ステータス測定-α
ザハベル、とか言う街はこの時代によく成り立っていると感心するほど巨大だった。
見渡す限り市街地が広がり、かすかに見える沿岸部は大型帆船が無数に停泊している。
意外なことに蒸気船は無いようだ。
不自然なことだが、あの街の外には蒸気機関が広まっていないのかもしれない。
通行人や住民に案内して貰うつもりだったが、どういうわけかマイラが街の地理に詳しいと言うので案内を任せている。
『あの服屋は奇抜なデザインで有名で、あの食事屋はとっても評判がいいけど味は美味しくない、あの雑貨屋は今は面白みのない生活雑貨しかおいてない、あの薬屋は効能はいいけどちょっと依存性があるものばかり取り扱ってる、あの酒場は美味しいけれど客層が悪い、あの賭場はとくにこれといった特徴はない…』
なんとも負の側面を強調した案内だろうか。
しかし負の側面をよく知っているということは…
『マイラはよくここへ来るのか?』
『まあね、
ちょっと希少なものが足りなくなったらとりあえずここに来てないかどうか探して、なかったら原産地に行って直接購入してる』
どの時代、どの文明でも、大都市というのは総じて忙しない空気で満たされているものだ。
私の奇妙で不審な姿を見ても無視するか2度見する程度で特に興味を持っていないようだ。
ひとまず休憩を兼ねてマイラおすすめの酒場で話し合うことにした。
マイラいわく、静かでゆっくりと話せるけど、店主の雰囲気が悪いらしい。
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酒場についてから気がついたのだが、私はこの状態では飲食ができない。
それでは店に申し訳ないので、マイラに好きな物を頼ませた(金はあるので)。
相変わらず言葉がわからないのでマイラが何を頼んだのかわからない。
少し楽しみでもある。
『まず言葉を覚えたいと思う』
『簡単な言葉であればすぐ教えられますよ、本格的に覚えるとなると通訳ができるぐらいに言葉の意味を理解している人におしえてもらったほうがいいでしょうが』
『「はい」と「いいえ」ぐらいは知っておきたい』
『「はい」と「いいえ」と、間を空けて言うので発音を覚えてみてください』
スピーカーの音量を上げ、耳を澄ます…
「イフ」
「ヘウ」
『イハがはい、ヘウがいいえ。ありがとう』
『ついでに「ありがとう」も教えておきますね』
もう一度耳を澄まして発音を覚える。
「サルタ」
覚えたぞ、
「サルタ!」
『いきなり言うのはちょっと驚きました…
でもいい感じですね!』
『とりあえず身振り手振りとはい、いいえがあれば簡単な会話は成立しそうだな。
ともあれ初めの目的通りこの文明について調べられそうだ』
『だったら、探検家組合で実際に探検家がしている仕事を確認しましょうよ』
『仕事をみれば、どういう文明かもわかりそうだ。
ひとまずそこに行ってみよう』
と、このタイミングでマイラが頼んだものが来た。
まさかの果汁ジュースであった。
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探検家組合はかなり整備が行き届いたシンプルな建物だった。
もちろん看板の文字やポスターに描かれた文字は読めないが、何か緊急性の高い仕事でもあるのだろうか。
中に入り、マイラに掲示板の仕事内容が描かれた求人票のようなものを翻訳してもらった。
『地下水道調査、ザハベルの地下水道を点検するため、指定の人物を護衛し魔物が巣食っていた場合は駆除せよ、条件はCランク以上、報酬は合計40トラ、募集人数は6人で、今は3人が入ってるみたい。
魔物駆除、ザルべ川の河口付近にて集団の魔物が出現、駆除して安全を確保せよ、条件はEランク以上、報酬は10トラ、募集人数14人でここはもう人数いっぱいみたい』
『ランク、とはなんだ?』
『探検家たちに割り当てられる能力の指標で、ステータスが低くとも任務遂行力が高いと高ランクになれるっていう仕組みです』
『ちょっと興味が湧いた。
私のランクを決めてみてほしい』
『それじゃあ受付の人にそう伝えるから、ついてきてください』
マイラについていき、カウンターの人とマイラが少し話すとカウンターの人は奥の方へ行った。
しばらく待っていたら、手形が描かれた淡く輝く水晶板のようなものを持ってきた。
『石板の手の部分に手をかざすだけでいいよ』
手をかざすと、水晶板の光が弱まっていき、ただの透明な板となった。
かと思ったら突然割れてしまった!
かざしただけで触れたわけではないので、私のせいと思いたくはないのだが…
カウンターの人も、マイラも、水晶板が割れる音に気づいた人も言葉を失っていた。
割れた水晶板に、文字のようなものが浮き出てきた。
『マイラ、なんて描かれている?』
『
体力、0
攻撃、0
防御、0
魔法力、適性無し
素早さ、0
賢さ、0
固有スキル、なし
汎用スキル、なし
ランク、失格…
』