させる方法を探していた。
ただ、どれもマイラには効かなかった。
数日後、商業ギルドである噂を耳にした。
数十年ぶりに「楽園帰り」がザハベルに現れたという。
その噂を聞いて思い出した、あるおとぎ話を。
生きるのが辛くなったら船を出しなさい。
もう生きられないなら船を出しなさい。
海の向こうには、幸せに暮らせる場所がある。
肉が実る木、たくさんの宝石、そして王様になれる王冠。
みんなで幸せになれる場所がある。
とまぁ、こんな感じだ。
よくある口減らしのためのおとぎ話だが、沿岸部には定期的にこの「楽園」から帰ってきたと言い張る奴らが現れる。
そうしたやつらは楽園の様子を伝えて数日後、首を吊ったり飛び降りたりして死んでいる。
やつらは楽園は素晴らしいところだったというが、どうも不思議なことに複数人の言うことが矛盾する。
ある人は雪が降りしきる島だと言い、またある人は南国の島だったという。
ある人は生き物が歌う島だといい、他の人はここよりもずっと栄えた町で覆われた島だという。
こういう伝説の島、ナギサの宇宙船があればすぐに見つけられるのでは?
そう思ったらすぐに行動。
ナギサにこのことを伝えに行く。
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「楽園の島か」
「宇宙船があれば、空から見つけられるだろう?」
「しかし島は無数に存在する。見つけられてもどれか分からないぞ」
「楽園帰りたちが言う島の特徴はめちゃめちゃだが、海岸線だけは同じだというのだ!
この海岸線の形の島を探してくれないか?」
ナギサは楽園帰りたちが描いた地図の模写たちをじっと見つめてこう言った。
「スキャンで似た海岸線の島を探そう。
ただ、特徴的な海岸線がなにもないので候補は絞りきれないだろう。
実際に訪れてみて、それっぽい島を探してみるしかない。
それに…」
ナギサは一瞬マイラの方を見てから言った。
「新鮮な出来事が続けば、辛い経験は押し流されるかもしれない」
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スキャンすると200の島が似た海岸線だったらしい。
これから総当たりの旅が始まる。




