六話 聖女の血
奇跡芋の収穫が叶って、村は活気付いていた。
奇跡芋との交換で、ある程度の量――村人が満足するくらいには――砂糖が手に入る。
これは聖女様ポイントが高かったらしい。
聖女様として規制がかかっているのかと思いきや、「姫」として肉も魚も許されている。
ついでにお酒も。
国の意向としては、それらに関わることで国が栄える予兆がするとのこと。
これは魔女からの呪いを受ける前には、なかったことで村民は肉も魚もなしだった。
まるで魔女のおかげ・・・そんなことない!
『私』が奇跡芋作ったおかげで、村民は喜んでくれてる。
前の私には出来なかったことが、できる。
なぜか前の私よりも環境に適合している気がする。
ここでおごりたかぶってはダメよ。
そして肉も魚もお酒も、奇跡芋の栽培成功で「姫」としてOK。
村民は聖女様が食べないなら、自分たちも食べないと言っていたらしい。
聖女様として、村民にも肉と魚とお酒を。
そして富む。
富むは富むは、すっごいの。
村人から聖女様、大人気。
人のいいひとたちで、最近はお裁縫が村で流行っている。
イメージ的に丸い木枠に挟んだ布に刺繍をしたり、マフラーを棒で編んだりとか・・・
うん、私、それできないんだった・・・
力の入れ具合がよく分からない・・・
裁縫も、裁断だっけ、よく分からないし・・・
だとしたら・・・うん、村を巡回してみよう!
ってところで、轟音が鳴り響いた。
「何っ?」
側にいたサクラ君が「川の方やな」とぼやく。
――
――――・・・事実確認をした結果、村にある川辺の地盤が崩れたらしい。
負傷者はなし。
良かった。
しばらくは川の水が濁るらしい。
――――・・・
――
それからしばらくして、川の水が澄んできた頃。
水遊びを許された村の子供たちに誘われて、サクラ君と一緒に川に遊びに行った。
大きな岩と、小さな岩と、石と、小石と、砂利と・・・
澄んだ川に素足を入れると、冷たくて気持ち良かった。
ああ、前の頃、祖父母と一緒に暮らしていった時期を思い出した。
あ。あの魚は食べれそう。
群れをなしてる小さな魚が向きを変えたりするのが面白い。
そうだ、と思って、村の子供達と水をかけあってはしゃいでしまった。
あきれ顔で見ていたサクラ君が、「転んだら危ないやろっ」と声を透す。
「大丈夫ですよ~。わ、わわっ」
足を滑らせて転倒、少し溺れた時に砂利を掴んでしまって砂の部分が濁る。
ヤバい、息をしたらむしろ危ない!
身体を持ち上げられ、驚いた表情の私をお姫様だっこしてくれたサクラ君。
「すまん・・・」
「・・・えっ?なんで?」
「俺が大声あげたからビックリしたんやろ?」
「えっ?」
「ん?なんや、手で持ってる赤いの・・・血かっ?」
「え?何も痛くはなくて・・・」
砂利と砂が混じった部分を掴んでそのまま、片手を広げて見ると、赤色。
ケガはしてないから、不思議。
「なんだろう、これ・・・?」
太陽光にキラキラした、赤。
そこに、子供達が「お宝を見つけたぞ~」と声がする。
皆が手に、赤い小石を持っている。
「・・・ん?これって・・・なに?」
子供達を家に帰るように言って、教会に帰って着替えをしていた。
私が掴んだ大人の爪くらいの大きさのある赤い石について、分析結果が出た。
ラク神父が言う。
「昔は採りつくして人がいなくなった場所なのですが、地盤が崩れたことで・・・もしかしたら、再び、宝石が現われました」
ラク神父が言うには、宝石の石突きが再び成長を始めたかもしれない、とのこと。
石突きって、キノコとかの根元だよね?
あの食べたらいけないやつ・・・
宝石の・・・石突き・・・?
なんだか・・・面白い!!
「この宝石の名前は、古いなまりで『聖女の血』と言うそうです」
「聖女の、血・・・」
「二百年くらい採掘されなかったから、すっごく心が高揚しています」
「なるほど・・・すごさがちょっと分からない・・・」
「聖女レインは、宝石を発見したんです。すごく貴重な」
「もしかして・・・村の資本になったり・・・」
「もしかしたら、ですが」
「・・・わー・・・わー!!すごーいっ」
「もしかしたら、です」
そうだ!明日からクッキーを焼こう!!
なんだかマーマーレードクッキー焼きたくなってきた!!
前に確認した時に、マーマーレードはあるけどクッキーにしたことないって言ってた!
この作品を楽しむための豆知識。
【宝石の石突き】・・・架空のもの。普通はきのこの根っこのことを示す言葉です。