八話 ラク神父の舎弟兵(しゃていへい)三人
どうしてか書いておかなきゃいけない気がする。
サクラ君は、翡翠色の長髪に翡翠色の眼をした特殊人種。
運命だと思うと素直に受け入れる思考回路らしい。
その話をしてくれたラク神父は、赤毛に茶色い瞳。
この聖堂には他に複数、守護隊がいるけど・・・
とある三人が気になる。
別に変な意味じゃなくて。
年に一回の『収穫』に向かっている時に、ラク神父に言われた。
「レイン。僕は・・・機械化された、元軍人です」
しばらくの間を置いてしまった。
「えっ?」
ラク神父の苦笑。
「やっぱり異世界転生ってやつなんですね」
「ど、どこらへんを機械化されたんですかっ?合意の上でですかっ?]
意外そうな顔をするラク神父。
「おもに腕でしょうか・・・合意・・・よく分からないな。当時は当然だった」
「当然・・・?」
「これ以上、今はやめておきましょうね。せっかくの『収穫』の日ですから」
そう言って微笑んだラク神父が、自嘲しているように見えた。
ラク神父の舎弟兵である三人。
三人ともが黒髪で、それぞれ目の色が違う。
話しかけてみると、渋い顔をされた。
青い目が「サフ」。
赤い目が「ルビ」。
黄色い目が「コハ」。
三人ともが、渋い顔をしながらも森の中に進みながら話してくれた。
サフ、ルビ、コハは、乳児の時にラク神父に拾われた。
現在の年齢は25歳くらいらしい。
ラク神父は戦場で深手を追って、『修理』が必要だった。
この国では約二十五年前に、とある地区で一揆が起こったらしい。
その一揆の原因は、国・・・つまり城で、何かの実験が行われているから。
それは古代兵器であって、今も城では改良がされている、と。
その古代兵器の名前は「ゼーウス」。
国中の科学者が呼ばれ、その実験に反対をした姫レインは辺境で暮らすことになった。
その古代兵器は、隣国に対しての戦いを民にほのめかすうわさになった。
平和でのんびりと暮らせるようになりたい民が、一揆を起こした。
一揆の結果は、悲しいものだったと言う。
つまり、返り討ち。
国に反旗をひるがえした賊である、と、御触れが出た。
そしてその権力は民を疑心暗鬼にさせ、一揆が勃発した。
その終息を終わらせるべく派遣されたのが軍人ラク・フレイア。
この無益な争いを終息すべく、国の秘密を明かす役割。
機械化された人間がいることの証明としての派遣。
ラク・フレイアは軍人としてとても有名なひとらしい。
国が軍人を機械化していたのは昔昔のこと。
今でも機械兵士がいるのを知って、むしろ民の怒りは最高潮に達した。
・・・機械兵士全員を尊厳死させたんじゃないのか、と。
ラク・フレイアは、国が行っている実験とは機械化兵士のことだと言った。
そう言わなきゃいけない役割だった。
「役割・・・?」
不安そうな私に、ラフが言う。
「本当は古代兵器の復活が目的だったんだ。それを隠すためだった」
「どうしてそんなことが必要なのっ・・・?」
ルビとコハが言った。
「「国の事情」」
ラフが言う。
「我々三人の知ったことではない」
思わず眉間にしわが寄って、数秒沈黙する。
「三人は・・・ラク神父のこと、どう思っているの?」
そう聞いた途端、三人の顔色が花が咲くように明るくなった。
「本当に異世界転生ってやつなんだっ?」
「もしかしたら、レインじゃないのっ?」
「別人、な、わけっ?」
「え、え、はい・・・すいません。別人です」
三人が「ああ~、分かった分かった。はいはい」と何かを納得したようだった。
どうやら三人の中のリーダーであるラフが言う。
「我々は一揆のために武器が必要だからと、人買いに売られた」
「・・・はぁっ?」
ルビが言う。
「赤ん坊を一揆に巻き込みたくなかったんだろうとラクは言った」
うなずいてコハが言う。
「それはきっとラクからの慈悲で、買い取った我々を育てるために城に勤務した」
「え?」
三人は私を凝視した。
「魔女から呪いを受けたのは赤ん坊の頃でもある。なにかあったのかと思った」
「まさか異世界転生・・・ってことは、我々のレインはすでにいないのか・・・」
「ラク・フレイアは、前のあなたの恋人だった・・・14歳の時に二重に呪いをかけられてたんだ」
「呪われた姫と、機械化兵士・・・?」
「「「そう」」」
そこにラク神父が近寄って来る。
「ん?」
「「「ううん」」」
「なにを話していたんです?」
「三人は、ラク神父に育てられたみたいな話を聞いたのですが・・・」
「ああ、もう25歳。時が経つのは早いですねぇ。兵役の時期はつらかった」
「・・・え?ラク神父って何歳ですか?」
ラク神父は苦笑して、優しく発音してくれた。
「ざっくり150歳です」