奪還戦-γ
事前の作戦通り、騎士団とマイラ、モルニアが西門、すなわち正面から突入した。
もちろん遠距離攻撃の嵐を受けるも、重装騎士はものともせず、マイラはモルニアの星屑の盾に守られながら城内に駆け込んだ。
城内での戦闘に移行し、単純に装備の質が良い騎士団は敵兵を圧倒していた。
本来重装兵は狭い空間での戦闘では不利なはずだが、歴戦の彼らはこういった戦闘にも慣れていた。
敵の攻撃は鎧が弾き、こちらの攻撃は敵に当たれば防具ごとふっ飛ばされる。
かなり早いペースで城内を進んでいっていた。
騎士団が活躍しているが、ナギサの仲間が足手まといになったかと言うと、全くそんなことはない。
騎士団は魔術が使える人間がおらず、装備の性質上長い通路での遠距離攻撃には正面突破しかない。
しかしマイラは攻撃魔法を覚えてはいた。
基礎炎魔法と基礎攻撃魔法の二つだけだが、生まれながらにして高い魔法出力で基礎魔法とはいえ攻撃力は中級魔法と遜色ない。
マイラは積極的に基礎攻撃魔法を使い、炎の方は使うのを控えていた。
室内だからか、先ほどの惨状を見たからかはおそらく教えてくれないだろう。
モルニアは星屑の盾という、僅かにだが神聖な力も持った盾を使い、なんと突進していた。
敵の中に飛び込み、盾で押し潰す。
力技とはこのことだろう。
もちろん、味方を守る盾としても機能している。
不意を突かれそうになった騎士団長や、防御魔法を覚えていないので防御力上裸同然なマイラを敵の攻撃から守るのだ。
マイラが魔法で敵の体勢を崩し、騎士とモルニアが隙をついて撃破。
もしくは力の押し合いに勝つことでの撃破で次々とおとりは城を制圧していった。
マイラたちが大暴れしている中、ナギサはジェットパックを使い城の上層から侵入した。
ナギサの作戦は敵将の首を取り、敵兵に見せつけることで降伏勧告を行うというもの。
目立つ格好での進入はかなりの力技で実現した。
「発見される前に始末する」という、ナギサの持つブラスターあってこその戦法だ。
見張りでじっとしている敵兵だけでなく、すこし混乱していたり、不安に思う敵兵は格好の的で、一騎士に負けないぐらいの量をナギサは始末していた。
この殺戮の目撃者がいないことは非常に幸運だった。
敵兵の頭が弾け、パニックに陥った敵兵の頭が弾ける。
ブラスターの威力は下げられているとはいえ、生命体に命中したら炸裂して見るも無惨な死体を量産していた。
マイラが知ってしまえばナギサと距離を置くだろう。
モルニアが知ってしまえば「残酷だ」と批判するだろう。
しかし目撃者も、ナギサがやったという証拠もない。
あるのは首無しの死体の山。
別にナギサでなくとも作れるものだ。
敵の本陣がある部屋の前に着くと、ナギサはもちろん正面から入った。
そこにはどういうわけかモルニアの人種の人間がいた。
「おやおや、ネズミが入口からわざわざどうも。私の部下をうまく殺せても、私に不意打ちは通じませんよ」
ナギサはブラスターを構え、出力を下げて相手を狙う。
すこしでもズレてしまえば一巻の終わりだ。
「よろしい、正々堂々受けて立ちましょう!このエムレーオ辺境伯、へルア・シェトレンの名にか」
ナギサの狙いは正確だった。
首は綺麗さっぱり消え、頭部がドサリと落ちた。
ナギサにこの文明の言葉は通じない。それ故空気も読めない。
名乗り口上はただの射撃チャンスだ。
敵将の顔は恐怖と絶望に歪んでいた。
ナギサはその頭を掴み、マイラたちとの合流を目指して走った。
その途中、多くの敵兵と遭遇した。
ナギサはブラスターの出力を上げ、先ほどと同じように敵兵を弾けさせた。
ナギサが「制圧射撃」をすると赤い花が咲き乱れた。
灰色の通路が真っ赤に染まるほどの殺戮を行いながら、ナギサはひたすら爆音の鳴る方へ走った。




