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七話 自白(じはく)


 異世界ライフ、万歳ばんざい


 そう言えば、お姫様だっことかされたの初めてだった。


 なんだか思い出すと胸をベルベットのリボンで縛ったような心地がする。


 前はそれを「胸キュン」って言ってたな、たしか・・・


 

 そう言えば、村は大盛り上がり。


 歌を歌いながら宝石『聖女の血』の採取をしているらしい。


 もしかして砂金さきんみたいにザルとかで?


 と思って様子を見に行ったら、本当にザルですくって川の流水で砂砂利をこしていた。



難儀なんぎな作業ね」


「あんたさんや・・・姫さん・・・」



「ん?」



 サクラ君が側にいたんだけど、また何か嫌味みたいなことを言うのかと思った。



「俺のことをからかってるんけ?」


「・・・えっ?なんのことっ?」



 顔をずずいと寄せてきたサクラ君が、まっすぐに私の目を見つめる。



「姫さんは、ラク神父とまだ続いてるんじゃないんけ?」


「・・・・・・はぁっ?」



「なにが、はぁ、じゃ。呪いから目覚める前は良い感じだった」


「は?」



「なんやねん?」


「は?・・・は?」



「なに?」


「はぁっ!?どこまでの関係のこと言ってるのっ?」



「記憶・・・ないんやな」


「・・・はぁっ!?どういう意味っ!?」



「せやから、城にいた頃からなんや特別な関係やったんやないんけ?」


「どこまで!?」



「だから、寝所しんじょに入れるのラク神父くらいやん?」


「し、神父なのにっ?」



「は?」


「精神的なことっ?なに?身体の関係のことを言ってるんですかっ?」



「・・・俺の勘違いなのか?」


「わ、わたし・・・そう言えば・・・まだ、誰にも・・・話してないっ。怖いっ」



「なんのことや?」


「わ、わたしっ・・・異世界転生してきた、中身はレイン様じゃない者なんですっ」



 怖くて泣いてしまった。


 殺されるかもしれない、と思った。


 しゃくりあげる私をしばらく観察して、サクラ君が言った。



「俺は、『お前』に少し興味がある。そのあかしとして・・・」



 そう言って、サクラ君は私のほほにキスをした。



「あんたさんの気持ちが本物なら、これ以上のこと、したいかどうか聞きたい」



「・・・はぁっ?」


「なんやねん?」



「あ・・・あ、あの・・・え?そんなに深く考えたことがなかった・・・」


「は?」



「あ、あの・・・え?じゃ、じゃあ・・・あの、今の気持ち分でいいですか?」


「何を?」



「少ししゃがんで下さい」


「イヤじゃ」



 咄嗟とっさに私は背伸びをして、サクラ君の唇にキスをしてしまった。


 ほほに返すつもりだったのに、どうしようっ?

 熱っぽい気持ちのままおどおどしていたら、唇に手をそえたサクラ君が言う。



「女に困ったことはなかったが、唇を許してしもた・・・唇を・・・」



 ど、どうしようっ?と思っていると、サクラ君が笑顔を向けた。



「唇の関係になったんじゃ。それ以上のことはまた今度でいいわ」


「え、あ、はい!・・・えっ?」



「はははっ。何かおかしいとは思ってたが、俺は恋をしとるんかいっ。はははっ」



 どうやらサクラ君の種族は、キスは結婚を考えた相手にしかしないらしい。


 親子の間でもないのかと、聞いたけど、唇には、ない、らしい。



 ・・・言わなくちゃ。


 ラク神父に相談しないと。


 私が、異世界転生した存在であること。


 そうじゃないと、いけない気がする。



 ――

 ――――・・・



 緊張して足が少し震えた。


 ラク神父に「お話したいことがあります」と言って自室に呼んだ。


「こんな時間に?まさか夜伽よとぎをしろって言うんじゃないでしょうね?聖女よ」


「え?」



「城にいた頃は「姫」の相手をしていましたが、今やあなたは聖女様ですからね?」


「き、キス、とかは?」



「本当に覚えていないのか・・・自分はあなたを御守りするため仮の神父になった」



「わ、わたし・・・異世界転生してきた者なんですっ・・・!!」



「・・・え?」



「い、異世界から転生してきた前の記憶があるひとなんですっ」



「異世界転生?」


「はい・・・」



「なるほど。聞いたことある~」


「・・・は?」



「なるほど、別人なのか。これでふっきれた。大丈夫、秘密にしておきます」


「えっ?」



「いい、いい、大丈夫。時々、耳にしていたんです」


「異世界転生ってここではけっこう起こるんですか?」



「いや、ちょくちょく、くらいでしょう」


「ちょっと単位が分からないけど・・・」



「いいです、いいです、もう就寝の時間ですよ」


「え、はい・・・」



 ラク神父は私のおでこにキスをしてくれた。


「僕は長年生きてきて、前の姫考えていた考えていた・・・今のあなたは妹的存在だ。ぞんぶんに、サクラと恋をなさいな。うらみません」



 ――

 ――――・・・



 その日はそのあと泣き出してしまって、ベッドに横になった私の頭を、ラク神父がベッドに腰掛こしかけてでてくれた。


 いつの間にか眠っていたらしく、目覚めるとまだ自分の居場所があるのか不安になった。


 ここに来てまだ日は浅いけど、いつもの朝だった。


 また、泣きそうになった。



 本当に私はここにいてもいいんだろうか?



 いつもの、異世界の普通の朝は、窓から光が差して小鳥がさずっている。


 この身体を借りて、新たな人生をおくってもいいのだろうか?



 誰に聞いたらいいんだろう?


 私は前にも宗教とかを持っていなかったし・・・


 どうして脳裏に「神」とか「仏」とか過るんだろう??



 ここらでは天使とか信仰してるひといるんだろうか?


 そもそも天使画とか、あるのかな?


 そしたら背中に翼の生えた人型なんだろうか??



 まだ、死にたくない・・・


 聖女こと姫レインとして、二度目の人生を楽しみたい。


 もっと、色んなことを学びたい。

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