五十五話 最終回 山一面の花畑
風魔法通信が耳元に届いた。
「こちらコハ。花火見えた。まだ瘴気が濃いからそちらには向かえない」
数秒後、まだ不安な私は聖魔法で残っている瘴気をなるべく浄化した。
「〈ホーリー〉!!」
すると、あたりは快晴、近くまでフェルナルドの空船が来ていた。
まるで白いクジラ。
巨大な飛行船には約二千人の魔法使いが乗っている。
フェルナルドとの約束。
ハゲドク山の解毒。
そのためのヒョンファの種と共存しやすい植物の種が、船から蒔かれている。
コハからの風通信。
「瘴気が晴れてきた、って!!飛行船がそろそろ来るぜ!!」
飛行船から拡声器を使って声がした。
「《アメ、協力に来た。今、咲かせるからバリアを張っておいて》」
フェルナルドの声だ。
サクラ君と視線をからませうなずき、バリアを張る。
すると飛行船から種が頭上にまで蒔かれ、その次に声がした。
「《サカス・サカセル》」
解毒の花と他の植物が光と共に勢いよく生えて来て、そして兵士たちの歓声が風魔法通信で聞こえた。
「終わったんだ・・・サクラ君、倒したんですよね、魔女をっ?」
「せやんな・・・」
サクラ君の喋り方が戻っているのに安心して、一息吐くと、その場に崩れるように倒れる。
気づくと、私の髪の毛は真っ白になっていた。
風魔法通信で予告しておいた義務を行う。
「戦いは、終わりました・・・魔女を討伐しました」
濃霧は一切晴れていて、山一面が花でいっぱいだ。
心地が良い風が吹いている。
そして喜びの雄叫びが、聞こえてくる。
サクラ君は近くに来ると、剣を地面に刺して倒れ込んだ。
そして私の上にのっかると、口づけをした。
「サクラ君っ?」
風魔法通信でコハが言った。
「なにっ?なにかあったの?」
サクラ君が微笑んだ。
「まだ両想いか?」
「え、えはい」
「してもいいか?」
「・・・今、ここでっ?」
風魔法通信でコハが言った。
「心配して損した。迎えが来る、て」
耳元でふつりと通信が切れて、サクラ君は私の唇に唇を重ねた。
少し上体を起こしたサクラ君の首元に腕を回すと、私はキスを返した。
「いいですよ」
「・・・ほう」
ふたりは花畑の中、合意の上で口づけを交わした。
――
――――・・・
それからのことだけど、ルシーナ隊が迎えに来てくれた。
コハも無事だった。
そしてラクも技師さんたちが新しく作った部品に適合して、軽量化まで叶った。
つまりラクも生きている。
ただ、もう戦闘要員にはなれないし、寿命が近づいて来ている、と言われた。
聞こえてきていた歓声は、ハゲドク山の付近の、事情を知っている者たちのもの。
帰りは魔女討伐成功の報せに、皆がわいわいとしていた。
棒二本と兵士弐名の制服上着で作った簡易の担架で私は運ばれる。
疲れていた私はしばらく睡眠を取っていたけど、かすかに歓声は聞こえていた。
王宮に帰って療養をして、そしてサクラ君とルシーナ隊は表彰をされた。
皆が式典に参加して、サクラ君が代表で表彰状を王から賜った。
私はこの日、白いドレスを着ていた。
表彰式、兼、結婚式。
フェルナルドが声をかけてくる。
「僕との結婚はどうだい?」
私は笑ってみせた。
「サクラ君がいい!」
私は表彰台で拍手を贈られるサクラ君の元に、走った。
「ん?」
抱きついて着た私を、サクラ君は笑顔で受け入れてくれて、お姫様だっこをしてくれた、
「俺のんじゃー!!」
ルシーナ隊の複数人が「知ってる~」と声を通して笑いが起きた。
フェルナルドとの結婚を断って、サクラ君と結婚。
それは魔女討伐のご褒美としてのもの。
そして王宮での暮らしが窮屈だとサクラ君が言ったから、私が思いついたのは・・・
パルゼン村にラクと三人兵を連れて帰ること。
古代兵器ゼーウスの研究は終わったと聞く。
今でも不思議だけど、私の前に現われてキスを贈った人物はサクラ君。
未来から、来た、ってことになるらしい。
そして魔女討伐が叶ったから、古代兵器はもう必要ない、ってことらしい。
なので、手紙を送ったら六人兵から快諾もあったし、お腹にいる赤ちゃんを産んだら、しばらく療養が必要だからパルゼン村に住むことも王宮から許可が出た。
これから安穏な暮らしが待っている。
相談なんかの文通も続けるつもりだ。
そろそろこの章を区切ろうかと思う。
ここでこのお話は終わります。
最後に長めの一言。
聖女様は悪い魔女を倒して美形兵士とスローライフをおくります。
以上!!
書記【 アメ 】
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