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最後の抗戦-ͱ

「正直に言おう。

私はここに死ぬつもりで来た。

しかし今は、別な意味で死ぬつもりだ。

ここまで、人が集まると思っていなかった。

今、敗北してしまえば多くの命が無駄になり、多くの名家が損害を被る。

逆に、ここで勝利できれば多くの名家の誇りを守り、そして帝国兵士たちを救える。

この戦いは、私が名誉の戦死に行くだけの戦いではなく、この戦争の趨勢が決まる決戦となった。


このシェトレン城を攻める戦いは、包囲下にある私たちの最後の抗戦となるだろう。

皆、命を賭けて戦え!」


私は各部隊に分かれる前、全員に向けてこう言った。

少しでも士気を上げるため、そして半ば諦めている自分を鼓舞するため。


これだけの軍勢がいても妙な胸騒ぎがする。

数週間前通過したときには何もあの城から感じなかったのだが、今あの城を見ると魔王陛下とは違う、なにか強大で絶対的なものがいる気がしてしまう。

他の人はそうは感じていないらしい。

私の眼のせいなのだろうか。


ーーーー


同時攻撃が始まった。

私たちは序盤は戦況を伺いつつ城を攻め、状況次第では城壁の方の援護をするつもりだった。


しかし、城の敵戦力は異常なほど強力だった。

情報によればシェトレン城に居るのはアガラシ第三騎士団と第四騎士団。

重装歩兵と騎兵、どちらも室内戦で強いはずがない。

シェトレン城は一般的な構造の城だから、だからこそ異常に感じる。


何かがおかしい。


戦闘しながら「鑑定」を発動する。

しかしどいつもこいつもただの上級騎士だ。

本来ならばとっくに制圧されているはず…


謎はその後すぐ解けた。

こちら側の兵士が時々突然頭部を失い倒れる。

それも、強力な武装を持つ者から。

敵に妙な魔法を使うやつがいるようだ。


魔術師はすぐに見つけられた。

見習い魔術師の格好をしているが、上級魔道士をも凌駕する魔法力を持っている。

その魔法力をもって精密な攻撃をすれば、容易に鎧も撃ち抜けるだろう。


それどころか、「干渉」とかいう強力な固有スキルを持っている。

初めて聞くスキルだ。

目の前にいる人間に自分と同じ感情を抱かせるという、精神操作のスキルだという。

道理でこちら側の士気が勢いよく下がる。

明らかにあの魔術師は戦うつもりがない。


しかし、あの魔術師が私が感じた「絶対的な存在」だとは思えない。

確かに恐るべき脅威だが、何度も宮廷魔術師を屠ってきた私からすればそこまで過剰に恐れる必要はない。


それからしばらくの間、味方兵士の頭が失われることはなかった。

魔力切れだと確信し、より攻勢を強める。

そこに、一報が入った。


先程まで優勢だったはずの城壁攻略隊が壊滅したという報せだ。

皆一様に胸部か頭部を失っていたという。

「ヴォイズ!危ない!」

そう言われてすぐ、ハリーネが私を突き飛ばした。

と次の瞬間、私の頭があった場所を光線が通過した。


すぐさま光線が飛んできた方を見た。

真っ白に染められた鎧を全身着、顔は黒いガラスのようなもので見えない、鉄砲のような物を持った人物がいた。

彼から、私はおぞましい恐怖を感じた。


すぐさま鑑定を使う。

が、眼に刺すような痛みが現れて中断した。

初めてのことだ。


本能がすぐに立ち上がれという。

しかし体は追いつかなかった。

次の瞬間、私はそこにいなかった。

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